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古典和歌をメインにブログを書いてます。歌題ごとに和歌を四季に分類。

古典の季節表現 冬

2013年10月31日 | 日本古典文学-冬

三条には、冬深くなるままに、もののみ悲しく、とぶらひ顔なりし虫の音(ね)も、弱り果てにければ、いとど我が身はいつかとながめ暮らし給ふに、さと吹きまはしたる木枯らしは、恋のつまなる心地して、
  吹き払ふ峰の嵐にたぐへてもいとどこの世のいとはしきかな
(あきぎり~「中世王朝物語全集1」笠間書院)

(略)まことに、植ゑ置き給ひし垣根の草も、霜に朽ち果てて、わづかに這ひまつはれたる龍胆(りんだう)、籬荒れたる菊の花などの、絶え絶えに色を残したるしも心細きに、四方(よも)の梢も吹き払ひて、散り敷きたる庭の木の葉、幾重積もりにけるにかと、いみじうあはれにて、
 憂きながら今は形見に残りけり払はぬ庭に積もる木の葉も
と、独りごち給ふを聞きつけて、大臣、
 あだに見し木の葉は宿におくれゐて人は嵐に思ひかけきや
(いはでしのぶ~「中世王朝物語全集4」笠間書院)

 御前の菊移ろひ果てて盛りなるころ、空のけしきのあはれにうちしぐるるにも、まづこの御方に渡らせたまひて、昔のことなど聞こえさせたまふに、(略)
 御碁など打たせたまふ。暮れゆくままに、時雨をかしきほどに、花の色も夕映えしたるを御覧じて、(略)
(源氏物語・宿木~バージニア大学HPより)

のどやかなる夕つ方、対へ渡り給ひて、音もなくてやをらのぞき給へば、御前(まへ)は異人もなくてしめやかなるに、霜枯れの前栽(せんざい)に、雪の所々消え残りたるをながめ出だして、琵琶をわざとならず弾きすさみて、かたぶきかかり給へるかたはら目、例のうち驚かれて、(略)
(石清水物語~「中世王朝物語全集5」笠間書院)

夕日のはなやかなるを、まばゆげに紛らはし給へる御さまなど、たぐふ光だに隠れ給ひし御後に、めでたしともおろかなり。いづくにても尽きすべくもあらぬあはれに、しばしばかり候ひ給ふほど、空の気色も、折を分くにや、うちしぐれつつ、風も荒く、身にしむ心地するに、霰のはらはらと落つるが、袖の上にかかるを、のどやかにうち払ひ給へる追風も、いとかごとがまし。
 露時雨なれにし袖にいとどしくまたや霰の玉を添ふべき
とのとまふに、
 時雨降り添ふる霰の音ごとに涙の玉は数まさりつつ
けはひ目安く聞こえたるは、新大納言の君にやとぞ聞き給ふ。
(いはでしのぶ~「中世王朝物語全集4」笠間書院)

冬のなかうた 凡河内躬恒
ちはやふる神な月とやけさよりはくもりもあへすうちしくれ紅葉とゝもにふるさとのよしのゝ山の山あらしもさむく日ことになりゆけは玉のをとけてこきちらしあられみたれてしもこほりいやかたまれる庭のおもにむらむらみゆる冬くさのうへにふりしくしら雪のつもりつもりてあらたまの年をあまたもすくしつる哉
(古今和歌集~国文学研究資料館HPより)

戸無瀬(となせ)のわたりの森の木末(こずゑ)、嵐はしたなく吹きしきて、残る松のさびしさも、川瀬の波に響き合はせ、堰杭(ゐくひ)によどむ紅葉(もみぢ)の色も、川の藻屑(もくづ)に朽ちなりぬ。
(恋路ゆかしき大将~「中世王朝物語全集8」笠間書院)

冬歌の中に 蓮生法師
なかれゆく紅葉をむすふ山川の氷そ秋の色をとゝむる
(続拾遺和歌集~国文学研究資料館HPより)

冬は山伏修行せし、庵とたのめし木の葉も紅葉(もみぢ)して、散り果てて、そらさびし、褥(にく)と思ひし苔にも初霜雪ふりつみて、岩間にながれ来し水も、こほりしにけり
(梁塵秘抄~岩波・日本古典文学大系)

 神無月の末より、雪いたう降り積もりて、爪木をとるべき道を失ひ、岩間を求めて汲みし清水も、いつしか氷に閉ぢ果てられ、冬こそ、げに物憂きことの数まさるなれ。
(松陰中納言~「中世王朝物語全集16」笠間書院)

 すでに冬にもなりぬ。雪いみじう降りけるに、鞍馬へ詣でして下向し給ふに、みぞろ池の葦のはざまにをし鳥のひとり寝たるを見て、
  わがごとく物や悲しき池水につがはぬをしのひとりのみして
とながめ給へども、聞き知る人もなし。
(略)
さて住吉には、やうやう冬ごもれるままに、いとさびしさまさりて、荒き風吹けばわが身の上に浪立ちかかる心しける。沖より漕ぎ来る舟には、あやしき声にて、「にくさびかける」など謡ふもさすがにをかしかりけり。住の江には、霜枯れ葦の水、氷にむすぼほれたる中に、水鳥の、人にも驚かず、釣殿の下に上毛の霜うち払ふにつけても、思ひ残す事なし。
  水鳥の上毛の霜をうち払ひをのが羽風やさむげなるらむ
(住吉物語~「中世王朝物語全集11」笠間書院)

