monoろぐ

古典和歌をメインにブログを書いてます。歌題ごとに和歌を四季に分類。

古典の季節表現 春 菫(すみれ)

2021年03月30日 | 日本古典文学-春

山吹の咲きたる野辺のつほすみれこの春の雨に盛りなりけり
(万葉集~バージニア大学HPより)

はるくれは-たゐにまつさく-つほすみれ-みれともあかぬ-きみにもあるか
(古今和歌六帖~日文研HPより)

嘉承二年后の宮の歌合に、菫をよめる 源顕国朝臣 
道遠み入野の原のつほ菫はるの形見につみて帰らん 
(千載和歌集~国文学研究資料館HPより)

はるさめのふるののみちのつぼ菫つみてをゆかん袖はぬるとも
(拾遺愚草~久保田淳「藤原定家全歌集・上」)

 杜間菫菜 慈鎮
なつかしくにほふすみれの色はへてうすみどりなる杜の下草
 閑庭菫 師兼
さけばとて誰かはここにこむらさきひとりすみれの色ぞかひなき
 故郷菫菜 後京極
春の野をすみれ摘みにときてみればなれこし宿のまがきなりけり
(摘題和歌集~古典文庫528)

 すみれをよめる
春の野に咲すさみたるつほ菫つみゝつますみ今日も暮しつ
(林葉和歌集~群書類従15)

まつかけに-さけるすみれは-ふちのはな-ちりしくにはと-みえもするかな
(長秋詠藻~日文研HPより)

人々に百首歌めされけるついてに、菫菜をよませ給うける 崇徳院御製 
あれはてゝさひしき宿の庭なれはひとりすみれの花そ咲ける 
(新続古今和歌集~国文学研究資料館HPより)

ふるさとの-のきはのしたを-きてみれは-ひとりすみれの-はなさきにけり
(為忠家初度百首~日文研HPより)

(略)遠き山のはそこはかとなく霞つゝ野辺のけしき青みわたり芝生の中に名もしらぬ花ともすみれにましり色ゝさきて雲ゐの雲雀姿も見えすさえつりあひたるさまともいはんかたなし
(松帆浦物語~バージニア大学HPより)

我が宿に一と本植ゑし菫草今は春べと咲き初めぬらん
つぼ菫咲くなる野邊に鳴く雲雀聞けどもあかず永き春日に
(良寛歌集~バージニア大学HPより)

山城のいは田の小野の朝露に袖はまかせて菫つみけり
霞たち日もなが岡のつぼすみれ摘めどもあかず今一夜ねむ
いかにせむ野べの仮寝はならはぬを岩田の菫つみ残しつる
(千々廼屋集~校註国歌大系19)


2021年03月27日 | 日本古典文学-天象

虹始見(にじはじめてあらわる)七十二候

虹蔵不見(にじかくれてみえず)七十二候

(天元三年五月)十八日庚申。春興。宜陽両殿前虹立。又左大臣小野家等十六箇所虹立。
(日本紀略~「新訂増補 国史大系11」)

(建保六年六月)十一日 辛亥。陰ル。 卯ノ剋ニ、西方ニ五色ノ虹ヲ見ルニ、上一重ハ黄ナリ。次五尺余リ赤色ヲ隔ツ。次ハ青シ。次ハ紅梅ナリ。其ノ中間、又赤色ニシテ、甚ダ広ク厚クシテ、其ノ色天地ニ映ジ、小時シテ銷ユル。則チ雨降ル。
(吾妻鏡~国文学研究資料館HPより)

(建長六年八月)十日 庚辰 雨降ル。夜ニ入テ晴ニ属ス。丑ノ剋ニ、東方ニ白虹見ハル。
(吾妻鏡~国文学研究資料館HPより)

題しらす 藤原親行朝臣 
虹のたつ峰より雨ははれ初て麓の松をのほるしら雲 
(風雅和歌集~国文学研究資料館HPより)

空見れは色なる橋の夕立や虹たちわたる天の川波
(草根集~日文研HPより)

 橋雨
河辺より山のはかけてたつ虹のおとせぬ橋をわたる雨かな
(草根集~日文研HPより)

院に三十首歌めされし時、夏木を 前太宰大弐俊兼
虹のたつふもとの杉は雲に消て峰より晴る夕立の雨
(風雅和歌集~国文学研究資料館HPより)

