monoろぐ

古典和歌をメインにブログを書いてます。歌題ごとに和歌を四季に分類。

「袖の淵」用例

2019年07月05日 | 日本国語大辞典-さ行

 「袖の淵」という用語は、涙が多く流れることのたとえで、日本国語大辞典第2版では、浄瑠璃『暦』(1685年)の用例を早い例として挙げていますが、もっとさかのぼる用例が複数あります。

この人にふちなとたつねをきてあはんといひしかは
流れいてんうきなにしはしよとむ哉求めぬ袖の淵はあれ共
(巻第二百七十六・相模集)
塙保己一編『群書類従・第十五輯(訂正三版)』1987年、643ページ

年(とし)月の恋も恨みもつもりては昨日にまさる袖の淵(ふち)哉
(式子内親王集、恋、182)
『和歌文学大系23』(式子内親王集・建礼門院右京大夫集・俊成卿女集・艶詞)明治書院、2001年、31ページ


「裾③」用例

2019年07月04日 | 日本国語大辞典-さ行

 「裾(すそ)」という単語には「山のふもと。」という語釈があり、日本国語大辞典では1476年の連歌に例を古用例として挙げていますが、もっとさかのぼる用例が複数あります。

しかまつとはやまのすそにともししてなつのよなよなたちあかすかな
(東塔東谷歌合-永長二年)
『新編国歌大観 5 』角川書店、1987年、131ページ

照射するは山のすそに立鹿のめもみせぬ夜をなけきつる哉
(巻第百六十七・堀川院御時百首和歌・夏・照射)
『群書類従・第十一輯(訂正三版)』続群書類従完成会、1993年、152ページ

鹿たゝぬは山のすそにともしゝて幾夜かひなき夜をあかす覧
(巻第三百六十七・金葉和歌集(初度本)・夏)
『続群書類従・第十四輯上(訂正三版)』続群書類従完成会、1982年、53ページ

時鳥は山のすそを尋ねつゝまた里なれぬはつねをそきく
(巻第二百五十四・散木奇歌集・第二・夏・四月)
『群書類従・第十五輯(訂正三版)』続群書類従完成会、1987年、10ページ

よそにのみみ山か裾のさねかすらさねすて過んことそ苦しき
(巻第百六十九・久安六年御百首、実清、恋)
『群書類従・第十一輯(訂正三版)』続群書類従完成会、1993年、219ページ

山居のはじめの秋といふ事を
秋たつと人はつげねど知られけりみ山のすその風のけしきに
小倉の麓にすみ侍りけるに鹿の鳴きけるを聞きて
を鹿なく小ぐらの山のすそちかみたゞひとりすむわが心かな
(山家集~バージニア大学HPより)

時雨する外(と)山が裾(すそ)の薄(うす)紅葉今いくしほか染(そ)めんとすらん
(藤原実房/静空、秋、1855)
『和歌文学大系49 正治二年院初度百首』明治書院、2016年、320ページ

00441 匡房 つまこふる-しかのたちとを-たつぬれは-さやまかすそに-あきかせそふく
(新古今和歌集~日文研HPより)

02302 為家 みねつつく-とやまのすその-ははそはら-あきにはあへす-うすもみちせり
(新撰和歌六帖~日文研HPより)

次に東山のすそに望みて二階堂を禮す。
(海道記~バージニア大学HPより)


「玉松」用例

2019年07月03日 | 日本国語大辞典-た行

 「玉松」という単語の用例は日本国語大辞典第2版では、『長短抄』(1390年頃)からの例を早い用例として挙げていますが、さかのぼる用例が複数あります。

み吉野の玉松が枝は愛(は)しきかも君が御言(みこと)を持ちて通はく
『新訂 新訓万葉集 上巻』(岩波文庫)1927年、76ページ

よる浪のおよはぬうらの玉松のねにあらはれぬ色そつれなき
(内裏百番歌合、建保四年閏六月九日)~日文研HPより