宇治にまかりて侍ける時、読る 中納言定頼
朝ほらけ宇治の川霧たえたえに顕れ渡るせゝのあしろ木
(千載和歌集~国文学研究資料館HPより)

山里の冬といを事を人々よみけるに
玉まきし垣ねのまくず霜がれてさびしく見ゆる冬のやまざと
(山家和歌集~バージニア大学HPより)

冬の歌とてよめる 源宗于朝臣
山里は冬そさひしさまさりける人めも草もかれぬと思へは
(古今和歌集~国文学研究資料館HPより)

百首歌奉し時 前大納言実明女
山里はさひしとはかりいひ捨てこゝろとゝめて見る人やなき
(風雅和歌集~国文学研究資料館HPより)

 冬歌中に
おもひやれたにのをがはもおとたえて松風のこる冬のやま里
(逸名歌集-穂久邇文庫~新編国歌大観10)

 春秋はさてもありけり、このころの嵐のはげしさ、松の響(ひゞき)さへあひて、木の葉のきほひ散り、晴間(はれま)見ゆるをりはすくなく、掻きくらししぐるゝほどの心ぼそき、(略)木丁をおしやりてながめいだし給へれば、木々の木の葉、残りなうなりにたるに、雪うち降りて、鳥どもの立ちさわぐけしきもいとあはれにて、「鳥は林とちぎれり、林枯れぬれば鳥」と、いとおもしろう誦(ずん)じたまひて、「この人を例ざまに思ひなぐさめさせて、少しうちとけ見なれて、かやうの空のけしきをも、鳥のさへづりをも、共に見ばや」と心もとなくおぼえ給。
  冬ごもり吉野の山に雪ふりていとゞ人めや絶えんとすらん
(浜松中納言物語~岩波・旧日本古典文学大系77)

一品聡子内親王仁和寺に住侍りける冬比、かけひのこほりを三のみこのもとにをくられて侍けれは、つかはしける 輔仁のみこ
山さとのかけひの水のこほれるはをと聞よりもさひしかりけり
返し 聡子内親王
山さとのさひしき宿の栖にもかけひの水のとくるをそまつ
(千載和歌集~国文学研究資料館HPより)

夕暮に鷺のとふをみて 前参議雅有 
つらゝゐる苅田の面の夕暮に山もと遠く鷺わたるみゆ 
(玉葉和歌集~国文学研究資料館HPより)

 御前の池に水鳥どもの日々におほくなり行を見つつ入らせ給はぬさきに雪降らなんこの御前のありさまいかにをかしからんと思にあからさまにまかでたる程二日ばかりありてしも雪は降るものか。見どころもなきふるさとの木立を見るにも物むつかしう思みだれて年ごろつれづれにながめ明かし暮らしつつ花鳥の色をも音をも春秋に行かふ空のけしき月の影霜・雪を見てその時来にけりとばかり思ひ分きつついかにやいかにとばかり行く末の心ぼそさはやる方なき物からはかなき物語などにつけてうちかたらふ人をなじ心なるはあはれに書きかはしすこしけ遠きたよりどもをたづねてもいひけるをただこれをさまざまにあへしらひそぞろごとにつれづれをばなぐさめつつ世にあるべき人数とは思はずながらさしあたりて恥づかしいみじと思ひ知るかたばかりのがれたりしをさものこることなく思ひ知る身の憂さかな。
(紫式部日記~新日本古典文学大系)

冬になりて、月なく、ゆきもふらずながら、ほしのひかりに、そらさすがにくま なくさえわたりたる夜のかぎり、殿の御方にさぶらふ人々と物がたりしあかしつゝ、 あくればたちわかれわかれしつゝ、まかでしを、思いでければ、
月もなく花も見ざりし冬のよの心にしみてこひしきやなぞ
我もさ思ことなるを、おなじ心なるも、おかしうて
さえし夜の氷は袖にまだとけで冬の夜ながらねをこそはなけ
(更級日記~バージニア大学HPより)

小野には、ただ尽きせぬながめにて、冬にもなりにけり。都だに雪・霰(あられ)がちなれば、ましていとどしく、かきたれ、消(け)ぬが上にまた降り添ひつつ、いく重(へ)か下に埋(うづ)もるる峰の通ひ路(ぢ)を、ながめ出でたる夕暮、(略)
(山路の露~「中世王朝物語全集8」笠間書院)