入日さす夕立なからたつ虹の色もみとりにはるる山かな
(草根集~日文研HPより)夏~既投稿ブログ済

ふゆのうたのなかに 前中納言定家 
むら雲のたえまの空ににしたちて時雨過ぬるをちの山のは 
(玉葉和歌集~国文学研究資料館HPより)


雲・天雲・白雲(など)

2021年03月26日 | 日本古典文学-天象

雲は石より生ずるによりて、石を岩根と云ふぞ
(中華若木詩抄~デジタル大辞泉「岩根(いわね)」の項より)

題しらす 北辺左大臣 
人めたに見えぬ山ちに立つ雲をたれすみかまの煙といふらん
(後撰和歌集~国文学研究資料館DBより)

寄雲
岩倉の小野ゆ秋津に立ちわたる雲にしもあれや時をし待たむ
(万葉集・七~バージニア大学HPより)

すむひとのこころもしらぬたにのとにうきたつくももなほまよひつつ 
(詠十首和歌_嘉禄元年四月~日文研HPより)

十七日くもれる雲なくなりてあかつきつく夜いともおもしろけれは舟をいたしてこき行
(土佐日記~国文学研究資料館DBより)

 そのとしおほかた世中さはがしくておほやけざまにものゝさとししげくのどかならで。あまつ空にもれいにたがへる月日星の光みえ雲のたゝずまひありとのみ。世の人おどろくことおほくて。 (略)
(源氏物語・薄雲~国文学研究資料館DBより)

夕暮の雲のけしき、鈍色に霞みて、花の散りたる梢どもをも、今日ぞ目とどめたまふ。
(源氏物語・柏木~バージニア大学HPより)

春立心をよみ侍ける 皇太后宮大夫俊成 
春やたつ雪けの雲はまきもくの檜原に霞たな引にけり 
(新千載和歌集~国文学研究資料館DBより)

夏歌の中に 前参議家親 
をちの空に雲立のほりけふしこそ夕立すへきけしき也けれ 
(玉葉和歌集~国文学研究資料館DBより)

夏山雲
夕立の晴れぬる山の岩ねよりのほるも消ゆる雲の一むら
(草根集~日文研HPより)

よやふくるくものはるかになくかりもひとつになりぬころもうつこゑ 
(壬二集~日文研HPより)

山のはにゆきかふ雲の晴くもり一かたならすふるしくれかな
(藤葉和歌集~「群書類従10」)

あさまたきたにたつくもとみえつるはまきのすみやくけふりなりけり 
(堀河百首~日文研HPより)

冬深く入り立ちて、すさまじく空澄みわたり、雪気(ゆきげ)の雲のただよひたる折々は、上、藤壺にわたらせ給ひて、(略)
(海人の刈藻~「中世王朝物語全集2」笠間書院)

くもうすきそらかとみれはゆふつくよはれてもかけそおほろなりける 
(新撰和歌六帖~日文研HPより)

天雲(あまくも/あまぐも)

富士の嶺(ね)を高み畏み天雲(あまくも)もい行きはばかりたなびくものを
(「万葉集 上巻」伊藤博校注、角川文庫)

思はぬにしぐれの雨は降りたれど天雲(あまくも)晴れて月夜(つくよ)さやけし
(「万葉集 上巻」伊藤博校注、角川文庫)

天雲(あまくも)のたなびく山の隠(こも)りたる我(あ)が下心(したごころ)木(こ)の葉知るらむ
(「万葉集 上巻」伊藤博校注、角川文庫)

 (ひやくしゆのうたたてまつりしとき、くもによするこひ) 徽安門院一条 
天雲のやへ重なれる空なれや恋も恨もはれぬ心は 
(新千載和歌集~国文学研究資料館DBより)

 昼恋
てる日をもうき中空にかけすてつくもる契の末の天雲
(草根集~日文研HPより)

白雲

かき数ふ 二上山に (略) 玉桙の 道行く我れは 白雲の たなびく山を 岩根踏み 越えへなりなば (略)
(万葉集~バージニア大学HPより)

