日本国語大辞典の「月の兎」用例は、1638年の俳句の用例ですが、もっとさかのぼる用例が複数あります。
吹風に雲の毛衣はるゝ夜や月の莵も秋をしるらん
(巻第四百六・百詠和歌、第六、莵)
『続群書15上』昭和54年、169ページ
(寄獣恋)
しるらめやおよばずとても妻とみて月のうさぎのこふるならひは
(草根集・8233)
『新編国歌大観8』1990年、216ページ
日本国語大辞典の「月の兎」用例は、1638年の俳句の用例ですが、もっとさかのぼる用例が複数あります。
吹風に雲の毛衣はるゝ夜や月の莵も秋をしるらん
(巻第四百六・百詠和歌、第六、莵)
『続群書15上』昭和54年、169ページ
(寄獣恋)
しるらめやおよばずとても妻とみて月のうさぎのこふるならひは
(草根集・8233)
『新編国歌大観8』1990年、216ページ
「とりかじ(取舵・取梶・取楫)」用例で日本国語大辞典よりもさかのぼる用例を見付けました。語釈は、右または左へ回頭するという意味は含んでいないようなので、単純に「舵を操る」という意味ではないかと思います。
あしねはふ うき身の程を つれもなく (略) と渡る船の とりかちの とりもあへねは (略)
(巻第百六十九・久安六年御百首、散位清輔)
『群書類従 11』1993年、225ページ
「常は」という語には「日常・平生を、特定の日と区別して表わす。いつもは。つねひごろは。」という語釈があり、日本国語大辞典では『拾遺和歌集』(1005-07年頃か)の例が早い例として添えられていますが、古今和歌六帖など、さかのぼる用例があります。万葉集歌は訓みがいろいろあるのですが、「常は」と訓んでいるものを挙げます。
常(つね)はかつて思はぬものをこの月の過ぎ隠(かく)らまく惜しき宵かも(巻第七、1069)
『萬葉集 釋注四』伊藤博、集英社(集英社文庫ヘリテージシリーズ)、2005年、38ページ
1069[題詞]詠月
[原文]常者曽 不念物乎 此月之 過匿巻 惜夕香裳
[訓読]常はさね思はぬものをこの月の過ぎ隠らまく惜しき宵かも
[仮名],つねはさね,おもはぬものを,このつきの,すぎかくらまく,をしきよひかも
(万葉集~バージニア大学HPより)
つねはさも思はぬものを此月のすきかくれゆくをしきよひかも
○萬葉七1069 常(ツネ)ハカツテオモハヌモノヲ此月ノスギカクレマクヲシキヨヒカモ ○常者 者の字は訓へからずつねと訓べし曾はかつてと訓べし~~
『校證古今六帖 上』石塚龍麿稿、田林義信編、有精堂、1984年、89ページ
あだなりと常(つね)は知りにき桜花惜しむほどだにのどけからなむ
(五五・天徳四年三月卅日 内裏歌合、廿巻本・9)
『平安朝歌合大成 増補新訂 第一巻』萩谷朴、同朋舎出版、1995年、372ページ
日本国語大辞典の「谷陰(たにかげ)」用例よりもさかのぼる用例が複数あります。
みなかみを山にておつるたぎつせのしづくのたえずそゝくたにかげ
(古今和歌六帖)
『和歌文学大系46 古今和歌六帖・上』明治書院、2020年、202ページ
たにかけは-はるめきやらす-かせさえて-きゆれはこほる-ゆきのしたみつ
(御室五十首・00002・守覚~日文研HPより)
はるのひの-ひかりにもるる-たにかけの-いはまのゆきや-わかみなるらむ
(正治初度百首・01011・経家~日文研HPより)
たにかけに-あるもかひなき-うもれきの-しられぬなさへ-くちやはてなむ
(日吉社撰歌合_寛喜四年三月十四日・00089~日文研HPより)
「弛(たゆ)む」という語には「疲れる。だるくなる。」という語釈があり、太平記(14C後)の用例を早い例としてあげていますが、もっとさかのぼる用例があります。
かぜによりうてばころもをてもたゆみさむさにいそぐ秋のよなよな
(曾禰好忠集・240)
『和歌文学大系54 中古歌仙集一』明治書院、H16、43ページ