 冬も深くなりぬれば、いとど涙のつららも、枕の上に閉ぢ重ねつつ、霜になれゆく袖の片敷きに、幾夜ともなき夜な夜なの寂しさを、「嘆かんためか」など、くちすさみて、人なき床(とこ)を払ひわびつつ、ながめ出で給へる夕暮、雪かき暗(くら)し降りて、風の気色も荒々しきに、(略)暮れ果てぬれば、若君は、寝入り給ひにけるもいとあはれにて、乳母召して、渡しきこえ給へば、また目をさまして、むつかり給ふを、「さしもよからぬ身を、誰かはかう思ふ人もあらん。さらばさてもあれかし」とて、御側(そば)に臥せきこえ給ひながら、かつ、降る雪にかき暗れて、夕闇の頃の星の光だに埋(うづ)もれ果てたる空を、つくづくとながめ出で給ひつつ、来(き)し方行く先、さまざま思し続くるに、(略)
御共には、ただ少納言某一人、さらでは、何なるまじきあやしの者どもばかりにて、御馬にておはするに、川原のほどなどは、やや更けにけるを、雪は行く先も見えず降りまよひて、風は激しき夜のけはひ、いともの恐ろしきに、(略)
(いはでしのぶ~「中世王朝物語全集4」笠間書院)

やうやう冬深くなるままに、木枯らし激しく、空かき曇りて、すさまじかるべき冬の月も、折柄にや、宵過ぎて出づる、月影さやかに澄みわたり、雪少し降りたるは、いみじく心細げなるに、小夜千鳥の妻恋ひわぶるも、貫之が「妹がり行けば」と詠みけんも思ひ出でられて、とばかりうちながめられても、かの寂しき宿のながめ、思ひやられて、おはして見給へば、時分かぬ深山木の小暗くもの古(ふ)りたるを、尋ね寄りたるにや、四方(よも)の嵐もほかよりはもの恐ろしげに吹き迷ひてもの悲しきに、雪かきくらし降る庭の面(おも)は、人めも草も枯れのみまさりて、いとど心細きを、「こざらましかば」と、うち語らひ給ひて、もろともにながめ出で給ひて、さしも待たるる夜な夜な紛れ給へども、母君はかけても知り給はず。
(あきぎり~「中世王朝物語全集1」笠間書院)

冬の比、後夜の鐘のをと聞えけれは峰の坊へのほるに、月雲より出て道を送る。峰にいたりて禅室にいらんとする時、月又雲をおひて、むかひの嶺にかくれなんとするよそほひ、人しれす月のわれにともなふかとみえけれは 高弁上人
雲を出てわれにともなふ冬の月風や身にしむ雪やつめたき
(玉葉和歌集~国文学研究資料館HPより)

冬は 雪・霰がちに氷し、風はげしうていみじう寒き、よし。
(枕草子・前田家本)

冬は、つとめて。雪の降りたるは、いふべきにもあらず。霜のいと白きも。また、さらでもいと寒きに、火などいそぎおこして、炭もてわたるも、いとつきづきし。昼になりて、ぬるくゆるびもていけば、火桶の火も、白き灰がちになりて、わろし。
(枕草子~新潮日本古典集成)

雪のいと高くはあらで、うすらかに降りたるなどは、いとこそをかしけれ。又雪のいと高く降り積みたる夕暮より、端ちかう、同じ心なる人二三人ばかり、火桶中に居ゑて、物語などするほどに、暗うなりぬれば、こなたには火もともさぬに、大かた雪の光いと白う見えたるに、火箸して灰などかきすさびて、あはれなるもをかしきも、いひあはするこそをかしけれ。よひも過ぎぬらんと思ふほどに、沓の音近う聞ゆれば、怪しと見出したるに、時々かやうの折、おぼえなく見ゆる人なりけり。今日の雪をいかにと思ひきこえながら、何でふ事にさはり、そこに暮しつるよしなどいふ。今日來ん人をなどやうのすぢをぞ言ふらんかし。晝よりありつる事どもをうちはじめて、よろづの事をいひ笑ひ、圓座さし出したれど、片つ方の足はしもながらあるに、鐘の音の聞ゆるまでになりぬれど、内にも外にも、いふ事どもは飽かずぞおぼゆる。 昧爽のほどに歸るとて、雪何の山に滿てるとうち誦じたるは、いとをかしきものなり。
(枕草子~バージニア大学HPより)

 常の冬よりも、雪・霰がちに晴間なき空の気色も、いとゞ所がらには、しめやかに物心細くて、参り給ひぬれば、又何事よりも、忍ぶ捩摺(もぢずり)は、様殊に乱れまさり給ひぬべし。御前を、見入れ給へれば、小さき御几帳より、御衣の袖口・裾など隠れなし。蘇芳の御衣どもに匂ひ満ちたるに、浮線綾の白き八重なる、籬の菊の、枝ざしよりはじめ、移ろひたる色の、けざやかに見えたる、例の人、着たるやうにもあらず、「あなめでた」と見えて、御髪の、肩のほどよりこぼれ出でたる、額髪の、袖口まで、なよなよと引かれいでたるも、様殊にみゆ。
(狭衣物語~岩波・日本古典文学大系)

冬望と云ことを 院御製
冬ふかみさひしき色は猶そひぬかり田の面の霜の明かた
(新拾遺和歌集~国文学研究資料館HPより)

