monoろぐ

古典和歌をメインにブログを書いてます。歌題ごとに和歌を四季に分類。

破れ鏡

2020年11月07日 | 着物/和服

 着物の柄でたまに見るのですが、欠けた鏡の柄があります。「破れ鏡」あるいは「割れ鏡」という名が付いているようですが、何を意味するのか分かりませんでした。「なぜ鏡が破損してるんだろう?」と思い、由来を探してみると、中国の故事がありました。別解釈としては、「破(やれ・やぶれ)」という、文様の一部を空白にする手法だと考える解釈。

A「神異経」の故事:離れて暮らさなければならなくなった夫婦が、鏡を割ってそれぞれの一片を持ち、愛情のあかしとしたが、妻が不義を働いたために、その一片がカササギとなって夫の所へ舞いもどり、不義が知れて離縁となった。

B「本事詩」の陳の徐徳言と妻の逸話:徐徳言と妻は内乱のため別れることになったが、鏡を割ってそれぞれの一片を持ち、再会を約束した。女は別の男(越公)と再婚したが、後年、片割れの鏡を持っている人物がいることが分かり、再婚相手の理解を得て、元の夫と復縁した。「破鏡重円」という成語のもととなった故事。

 着物の柄にするのであれば、めでたい意味を持たせるのが通常だと思うので、中国の故事を元にすると考えるならば、Bの話を柄の由来にしているのかな、と思います。
 しかし、実際に「破鏡の柄」の着物を着ようとすると、「私は配偶者と離れて暮らしている」もしくは「バツイチです」という言外のアピールになってしまいそうで、どういう場面(あるいは状況)で着ればよいのか、悩みそうです。
 そういう複雑な背景を柄に持たせるという意図があるとは考えにくいので、「柄の一部を欠けさせた面白さ」を狙っただけという気がしてきました。(でも、自分で着るなら、「破鏡+カササギ」の組み合わせで着てみたい。)

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下駄で歩く

2020年10月31日 | 着物/和服

 二枚歯の下駄で歩く時は、後ろ足で地面を蹴るために、前端を地面に付けて歩いていましたが、それは間違った歩き方だという指摘をしている きもの雑誌を見つけました。「七緒 30」(2012年6月7日、プレジデント社、69ページ)では、二枚歯の下駄で歩く時は、前のめりにならないで、前端は地面に付けないように歩くと書いてあります。底を引き摺るように歩くんでしょうか。このとおりに歩いてみようとしても、私には出来ませんでした。
 ほかに歩き方について書いてある資料がないか、探してみました。

 潮田鉄雄「日本人とはきもの」(住宅新報社、1976年、135~138ページ)によると、「前へ歩をすすめるためには、前アゴの先端で地面を蹴る」ことが必須のようです。歯がすり減ってしまうと、地面を蹴ることができず、引き摺って歩くことになるとのこと。
 しかし、137ページには「脛にはねを上げないように雨天を歩く」方法について、「能・狂言の摺り足のように、平行に下駄を保ちつつ、そっとおろせばよい」と書いてあり、この歩き方を晴天も行なうと、冒頭の「七緒」の記事の歩き方になるのかなー、と思いました。

 下駄とはいえ、一本歯の下駄ならば、アゴは接地しない歩き方になると思います。
 日常的に下駄を履いている人の歩き方を観察してみたいものです。あるいは、歌舞伎なら舞台で下駄を履く演目があるかな?

 数年前、津軽塗りの二枚歯の下駄を購入した際、店主と底にゴムを貼るかどうかの話をして、前歯と後葉のほかに前アゴ先端にもゴムを貼ってもらいました。前アゴのゴムは店主からの提案で、その時までそこにゴムを貼るという選択肢は、自分には無かったです。
 次回話す機会があれば、アゴを地面に付けない歩き方について、質問してみたいです。

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槌車と橋(その2)

2018年05月11日 | 着物/和服

 以前のブログ「槌車と橋」以降、文様本などを探してみました。

 「きもの文様図鑑」(長崎巌監修、弓岡勝見編。2005年。平凡社)によると、桃山時代に、柳に橋、それに水車を排した屏風絵があり、以降「柳橋水車」図という一つのパターンとなったのだとか。江戸時代初期になると、柄杓を小槌に置きかえた槌車文様が登場。文様としてはよく似ているが、柄の先端がとび出ているのが小槌。

 他の日本の文様の本では、平安時代から水車の柄はあったが、江戸初期に槌車の文様が着物に登場した、とありました。
 しかし、水車に流水文様を組み合わせるのはよく分かるが、槌車と流水文様と一緒に用いるのは、実用ではないよね。なぜ水車の代わりに槌車となったのか、疑問です。

