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古典和歌をメインにブログを書いてます。歌題ごとに和歌を四季に分類。

忘れ井

2022年08月10日 | 日本古典文学-坤儀

天仁元年、斎宮群行の時、忘井といふ所にてよめる 斎宮甲斐
別ゆく/都のかたの/恋しきに/いさ結ひ見む/忘井の水
(千載和歌集~国文学研究資料館HPより)

そてぬらす-ものとはしりぬ-そのままに-けにわすれゐの-みつのこころは
(嘉元百首_基忠~日文研HPより)

 忍忘恋
こゑたてつ心くみしる人あらはあやなし思ひ忘れ井の水
(草根集~日文研HPより)

 忘恋
かけたえてのちそ袂はぬれまさるいかか結ひし忘井の水
(草根集~日文研HPより)

すすしさに-つきもすみけり-いはまくら-こよひそなつを-わすれゐのみつ
(夫木和歌抄~日文研HPより)


忘れ川

2022年08月08日 | 日本古典文学-坤儀

 甲斐の国にまかりたりしほどに、たのみいへりし女(をんな、)人に名たち侍りけるを聞きて、かへりまうできて
わすれがはまだやわたらぬうきことのわすられずのみおもほゆるかな
(忠岑集~「和歌文学大系19」明治書院)

うきひとを-わすれはてなて-わすれかは-なにとてたえす-こひわたるらむ
(内大臣家歌合_元永元年十月二日~日文研HPより)

 参り給ひけるに、わたり給ひて、いかなることかありけむ、帰り給ひて
みづのうへにはかなきこともおもほえずふかきこゝろしそこにとまれば
 御返り
わすれがはながれてあさきみなせがはなれるこゝろやそこにみゆらん
(斎宮女御集~「和歌文学大系52」明治書院)

わすれ川避(よ)く道(みち)なしとききてこそいとふの神(かみ)もたちはよりけれ
(古今和歌六帖~「和歌文学大系45」明治書院)


わすれ草・恋忘れ草

2022年08月03日 | 日本古典文学-草樹

忘れ草我が紐に付く香具山の古りにし里を忘れむがため
わすれくさ,わがひもにつく,かぐやまの,ふりにしさとを,わすれむがため
(万葉集~バージニア大学HPより)

忘れ草我が紐に付く時となく思ひわたれば生けりともなし
わすれくさ,わがひもにつく,ときとなく,おもひわたれば,いけりともなし
(万葉集~バージニア大学HPより)

いまはとてわするゝくさのたねをだに人の心にまかせずもがな
返し
わすれ草うふとだにきく物ならばおもひけりとはしりもしなまし
(伊勢物語~バージニア大学HPより)

寛平御時、御屏風に歌かゝせ給ひける時、よみてかきける そせい法し
忘草/何をかたねと/思ひしは/つれなき人の/心なりけり
(古今和歌集~国文学研究資料館HPより)

いひかはしける女の、いまは思ひわすれね、といひ侍けれは 長谷雄朝臣
我かためは/みるかひもなし/忘草/わするはかりの/こひにしあらねは
(後撰和歌集~国文学研究資料館HPより)

(たいしらす) 小町
わすれ草/我身につむと/思ひしを/人の心に/おふるなりけり
(新拾遺和歌集~国文学研究資料館HPより)

おもはむと-つくつくいひし-ことのはは-わすれくさとや-はやなりにける
(登蓮恋百首~日文研HPより)

女のもとより、わすれ草にふみをつけてをこせて侍りけれは よみ人しらす
おもふとは/いふ物からに/ともすれは/忘るゝ草の/花にやはあらぬ
かへし たいふのこといふ人
うへてみる/我は忘て/あた人に/まつ忘らるゝ/花にそありける
(後撰和歌集~国文学研究資料館HPより)

 みかど思ほし忘れたるにやとおぼえ給ひけるころ 秋の夜長しとわぶるの斎院の母后
いつのまに契りしことは忘れ草しげれる仲となしはてつらん
(風葉和歌集~岩波文庫「王朝物語秀歌選」)

 寄忘草恋
契りしを忘るる草の心こそ岩木に生ふる種と成りけめ
(草根集~日文研HPより)