はれくもりあかすしくるるふゆのひのひかりすくなくくるるそらかな
(文保百首~日文研HPより)

冬の日の影ともばかりかつきえてかたへこほれる庭の白雪
(文保百首~新編国歌大観4)

雪埋竹といふことを
雪うづむ園の呉竹をれふしてねぐらもとむるむらすゞめかな
(山家和歌集~バージニア大学HPより)

雪いとふりて、竹簀垣(たかすがき)といふ物したる所のさまも、ならはぬ心ちして、
世をいとふならひながらもたかすがきうきふしぶしはふゆぞかなしき
(問はず語り~岩波文庫)

百首御歌の中に 後鳥羽院御製
さなからや仏の花にたおらまししきみの枝にふれる白雪
(玉葉和歌集~国文学研究資料館HPより)

大江頼重こしに侍けるに申つかはしける 法眼慶融
都たにしくるゝ比のむら雲にそなたの空の雪けをそしる
返し 大江頼重
宮古たに晴ぬ時雨に思ひやれ越路は雪のふらぬ日そなき
(続千載和歌集~国文学研究資料館HPより)

これよりゆふさりつかた「うちのがるまじかりけり」とていづるに心えで人をつけてみすれば「町の小路なるそこそこになんとまり給ひぬ」とてき たり。さればよといみじうこゝろうしと思へどもいはんやうもしらであるほどに二三日ばかりありてあかつきがたにかどをたゝくときあり。さなめりと思ふにうくてあけさせねばれいのいへとおぼしきところにものしたり。つとめてなほもあらじとおもひて
なげきつゝひとりぬるよのあくるまはいかにひさしきものとかはしる
とれいよりはひきつくろひてかきてうつろひたる菊にさしたり。かへりごと「あくるまでもこころみむとしつれどとみなるめしつかひのきあひたりつればなんいとことわりなりつるは
げにやげにふゆのよならぬまきのともおそくあくるはわびしかりけり
(蜻蛉日記~バージニア大学HPより)

ふゆかれのしものしたくさはるをまつたのみたになくみはふりにけり 
(延文百首~日文研HPより)

厭(いと)はじな、たまゆら宿る人の盛り 身を知る雨の初時雨、定めなきかな浮雲の、月の匂ひも影寒き、鴛鴦(をし)の浮寝(うきね)の枕さへ、氷柱(つらら)の袂解けやらで 床(とこ)の浦曲(うらわ)の繁(し)き波の、浜風冴えて鳴く千鳥、思へば夢の世を知らで、やがて枯野の朝露と 消えなんものを、誰(たれ)か残りし菊の香(か)の、八重紫(やへむらさき)に移ろひて、袖の昔も何時(いつ)しかに、逢ひ見し事を数ふれば むらむら見ゆる冬草の、上に降り敷く白雪(しらゆき)の、道踏み分けて誰(たれ)訪(と)はん、松の思はん羽束師(はづかし)の、森の木枯(こがらし)絶え絶えに、涙々(なみだなみだ)たばしる玉霰、明日待つ間(ま)の憂き身の命、流れの末の我(われ)らさへ、もしもや誘ふ水しもあらば、恋の柵(しがらみ)堰(せ)き止(と)めよ。
(岩波文庫「松の葉」より)

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古典の季節表現 冬 残菊

2013年10月31日 | 日本古典文学-冬

題しらす 権大僧都宋親
秋に見し色も匂ひもそれなから霜に残れる庭の白菊
(新後拾遺和歌集~国文学研究資料館HPより)

題しらす 源直頼
おく霜に残れる庭の白きくを秋なき時のかたみとそみる
(新後拾遺和歌集~国文学研究資料館HPより)

後冷泉院御時、残菊映水といへる心を人々つかうまつりけるに 権大納言長家
神無月残るみきはの白菊はひさしき秋のしるしなりけり
(新勅撰和歌集~国文学研究資料館HPより)

残菊を 左近中将師良
をのつから残るもさひし霜枯の草はにましる庭の白菊
(新後撰和歌集~国文学研究資料館HPより)

花ならぬ匂ひも後はなきものをうつろひ残れ庭の白菊
(六百番歌合~岩波文庫)

円融院に一本菊奉るとて 尚侍藤原灌子朝臣
しくれつゝ時ふりにける花なれと雲ゐにうつる色はかはらす
御返し円融院御製
いにしへをこふる涙の時雨にもなをふりかたき花とこそみれ
(続後撰和歌集~国文学研究資料館HPより)

つれなくも猶冬かれに残りきて霜にうつろふしら菊の花
(建長八年九月十三日・百首歌合~日文研HPより)

冬ふかきころ、わづかに霜がれの菊の中に、あたらしく咲きたる花を折りて、ゆかりある人のつかさめしになげくことありしが、いひおこせたりし。
霜がれの下枝(したえ)に咲ける菊みればわがゆくすゑもたのもしきかな
と申したる返しに、
花といへばうつろふ色もあだなるを君がにほひはひさしかるべし
(建礼門院右京大夫集・岩波文庫)