後法性寺入道前関白、右大臣に侍ける時、家に百首歌よみ侍けるに読てつかはしける、桜 後徳大寺左大臣 
けふもまた花まつほとのなくさめになかめくらしつ峰の白雲
(新後撰和歌集~国文学研究資料館DBより)

富士のねの風にたゞよふ白(しら)雲を天津(あまつ)乙女の袖かとぞ見る
(東関紀行~「新日本古典文学大系51」岩波書店)

浮き雲

ふかき夜の月、浮雲だになびかず澄めるに、(略)
(浜松中納言物語~「日本古典文学大系77」岩波書店)

月をよみ侍ける 藤原為基朝臣 
月のゆく晴間の空はみとりにてむら++白き秋のうき雲 
(風雅和歌集~国文学研究資料館DBより)

寄雲恋 侍従行家 
しらせはやそこはかとなき浮雲の空にみたるゝ心まとひを 
(続古今和歌集~国文学研究資料館DBより)

(ひやくしゆのうたのなかに、こひのこころを) 右衛門督通具 
我恋は逢をかきりのたのみたに行ゑもしらぬ空のうき雲 
(新古今和歌集~国文学研究資料館DBより)

題不知 土御門内大臣 
さためなき風にしたかふ浮雲のあはれ行ゑもしらぬ恋哉 
(新勅撰和歌集~国文学研究資料館DBより)

維摩経の心を 小弁 
夕暮の空にたなひくうき雲はあはれ我身のはてにそ有ける 
(玉葉和歌集~国文学研究資料館DBより)

横雲

やまのはのよこくもはかりわたりつつみとりにみゆるあけほののそら 
あつさゆみはるかにみれはやまのはによこくもわたるあけほののそら 
(永久百首~日文研HPより)

守覚法親王五十首歌よませ侍けるに 藤原定家朝臣 
春の夜の夢のうき橋とたえして嶺にわかるゝよこ雲の空 
(新古今和歌集~国文学研究資料館DBより)

 曙雲
さとちかき林の鳥はさへつるをあけほのかくす峰の横雲
(草根集~日文研HPより)

薄雲

夕ひはなやかにさしてやまぎはの木ずゑあらはなるに。雲のうすくわたれるが。にび色なるを。なにごとも御めとゞまらぬころなれど。いと物哀におぼさる
  入日さす峰にたなびくうす雲は物思ふ袖にいろやまがへる。
(源氏物語・薄雲~国文学研究資料館DBより)

 雲間残月
うす雲のかけ行く月は明くる夜の光にかはる窓のともし火
天の原明行くままに影きえてうす雲渡る山のはの月
(草根集~日文研HPより)

豊旗雲

あまのはらとよはたくものたちまよひそらにみたるるこひをするかな
(河合社歌合_寛元元年十一月十七日~日文研HPより)

百首歌めしける時よませ給うける 崇徳院御製 
入日さすとよはた雲にわきかねつ高まの山の峰の紅葉は 
(新拾遺和歌集~国文学研究資料館DBより)

むら雲

秋夕 隆祐 
野わきする空のけしきに成りにけり村雲はやき秋の夕暮
(宝治百首~日文研HPより)

「雲」にかかる枕詞:しろたへの。ひさかたの。ささがにの。たまだすき。

思ひあまりいともすへなみ玉たすき雲ゐる山に我しめむすふ
(古今和歌六帖~「校證古今六帖 下」石塚龍麿稿、田林義信編。有精堂。1984年)

尋ねきていまそしめゆふたまたすき雲ゐる山のはつ桜花
(院御歌合_宝治元年九月~日文研HPより)

雲のはたて/はだて(旗手)

天之原(アマノハラ)悠悠砥而入已(ハルバルトノミ)見湯留鉋(ミユルカナ)雲之幡手裳(クモノハタテモ)色滋雁芸里(イロノコリケリ)
(新撰万葉集、巻之下、夏歌二十二首~「新編国歌大観2」)

(たいしらす 読人不知)
夕暮は雲のはたてに物そ思あまつ空なる人をこふとて 
(古今和歌集~国文学研究資料館DBより)

(たいしらす 読人不知)
吹かせに雲のはたてはとゝむともいかゝたのまん人のこゝろは 
(拾遺和歌集~国文学研究資料館DBより)