 陽成院のすけの御、まま父の少将のもとに、
  春の野ははるけながらも忘れ草生ふるは見ゆるものにぞありける
少将、返し、
  春の野に生ひじとぞおもふ忘れ草つらき心の種しなければ
(大和物語~新編日本古典文学全集)

(こひのうたのなかに) 後二条院御製
つれもなき/人の心の/種しあれは/うへぬもおふる/恋忘草
(新千載和歌集~国文学研究資料館HPより)

わすれくさ-ひとのこころの-たねしあれは-やとののきはに-さそしけるらむ
(嘉元百首_覚助~日文研HPより)

 寄草恋
つれもなき人の心をたねとしてわするる草のしけりはてぬる
(宝治百首_師継~日文研HPより)

(たいしらす 読人不知)
忘草/たねとらましを/逢事の/いとかくかたき/物としりせは
(古今和歌集~国文学研究資料館HPより)

我(わ)がやどは甍(いらか)しだ草生(お)ひたれど恋忘れ草見るにいまだ生(お)ひず
(万葉集~伊藤博「萬葉集 釋注六」集英社(集英社文庫ヘリテージシリーズ))

昔、男、後涼殿のはさまをわたりければ、あるやむごとなき人の御つぼねより、わすれぐさをしのぶぐさとやいふ、とて、いださせたまへりければ、たまはりて、
わすれぐさおふる野辺とは見るらめどこはしのぶなりのちもたのまむ
(伊勢物語~バージニア大学HPより)

わすれくさ-たれたねまきて-しけるらむ-ひとをしのふの-おなしのきはに
(文保百首_内経~日文研HPより)

 人のもとに、わすれ草、しのぶ草つつみてやるとて
物おもへばわれか人かの心にもこれとこれとぞしるく見えける
(和泉式部集~岩波文庫)

寄草恋
忘るるもしのふもおなしふるさとの軒端の草の名こそつらけれ
(宝治百首_顕氏~日文研HPより)

 忘草一葉包みて人の許へ遣はすとて 読人しらず
忘らるゝ身を同じ名と思はずば何か軒端の草とうからむ
(新葉集~「校註国歌大系9」)

おとこありける女を忍ひてものいふ人侍ける、ひまなきさまをみて、かれ++に成はへりけれは女のいひつかはしける よみひとしらす
わかやとの/軒の忍ふに/ことよせて/やかても茂る/わすれ草かな
(後拾遺和歌集~国文学研究資料館HPより)

久しくをとせぬ人に、わすれ草にさしてつかはしける 伊勢大輔
あれにける/宿の軒はの/忘れ草/かくしけれとは/契らさりしを
(玉葉和歌集~国文学研究資料館HPより)

おのつから-わするるくさの-たねもかな-しのふはかりの-くさのなもうし
(亀山殿七百首~日文研HPより)

 寄忘草恋を 新宜陽門院
通ひ来し人は軒ばの忘草露かゝれとは契りやはせし
(新葉集~「校註国歌大系9」)

わすれくさ-おふるのきはを-なかむれは-むなしきつゆそ-かたみなりける
(正治初度百首_宜秋門院丹後~日文研HPより)

あひしれりける人の住吉にまうてけるに、よみてつかはしける みふのたゝみね
住吉と/あまはつくとも/なかゐすな/人忘草/おふといふなり
(古今和歌集~国文学研究資料館HPより)

みちしらは-つみにもゆかむ-すみのえの-きしにおふてふ-こひわすれくさ
(古今和歌六帖~日文研HPより)

すみの江にふねさしよせよわすれぐさしるしありやとつみてゆくべく
(土佐日記~バージニア大学HPより)

すみのえに-おふとそききし-わすれくさ-ひとのこころに-いかておひけむ
うちしのひ-いさすみのえへ-わすれくさ-わすれてひとの-またやつまぬと
(古今和歌六帖~日文研HPより)

題しらす 権中納言経平
住吉の/きしのあた浪/かけてたに/わするゝ草は/ありとしらすな
(新後撰和歌集~国文学研究資料館HPより)

 寄草恋
住吉の忘るる草のたねもかなつれなき人をよそにおもはん
(宝治百首_資季~日文研HPより)

よせかへり-なみうつきしに-ねをとめて-つれなきものは-ひとわすれくさ
(万代和歌集~日文研HPより)