後一条院御時、中宮斎院に行啓侍けるに、庚申の夜月照残菊といへる心をよみ侍ける 権大納言長家
色さむみ枝にも葉にも霜降て有明の月をてらす白菊
(続後撰和歌集~国文学研究資料館HPより)

神無月の末つかた、女にかはりて、枯たる菊の枝につけて人の許につかはしける 従二位隆博
つらしとはうつろふをたに見し物を枯はてぬるか庭の白きく
(新千載和歌集~国文学研究資料館HPより)

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古典の季節表現 冬 十月

2013年10月28日 | 日本古典文学-冬

佛前唱歌一首
時雨の雨間なくな降りそ紅ににほへる山の散らまく惜しも
 右冬十月皇后宮之維摩講 終日供養大唐高麗等種々音樂 尓乃唱此歌詞 弾琴者市原王 忍坂王[後賜姓大原真人赤麻呂也] 歌子者田口朝臣家守 河邊朝臣東人 置始連長谷等十數人也
(万葉集~バージニア大学HPより)

十月はかり、おもしろかりし所なれはとて、きた山のほとりにこれかれあそひ侍けるついてに 兼輔朝臣 
思ひ出てきつるもしるくもみちはの色はむかしにかはらさりけり 
(後撰和歌集~国文学研究資料館HPより)

かみなつきありあけのつきのやまおろしにしもおきなからちるもみちかな
(夫木抄~日文研HPより)

 十月に賀茂にまうてたりしに。ほかのもみちはみなちりにたるに。なかのみやしろのか。またちらてありしに
しめのうちの風たによらぬ紅葉かな神の心はかしこかり鳧
(赤染衛門集~群書類従15)

花園院くらゐにおましましける時、十月はかり、持明院殿へ行幸あるへかりけるまへの日、もみちを箱のふたに入て奉らせ給うける 伏見院御製 
色そへんみゆきをそ待紅葉はもふりぬる宿の庭のけしきに 
御返し 花園院御製 
たつぬへき程こそいとゝいそかるれかつかつみゆる庭の紅葉は 
(新拾遺和歌集~国文学研究資料館HPより)

 十月、初瀬にまうで給へるに、霧のいみじうあか月に立ちたりけるを
ゆく道の紅葉の色も見るべきを霧とともにやいそぎ立べき
 返し、中納言
霧わけていそぎ立なむ紅葉ばの色し見えなば帰りゆかれじ
(大納言公任集~「和歌文学大系54」明治書院)

 円融院、大井川に御幸ありけるに、先少林寺の前に、借屋をたてておはします。大入道殿摂政の時、御膳まふけられけり。茶埦(ちゃわん)にてぞありける。其後御船にたてまつりて、となせにおはしましけり。詩歌管絃おのおの船こと也けり。源中納言保光卿題たてまつる。「翫水辺紅葉」とぞ。詩の序右中弁資忠、和歌の序大膳大夫時文つかうまつれり。法皇御衣をぬぎて、摂政にたまふ。摂政又衣をぬぎて、大蔵卿時仲に給ひけり。管絃の人々、上達部衣をかづけられけり。内裏より、頭中将誠信朝臣、御使にまいれり。禄を給ひてかへりまいる。摂政管絃の船に候。時仲の三位をめして、院の仰を伝て、参議になされけり。人々ひそかにいひける、「主上の御前にあらず、たちまちに参議をなさるゝ事、いかゞあるべき」とかたぶきけり。今日の事、何事も興ありていみじかりけるに、此事にすこし興さめりけり。
(續古事談~おうふう)

神無月のころ、歌合のまけわさせさせ給けるとき、法皇御幸侍けるに、紅葉の舟につけらるへき歌とてつかうまつりける 藤原為道朝臣 
紅葉はのあけのそほ舟こきよせよこゝをとまりと君もみるまて 
(新後撰和歌集~国文学研究資料館HPより)

題しらす 入道前太政大臣 
神無月梢のもみち庭の菊秋の色とはなに思ひけん 
(玉葉和歌集~国文学研究資料館HPより)

 十月にもみちのいとこきと移ろひたる菊とをつゝみて人
秋はてゝ今は盛のもみち葉と移ろふ菊といつれまされり
 かへし
紅葉はの散をも思ふ菊ならてみるへき花のなきもなけかし
(赤染衛門集~群書類従15)

天暦七年十月、后宮の御方に菊うへさせ給ける日、うへのをのことも歌つかうまつりけるついてに 天暦御製 
心して霜のをきける菊の花千世にかはらぬ色とこそみれ 
(続後撰和歌集~国文学研究資料館HPより)

延長六年十月女房常寧殿の御前に菊植ける時読侍ける まちしりのこ 
をく霜に色はみえねと菊の花こむらさきにも成にけるかな 
(玉葉和歌集~国文学研究資料館HPより)

かみな月の頃庵にて
山里の草のいほりに來て見れば垣根に殘るつはぶきの花
(良寛歌集~バージニア大学HPより)

 又十月はかりやらんといひし
霜枯の野へに朝吹く風の音の身にしむはかり物をこそ思へ
(赤染衛門集~群書類従15)

