monoろぐ

古典和歌をメインにブログを書いてます。歌題ごとに和歌を四季に分類。

古典の季節表現 冬 十二月晦日 和布刈神事

2016年12月31日 | 日本古典文学-冬

ワキ三人次第「隼友の神祭。隼友の神祭。つきせぬ御代ぞめでたき。
ワキ詞「抑これは長門の国隼友の明神に仕へ申す神職の者なり。さても当社に於て御祭さまざま御座候ふ中にも。十二月晦日の御神事をば。和布刈の御神事と申し候。
(略)
天女出端、地「汀に神幸なり給へば。汀に神幸なり給へば。虚空に音楽。松風に和して。皎月照らし。異香薫ずる龍女は波もかざしの袖を。かへすも立ち舞ふ。袖かな。
天女舞。
後ツレ「さる程に。さる程に。地「和布刈の時到り。虎嘯くや風速鞆の。龍吟ずれば雲起り雨となり。潮も光り。鳴動して。沖より龍神現れたり。
早笛、上「龍神即ち現れて。龍神即ち現れて。シテ「和布刈の処の水底を穿ち。地「払ふや潮背に。こゆるぎの磯菜摘む。
シテ「めざし濡すな。沖に居れ波。地「沖に居れ波と夕汐を退け。屏風を立てたる如くに分れて。海底の砂は平々たり。
舞働。
ワキ「神主松明。振り立てゝ。地「神主松明振り立てゝ。御鎌を持つて岩間を伝ひ。伝ひ下つて半町ばかりの海底の和布を刈り。帰り給へば程なく跡に。潮さし満ちてもとの如く。荒海となつて波白妙の。わたづみ和田の原。天を浸し。雲の浪煙の波風海上に収まれば。波風海上に。収まれば蛇体は。龍宮に飛んでぞ。入りにける。
(謡曲「和布刈」~謡曲三百五十番集)

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古典の季節表現 冬 冬木

2016年12月29日 | 日本古典文学-冬

冬木
霜雪もふる山のへにのこる木の過きにし友に又やあひみん
ちりはてし枝に紅葉を猶見せて山の木の実や色残るらん
篠分けて入る山人や年さむき松も葉たれの霜あさの袖
(草根集~日文研HPより)

ふりつもるゆきにたわまぬまつかえのこころつよくもはるをまつかな
(秋篠月清集~日文研HPより)

冬木にはさえたる雲をたねとして風にさきちる花は雪かも
(建長八年九月十三日・百首歌合~日文研HPより)

くさもきもふりまかへたるゆきもよにはるまつうめのはなのかそする
(千五百番歌合~日文研HPより)

梅の花に雪のふれるをよめる 小野たかむらの朝臣
花の色は雪にましりてみえすともかをたに匂へ人の知へく
(古今和歌集~国文学研究資料館HPより)

歳暮梅
鴬の梅の花笠ふる雪にかくれてちかき春やまつらん
(草根集~日文研HPより)

つきよめはまたふゆなからさきにけるこのはなのみかはるのしるしは
(久安百首~日文研HPより)

もゝそのゝ斎院の屏風に よみ人しらす
梅のはな春よりさきにさきしかとみる人まれに雪のふりつゝ 
(拾遺和歌集~国文学研究資料館HPより)

題をさくりて歌つかうまつり侍し時、冬木と云事を 前大納言為兼
木の葉なきむなしき枝に年暮て又めくむへき春そ近つく 
(玉葉和歌集~国文学研究資料館HPより)

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古典の季節表現 冬 山の雪

2016年12月28日 | 日本古典文学-冬

光明峰寺入道前摂政左大臣家歌合に、暮山雪 源有家朝臣
夕されはをすての山の苔の上に槙の葉しのきつもる白雪 
(続後拾遺和歌集~国文学研究資料館HPより)

左大臣よませ侍ける新玉津島社卅首歌に、山雪を 藤原為之朝臣
かきくれてさたかにもなき山のはのはるゝとみれは積る雪哉 
(新続古今和歌集~国文学研究資料館HPより)

夕山や檜原が嵐音たえてをりをり高き雪折の声
(伏見院御集)

くれてゆくふゆのしをりはあとたえてやまちもふかきまつのゆきをれ
(千五百番歌合~日文研HPより)

家歌合に、暮山雪といへる心を 前関白
暮やすき日数も雪もひさにふるみむろの山の松のしたおれ 
(新勅撰和歌集~国文学研究資料館HPより)

宝治百首歌たてまつりける時、積雪の心を 従二位頼氏
真柴かる道や絶なん山かつのいやしきふれる夜はの白雪 
(続拾遺和歌集~国文学研究資料館HPより)

題しらす 藤原為顕
夜の程につもりにけらし昨日まてみさりし山の峰の白雪
(続千載和歌集~国文学研究資料館HPより)

題しらす 権中納言経平
したこほる深山の雪のけぬかうへに今いくへとかふりかさぬらん 
(玉葉和歌集~国文学研究資料館HPより)