 家紋としての槌車は、輪に木槌を取り付けた文様。打つと言う意味で武家の家紋に良く使われているそうです。敵を討つ、あるいは打ち出の小槌など、縁起のよいところから、紋章になったとされています。江戸時代の紋帳に出てくるそうです。
 古いところでは、大阪城中の幟として使用されたものに槌紋が見られるとのことです(最上屏風:大坂夏の陣図屏風)ので、この頃にはすでに紋として存在していた、ということになりますね。
 以下の神社で槌紋が使用されている、とのことです。
八阪神社  奈良県桜井市大字三輪字南天王山
草岡神社  富山県射水市古明神372
中尾神社  山梨県笛吹市一宮町中尾1331
蜂須神社  徳島県美馬郡つるぎ町貞光字宮平7
川田神社  滋賀県甲賀市土山町頓宮769
戸部杉山神社  神奈川県横浜市西区中央1-13-1
倉賀野神社  群馬県高崎市倉賀野町1263
御田神社  富山県氷見市仏生寺496

 謡曲「土車」は「槌車」と関係がないのかと思いますが、テキストに当たってみようと思っています。テキストは関係なくても、舞台衣裳に柄として使われていたりして?

 長谷川等伯(1539-1610年)の六曲一双屏風「柳橋水車図」(兵庫・香雪美術館)が、前述の「柳橋水車」模様流行の嚆矢なのでしょうか。
 「もっと知りたい長谷川等伯」(黒田泰三、東京美術、2010年、70~71p)によると:
屏風一双にわたって俯瞰された金色の橋が架かり、神秘的で崇高な精神性をも感じさせる。川の流れと水車や蛇籠(じゃかご)といった光景は、いかにも装飾的で橋をめぐる空間にあって不自然であるが不思議と調和している。それは、単なる装飾性だけではなく本画題が極楽浄土をイメージさせるからであろう。
「柳橋水車図」は当時京の町で大流行したようで、屏風の制作はもちろん、志野や織部といったやきものの絵付けをはじめ、蒔絵など工芸品のデザインや衣装の文様にも確認することができる。 ←等伯は戦略として(意識的に)流行画題を創案した、とのこと。

 焼き物だと、どのような絵柄になるのか、見てみたいです。
 こうなったら、日本美術系の本で探したらよいのかも。奥平俊六の「屏風をひらくとき」を読んで、そう思いました。この著者の著作とか、巻末参考資料をあさって、見つからなければ、手紙を書いて質問してみたり。

 水車文様から槌車文様が派生したのは、何がきっかけだったのでしょうか。この疑問については、まだ解決していません。「打ち出の小槌で、縁起がよいから」というのが理由なら、裏付けが欲しいなぁ。江戸初期の日本史も勉強した方がよいのかもしれません。

 実際の着物の柄として発見したもので、古いと思われるのは、以下のとおり。

①『京都染織まつり記念図録 写真でみる日本の女性風俗史』(京都書院、昭和60年、92~93ページ)
江戸時代中期の衣裳として掲載されている「波に水車文様振袖」。後ろ左肩に大きく槌車が染めてある。
↑柄の先端がとび出ているので、正しくは「波に槌車文様振袖」ではないでしょうか。
①’『京都染織まつり記念図録 写真でみる日本の女性風俗史』(京都書院、昭和60年、94~95ページ)
江戸時代中期の衣裳として掲載されている「藤花水車文様振袖」。上前衽と後ろ裾、合計三か所に水車が波模様とともに染めてある。
↑こちらは四角い柄杓?

②安政4年の浮世絵?(あるいは美人画)の女性の着物柄に槌車を発見。
これは「きもので読みとく日本画」みたいな題名の本を、本屋の美術本コーナーでで立ち読みして見つけました。

③月岡芳年の明治期団扇絵の女性の着物柄に槌車が描かれていました。

 現代着物の画像も探してみたら、長谷川等伯の「柳橋水車図」と似た柄置きの振袖がありましたよ。そのほか、留袖や、帯にも槌車文様がありました。

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「ちんころ」とは

2017年10月22日 | 着物/和服

 「ちんころ」とは日本髪で前髪をふくらませて結ったところに留める髪飾りのこと。細い紐でできているものが多く、小さい子供が前髪のところから絞りの紐状のものを垂らしている、アレです。後ろの髷(まげ)にかける手絡(てがら)とお揃いだとカワイイ。
 最近、ある着物屋さんの小物コーナーで「ちんころ」らしきものを発見しました。絞りの生地をバイヤスに裁って30cmほどの長さの細い紐状に縫う。芯は無し。

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鼻緒ずれ対策

2017年10月17日 | 着物/和服

 履き物によっては、鼻緒ずれになって水ぶくれが出来てしまったり、皮がむけて血が出てしまうことがあるのですが、平野恵理子の「着物でお出かけ十二ヶ月」(技術評論社)に、対策法が載っていました。
 鼻緒があたるところに予めワセリンクリームを塗っておくとよい、とのことです。

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