聞きなれし蟲の音も、やや弱りはてて、松ふく峯の嵐のみぞ、いとど烈しくなりまされる、懷土の心にもよほされて、つくづ くと都のかたを眺めやる折しも、一行の雁がね、空に消えゆくもあはれなり。
(東関紀行~バージニア大学HPより)

あしがらといひし山のふもとに、くらがりわたりたりし木のやうに、しげれる所なれば、十月許の紅葉、よもの山辺よりもけに、いみじくおもしろく、にしきをひけるやうなるに、ほかよりきたる人の、「今、まいりつるみちにもみぢのいとおもしろき所のありつる」といふに、ふと、
いづ こにもおとらじ物をわがやどの世を秋はつるけしき許は
(更級日記~バージニア大学HPより)

十月許にまうづるに、道のほど、山のけしき、このごろは、いみじうぞまさる物なりける、山のは、にしきをひろげたるやう也。たぎりてながれゆく水、すいしゃうをちらすやうにわきかへるなど、いづれもすぐれたり。まうでつきて、そうぼうにいきつきたるほど、かきしぐれたる紅葉の、たぐひなくぞ見ゆるや。
おく山の紅葉のにしきほかよりもいかにしぐれてふかくそめけむ
(更級日記~バージニア大学HPより)

神無月の比、栗栖野といふ所を過ぎて、ある山里にたづね入る事侍りしに、遙なる苔のほそ道をふみわけて、心ぼそくすみなしたる庵あり。木の葉にうづもるゝかけ樋の雫ならでは、つゆおとなふ物なし。閼伽棚に菊紅葉など折りちらしたる、さすがにすむ人のあればなるべし。
(徒然草~バージニア大学HPより)

神無月の初めつ方、時雨し、風吹きなどしておもしろかりけるに、后の宮の御方にて御笛吹かせ給ふ。隆房、維盛、雅賢、朗詠し、今様など歌ひ、おもしろかりければ、とみにも入(い)らせ給はで御覧ぜられける。藤壺の御前の紅葉散りしきて、色々の錦と見えて風にしたがふけしき、いと興あり。
(平家公達草紙~岩波文庫「建礼門院右京大夫集」)

 神無月のころほひ、月おもしろかりし夜、内裏よりまかではべるに、ある上人来あひて、この車にあひ乗りてはべれば、大納言の家にまかりとまらむとするに、この人言ふやう、『今宵人待つらむ宿なむ、あやしく心苦しき』とて、この女の家はた、避きぬ道なりければ、荒れたる崩れより池の水かげ見えて、月だにやどる住処を過ぎむもさすがにて、下りはべりぬかし。
  もとよりさる心を交はせるにやありけむ、この男いたくすずろきて、門近き廊の簀子だつものに尻かけて、とばかり月を見る。菊いとおもしろくうつろひわたり、風に競へる紅葉の乱れなど、あはれと、げに見えたり。
  懐なりける笛取り出でて吹き鳴らし、「蔭もよし」などつづしりうたふほどに、よく鳴る和琴を、調べととのへたりける、うるはしく掻き合はせたりしほど、けしうはあらずかし。律の調べは、女のものやはらかに掻き鳴らして、簾の内より聞こえたるも、今めきたる物の声なれば、清く澄める月に折つきなからず。男いたくめでて、簾のもとに歩み来て、
  『庭の紅葉こそ、踏み分けたる跡もなけれ』などねたます。菊を折りて、
  『琴の音も月もえならぬ宿ながらつれなき人をひきやとめける
 わろかめり』など言ひて、『今ひと声、聞きはやすべき人のある時、手な残いたまひそ』など、いたくあざれかかれば、女、いたう声つくろひて、
  『木枯に吹きあはすめる笛の音をひきとどむべき言の葉ぞなき』
  となまめき交はすに、憎くなるをも知らで、また、箏の琴を盤渉調に調べて、今めかしく掻い弾きたる爪音、かどなきにはあらねど、まばゆき心地なむしはべりし。ただ時々うち語らふ宮仕へ人などの、あくまでさればみ好きたるは、さても見る限りはをかしくもありぬべし。時々にても、さる所にて忘れぬよすがと思ひたまへむには、頼もしげなくさし過ぐいたりと心おかれて、その夜のことにことつけてこそ、まかり絶えにしか。
(源氏物語・箒木~バージニア大学HPより)

(略)仏の御前に、うち行なひつつおはしますに、内大臣も、今宵は候ひ給ひける、こなたへ参り給ふとて「落葉階(きざはし)に満ちて、紅(くれなゐ)を払はず」と、長やかにうち誦じ給へる、いみじき御心の催しなるに、西の妻戸を押し開けて、簀子に候ひ給ふ。
月は入りぬれど、星の光もたどたどしからぬに、げにぞ木の葉降り敷く庭の気色を、つくづくとながめ出で給へる御直衣姿、世に知らず艶(えん)になまめかしきを、何となう、昔思ひ出でらるる心地して、(略)
(いはでしのぶ~「中世王朝物語全集4」笠間書院)