暮山花といへる心を 従二位成実 
桜色の雲のはたての山風に花の錦のぬきやみたれん 
(続拾遺和歌集~国文学研究資料館DBより)

暮秋の心を 前大納言為家 
とまらしな雲のはたてにしたふとも天つ空なる秋のわかれは 
(続後拾遺和歌集~国文学研究資料館DBより)

雲の底(もと・そこ)

中天の雲の底(もと)に戯れて、
(「玉造小町子壮衰書(小野小町物語)」岩波文庫)

蓬莱洞の雲の底にも天仙空く垂跡の塵を隔つ。
(平家物語~バージニア大学HPより)

時鳥の歌とてよめる 藤原清輔朝臣 
かさこしをゆふこえくれは郭公ふもとの雲の底に鳴也 
(千載和歌集~国文学研究資料館DBより)

山のはは雲の底にてひとむらの木すゑかすめる五月雨の遠
(仙洞五十番歌合_乾元二年四月廿九日~日文研HPより)

元亨三年、亀山殿にて、人々題をさくりて七百首歌つかうまつりけるついてに、羇中鐘と云事をよませ給うける 後宇多院御製 
けふも又かさなる山をこえくれて雲の底なる入会のかね 
(新続古今和歌集~国文学研究資料館DBより)


風が吹いている(いきものがかり)

2021年03月24日 | 音楽

風が吹いている 水野良樹作詩作曲 (編曲:亀田誠治。UK recorded version は編曲:井上鑑)

時代はいま 変わっていく 僕たちには願いがある
この涙も その笑顔も すべてをつないでいく

風が吹いている 僕はここで生きていく
晴れわたる空に 誰かが叫んだ ここに明日はある ここに希望はある
君と笑えたら 夢をつなぎあえたなら
信じあえるだろう 想いあえるだろう この時代を 僕らを この瞬間(とき)を

言葉にできないこと 涙が溢れること
ふるえる心で感じたすべてが 僕のいままでをつくってきたんだ
出会いとさよならとが 決意(おもい)を強くさせた
手を振り誓った あの日があるから 僕らはここにいるんだ

優しい歌 聴こえている 背中を押す言葉がある
このいのちよ この一瞬よ 誰かの光になれ

風よ吹いていけ 君とともに生きていけ
晴れわたる空が 悲しくなる日も ひとりじゃないんだ 声はそばにある
君と笑いたい 夢を分かちあいたくて
歌いあえるように 奏であえるように この時代を 僕らを この瞬間(とき)を

強さを手にするより 弱さを越えたいんだよ
守りたいものから 逃げたくないんだ つぼみはそこにあるんだ

愛しいひと 忘れはしない 胸にやどる誇りがある
このさだめよ この勇気よ 僕らの望みとなれ

風のなかにいる ここに陽はまた昇るよ
ぶつけあう日々に こたえを築こう この時代を たがいを この瞬間(とき)を

たくされたがある 歩むべき道がある はじまりのつづきを 生きている
この胸のなかに きずなはあるんだよ ずっと ずっと

風が吹いている 僕はここで生きていく
晴れわたる空に 叫びつづけよう 新しき日々は ここにある ある
風よ吹いていけ 君と夢をつなぎたい
愛しあえるだろう つくりあえるだろう この時代を 僕らを この瞬間(とき)を

LaLaLa…


鷗(三好達治作詩、木下牧子作曲)

2021年03月13日 | 音楽

鷗 三好達治

つひに自由は彼らのものだ
彼ら空で恋をして
雲を彼らの臥床(ふしど)とする
つひに自由は彼らのものだ

つひに自由は彼らのものだ
太陽を東の壁にかけ
海が夜明けの食堂だ
つひに自由は彼らのものだ

つひに自由は彼らのものだ
太陽を西の窓にかけ
海が日暮れの舞踏室だ
つひに自由は彼らのものだ

つひに自由は彼らのものだ
彼ら自身が彼らの故郷
彼ら自身が彼らの墳墓
つひに自由は彼らのものだ

つひに自由は彼らのものだ
一つの星をすみかとし
一つの言葉でことたりる
つひに自由は彼らのものだ

つひに自由は彼らのものだ
朝焼けを朝(あした)の歌とし
夕やけを夕べの歌とす
つひに自由は彼らのものだ