恋の歌中に 典侍親子朝臣
いかにせん/身を住の江の/草の名に/思ひなしてや/とふ人のなき
(続千載和歌集~国文学研究資料館HPより)

 忘住所恋
いかにせむたのめしさとを住の江の岸に生(おふ)てふ草にまがへて
(拾遺愚草員外雑歌~「藤原定家全歌集」久保田淳、ちくま学芸文庫)

わかなかに-なとならふらむ-すみよしの-きしにおひたる-そのくさのなを
(文保百首_隆教~日文研HPより)

 津の国より、人のいひおこせたる
忘れ草つむ人ありと聞きしかば見にだにも見ず住吉の岸
 かへし
わすれぐさつむほどとこそ思ひつれおぼつかなくて程の経つれば
(和泉式部集~岩波文庫)

住吉の社にまうてける人、かへりこんまてわするなと申ける返事に 清少納言
いつかたか/しけりまさると/忘草/よし住吉の/なからへて見よ
(続古今和歌集~国文学研究資料館HPより)

 とかく物おもはせし人の、殿上人なりしころ、父おとゞの御供に住吉にまうでて、かへりて、洲浜(すはま)のかたむすびたるに、貝どもをいろいろにいれて、わすれ草をおきて、むすびつけれられたりし。
浦見てもかひしなければすみのえに おふてふくさをたづねてぞみる
 かへし 秋のことなりしかば、もみぢの薄様に
すみの江の草をば人の心にて われぞかひなき身をうらみぬる
(建礼門院右京大夫集~岩波文庫)

わかために-きみそつみける-すみよしの-きしにおふてふ-ひとわすれくさ
(壬二集~日文研HPより)

わすらるる-みのたくひとて-すみよしの-きしのくさはの-なこそつらけれ
(住吉社三十五番歌合~日文研HPより)

 題知らず 前大納言光任女
かれはてし人には誰か住吉の岸なる草の名を教へけむ
(新葉集~「校註国歌大系9」)

今さら深きわすれ草かな
住吉の松とたのめしほどに又
(菟玖波集~バージニア大学HPより)

(おなしこころ【祈恋】を) 澄覚法親王
住吉の/松はいのるも/かひなきに/よしさはしけれ/恋忘草
(新続古今和歌集~国文学研究資料館HPより)

 寄忘草恋
契りても忘るる草の種そなき松の名つらき住吉の岸
(草根集~日文研HPより)

(こひのうたのなかに) 読人しらす
住吉の/岸にはあらて/忘草/いつより人の/うきにおふらん
(新千載和歌集~国文学研究資料館HPより)

たれもみな-うゑてたにみよ-わすれくさ-よにふるさとは-けにそすみうき
(秋篠月清集~日文研HPより)

 月忘憂
身のうさもみれは思はす月の内におふるかいさや物わすれ草
(草根集~日文研HPより)


 忘憂自結叢。  萱草の一の名丹棘なり。丹棘ををりて人憂をわする。忘憂草なり。摂州に生たり。名長楽。即萱草なり。
野辺の色に秋の心もわすれ草虫はうらむる比と聞とも
(百詠和歌~「続群書類従15上」)

ひたすら世になく成なんはいはむかたなくて。いふかひなきにても。やう++わすれ草もおひやすらん。
(源氏物語・須磨~国文学研究資料館HPより)

忘れ草のしるしにや。(略)
(略)御返事には、
 まことに世を背きて住吉のほとりに住みながらも、(略)忘れ草も名のみして、片時(かたとき)も忘れ奉る事はなけれども、(略)
(住吉物語~「中世王朝物語全集11」笠間書院)

 石に生(お)ひたる、わすれ草。
(平家花ぞろへ~「室町時代物語集成12」角川書店)

名にしおふ忘草ならば、名残を忘れてやちりつらん。其れは、昔、住吉に、諸神影向なりける事有り。御帰りを止め奉らんとて、此の花をうゑて、忘草と名づけ給ひけるなり。歌にも、
 紅葉ぢては花さく色を忘草一つ秋ながら二まちの頃
其の忘れ草は、紫苑とこそ聞きて候へ」とて、猶草むらに分け入りければ、(略)
(曾我物語~国民文庫「曾我物語」明治44年)