 大将、頭の弁の誦じつることを思ふに、御心の鬼に、世の中わづらはしうおぼえたまひて、尚侍の君にも訪れきこえたまはで、久しうなりにけり。
 初時雨、いつしかとけしきだつに、いかが思しけむ、かれより、
 「木枯の吹くにつけつつ待ちし間におぼつかなさのころも経にけり」
 と聞こえたまへり。折もあはれに、あながちに忍び書きたまへらむ御心ばへも、憎からねば、御使とどめさせて、唐の紙ども入れさせたまへる御厨子開けさせたまひて、なべてならぬを選り出でつつ、筆なども心ことにひきつくろひたまへるけしき、艶なるを、御前なる人々、「誰ばかりならむ」とつきじろふ。
 「聞こえさせても、かひなきもの懲りにこそ、むげにくづほれにけれ。身のみもの憂きほどに、
  あひ見ずてしのぶるころの涙をもなべての空の時雨とや見る
 心の通ふならば、いかに眺めの空ももの忘れしはべらむ」
 など、こまやかになりにけり。
(源氏物語・賢木~バージニア大学HPより)

かみな月れいのとしよりもしぐれがちなるこゝちなり。十餘日のほどにれいのものする山でらに もみぢも見がてらとこれかれいざなはるればものす。けふしもしぐれふりみふらずみひねもすにこの山いみじうおもしろきほどなり。
(蜻蛉日記~バージニア大学HPより)

十月(かんなづ き)のころになりぬれば、なべて時雨(しぐれ)がちなる空のけしきも、袖(そで)の涙にあらそひて、よろづ常の年々よりも、心細さも味気(あぢき)なければ、まことならぬ母の、嵯峨に住まひたるがもとへまかりて、法輪(ほふりん)に籠(こも)りて侍れば、嵐の山の紅葉も、憂き世をはらふ風にさそはれて、大井川の瀬々に波よる錦と覚ゆるにも、いにしへのことも公私忘れがたき中に、後嵯峨の院の宸筆(しんぴつ)の御経の折、めんめんの姿、捧げ物などまで、かずかず思ひ出でられて、うらやましくも返る波かなと覚ゆるに、ただここもとに鳴く鹿のねは、誰(た)がもろ声にかとかなしくて、
わが身こそいつも涙のひまなきに何をしのびて鹿の鳴くらん
(とはずがたり~講談社学術文庫)

題しらす 平師親
さそはるゝ嵐待えて神無月ふるは木葉の時雨なりけり
(新千載和歌集~国文学研究資料館HPより)

神無月のころ、ふりみふらすみ、さためなきころは、なをつれつれも、ひとしほ、やるかたなく、こゝろすこきおりしも、(略)
(窓の教~「室町時代物語大成12」)

神無月の初空、定めなきけしき、身は風葉の行末なき心地して、(略)
(笈の小文~バージニア大学HPより)

落葉 参議公明
神無月吹や嵐の山高み雲に時雨てちる木葉哉
(続千載和歌集~国文学研究資料館HPより)

題しらす 曽祢好忠
露はかり袖たにぬれす神無月紅葉は雨とふりにふれとも
(新勅撰和歌集~国文学研究資料館HPより)

題しらす 前中納言匡房
唐錦むらむら残る紅葉はや秋のかたみの衣なるらん
(新勅撰和歌集~国文学研究資料館HPより)

十月九日、冷泉院の釣殿にて、神無月といふことを上(かみ)に置きて、歌読ませ給ふに
神無月かぜにもみぢの散るときはそこはかとなくものぞかなしき
(高光集)

(略)十月の頃にや、紅葉重ねの薄様にて、
 初時雨今日降りそむる紅葉葉の色の深きを思ひ知れとぞ
書きて引き結びて、筑前に取らせ給ふ。
(住吉物語~「中世王朝物語全集11」笠間書院)

あきはてて今はとかるる浅茅生は人の心に似たる物かな
(和泉式部集~岩波文庫)

落葉
秋をへし木の葉は霜にくちはててちるも色なき神な月かな
(草根集~日文研HPより)

初冬歌に 伏見院新宰相
草枯てさひしかるへき庭の面に紅葉散しき菊も咲けり
(風雅和歌集~国文学研究資料館HPより)

 十月にやのうへにこの葉のちりつみたるを風のふきちらしたるをみて
つまならてあれ行閨の上とてや木の葉を風のふきちらす覧
(赤染衛門集~群書類従15)

時雨 寂然
かきくらしものそかなしき神無月なかむる空にうち時雨つゝ
(今撰和歌集~群書類従10)

十月、暁方に、目を覚まして聞けば、時雨のいたうすれば
冬の日を短き物と言ひながら明(あ)くる間だにも時雨るなるかな
(和泉式部続集~岩波文庫)

 また十月ばかりに「それはしもやんごとなきことあり」とていでんとするにしぐれといふばかりにもあらずあやにくにあるになほいでんとす。あさましさにかくいはる。
 ことわりのをりとは見れどさよふけてかくやしぐれのふりはいづべき
といふにしひたる人あらんやは。
(蜻蛉日記~岩波文庫)

源政長朝臣の家にて人々なかうたよみけるに、初冬述懐といへるこゝろをよめる 大納言経信 
あらたまの/としくれゆきて/ちはやふる/神無月にも/なりぬれは/露より霜を/むすひ置て/野山の気しき/ことなれは/なさけおほかる/ひとひとの/とをちの里に/まとゐして/うれへわするゝ/ことなれや/竹の葉をこそ/かたふくれ/こゝろをすます/我なれや/桐のいとにも/たつさはる/身にしむ事は/庭のおもに/草木をたのみ/なくむしの/たえたえにのみ/なりまさる/雲ちにまよひ/ゆくかりも/きえみきえすみ/見えわたり/しくれはふれと/もみち葉も/あらふにしきと/あやまたれ/霧しはるれは/月かけも/すめるかたみに/ことならす/ことはにたへす/しきしまに/すみける君も/もみちはの/たつたの河に/なかるゝを/わたらてこそは/おしみけれ/しかのみならす/からくにゝ/わたりし人も/月かけの/春日の山に/いてしをは/わすれてこそは/なかめけれ/かゝるふること/おほゆれと/わか身につもる/たきゝにて/言葉の露も/もりかたし/こゝろきえたる/はいなれや/思ひのことも/うこかれす/しらぬおきなに/なりゆけは/むつふるたれも/なきまゝに/人をよはひの/草もかれ/我にしきゝも/くちはてゝ/ことそともなき/身のうへを/あはれあさ夕/何なけくらん
(新拾遺和歌集~国文学研究資料館HPより)
源政長朝臣の家にて人々なか歌よみ侍けるに、初冬述懐といへる心をよめる 源俊頼朝臣 
やまさとは/冬こそことに/かなしけれ/峰ふきまよふ/木からしの/戸ほそをたゝく/声きけは/やすき夢たに/むすはれす/しくれとともに/かたをかの/まさきのかつら/ちりにけり/今は我身の/なけきをは/何につけてか/なくさめん/雪たにふりて/霜かれの/草葉のうへに/つもらなむ/それにつけてや/あさゆふに/わかまつ人の/我を待らん 
(新勅撰和歌集~国文学研究資料館HPより)

山家初冬をよめる 藤原孝善
いつのまに筧の水のこほるらむさこそ嵐の音のかはらめ
(千載和歌集~国文学研究資料館HPより)

かくてつねにしもえいなびはてでときどきみえて冬にもなりぬ。ふしおきはたゞをさなき人をもてあそびて「いかにしてあじろの氷魚にこととはむ」とぞ心にもあらでうちいはるる。
(蜻蛉日記~バージニア大学HPより)

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古典の季節表現 冬 十月十日 維摩会(ゆいまゑ)

2013年10月10日 | 日本古典文学-冬

右 維摩会 新中納言
百済より伝しまゝの法の声大和もろこし声たえすして
(略)右は奈良の山階寺にて維摩経を講ぜらるゝ也。昔淡海公の願にて。唐国へも聞えたる大会にて侍り。百済の尼伝侍由。縁起に侍にや。
(年中行事歌合~群書類従)

白河殿七百首歌に、維摩会をよませ給うける 後嵯峨院御製
神無月時雨ふりをける御法とてならの都に残ることの葉
(新続古今和歌集~国文学研究資料館HPより)

僧都光覚維摩会の講師の請を申けるを、たひたひもれにけれは、法性寺入道前太政大臣に恨申けるを、しめちかはらと侍けれと、又その年ももれにけれはつかはしける 藤原基俊
契をきしさせもか露を命にてあはれことしの秋もいぬめり
(千載和歌集~国文学研究資料館HPより)

同七年十月維摩會を山階寺にうつしおこなひ給ひき。この會は九ところにておこなはれしに。其事中だえてことし四十二年にぞなり侍りし。
(水鏡~国文学研究資料館HPより)

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古典の季節表現 冬 十月

2013年10月02日 | 日本古典文学-冬

神無月といふ事は日本の神たち出雲の國にあつまりたまへば出雲には神有月と申すとかや
かの大社の明神は諸神のつかさにてましませばこのところにもろもろの神たちあつまり給ふ
げにも出雲の海づらにはさゝ舟いくらといふ数なくうかびてみゆといひつたへ侍り
北時雨いくしほそむらん青かえでもいろことに染わたりて
にしきをさらす山々の名どころはおほけれど
ことさら龍田の明神は紅色をこのみ給へばもみぢのいろもことにそめわたり
川にちりしくありさま蜀江(しょくかう)にひたしてすゝぐにしきのいろもかくやとぞおもほゆ
都ちかきところには稲荷山のもみぢも名たかけれと高雄のもみぢは一きはの詠めぞかし
あたり近き清たきの川瀬よりちりうきてながるゝもみぢの色を見ざらんもこゝろづきなし
谷ふかきにむかひてかはらけなげのあそびするはさら也
(佛教大学図書館デジタルコレクション「十二月あそひ」より)

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