百首歌中に、雪を 土御門院御製
吉野山今朝ふる雪や積るらん入にし人の跡たにもなし 
(新続古今和歌集~国文学研究資料館HPより)

関白左大臣家百首歌よみ侍ける、雪歌 兵部卿成実
はし鷹のとかへる山の雪のうちにそれともみえぬ嶺の椎柴 
(新勅撰和歌集~国文学研究資料館HPより)

(たいしらす) 入道前摂政左大臣
手向山もみちのぬさは散にけり雪の白ゆふかけぬ日そなき
(続後撰和歌集~国文学研究資料館HPより)

題しらす 正三位知家
神代より年のいくとせつもるらむ月日を過す天のかく山 
(続拾遺和歌集~国文学研究資料館HPより)

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「柴間」という単語

2016年12月27日 | 日本国語大辞典-さ行

 「柴間(しばま)」という単語は日本国語大辞典・第二版には立項していませんが、以下のように用例が複数あります。語釈としては、「柴の間。特に「伏柴(ふししば)」「ふしづけ」の隙間。」という意味です。
 俳句に用例があるかどうかは探していませんが、冬の季語ということになるかと思います。

泉川水のみわたのふしづけに柴間の氷る冬は来にけり
(冬十五首、初冬、887)
『和歌文学大系15 堀河院百首和歌』明治書院、2002年、164ページ

かたをかの-しはまにましる-しのすすき-しもかれてこそ-みるへかりけれ
(新撰和歌六帖・01931・家良)~日文研HPより

田家雨 頼氏
いねかての田つらの庵のしはまより夜の雨さへもりあかしつつ
(宝治百首・3732)~日文研HPより

冬深み六田のよどにふしつけししばまの水にをしぞなくなる
岩がねのしばまをわくる山河のうはなみこほる冬のあけぼの
(夫木和歌抄)
『校註国歌大系 21巻』国民図書、1930年、502ページ、511ページ

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古典の季節表現 冬 十二月 内侍所の御神楽

2016年12月13日 | 日本古典文学-冬

文治六年女御入内の屏風に、十二月内侍所御神楽所 皇太后宮大夫俊成
ことはりや天の岩戸もあけぬらん雲ゐの庭のあさくらのこゑ
(風雅和歌集~国文学研究資料館HPより)

十五日、内侍所御(み)神樂、雪宮中(みやのうち)におびたゞしく降りたるに、和琴に、冷泉侍從よりなり、本(もと)拍子、二條中將すけかた、末(すゑの)拍子、綾小路少將信有、篳篥、山本中將かね行、笛、伯新少將やすなか。月は更け行くまゝに冴えたるに、日數へて降り積みたる雪に、かつ降りそふ景色、池の中島、松の梢、木々の梢かゞやきたるも、庭火のかげに、束帶のきが上に降りかゝる雪は、うちはらふも折から殊にすみ、神さびたる景色かぎりなし。雪おびたゞしく、所作の人堪ゆべくもなければ、はしをとりて、中門の下にてあり。
(中務内侍日記~有朋堂文庫「平安朝日記集」)

となりに、庭火の笛音(おと)するにも、としどし内侍所の御神楽に、維盛の少将、泰通の中将などのおもしろかりし音(ね)どもまづ思ひいでらる。
きくからにいとゞ昔のこひしくて庭火の笛のねにぞなくなる
(建礼門院右京大夫集~岩波文庫)

後山本左大臣参議に侍ける比、内侍所御神楽の夜はしめて物申て、又いつかはと申けれは、此たひの御神楽に琴の音をしるへにとたのめけるに、まいりてかくとはしられすなから、物にかきて石の帯にむすひつけ侍ける 平親清女妹
かひなしや庭火の影にみし人のわすれぬ事のしるへはかりは 
(新続古今和歌集~国文学研究資料館HPより)

(建久元年十二月)五日。院に参ず。基宗・隆雅・顕兼朝臣等と談話。内侍所御神楽、此の両人所作(基、拍子。隆、和琴)。本拍子顕家・笛公頼・篳篥資能と云々。公佐拍子懇望すと雖も、許さずと云々。
九日。己丑。天晴る。束帯を著け、駄に乗りて参ず。内侍所御神楽なり。暫くありて、殿下・大将殿参ぜしめ給ふ。人長(ひとのをさ)遅参する間、深更に及ぶ。宰相中将為綱、直衣を著して参ぜらる。閑所に於て、暫く談話す。子の時に及びて事初めむ。女房等簾中に入る。親眤の公卿少々なり。忠季此の中にあり。出でおはします無きに依るなり。次で殿上人著座。頭中将・隆信朝臣・成定朝臣・顕兼朝臣・予・家綱・親長・能資等著座す。召し人、次第に著座す。顕家本、基宗末、隆雅琴、公頼笛、忠行篳篥、定忠無能。召し人、著座して了んぬ。隆信・成定・勧盃。人長、此の間に著座す。度々催さる。次で顕兼・予、勧盃。其の儀、恒の如し。末座の勧盃、座末を経。殿上召し人の後ろより著座し、之を徹す。履を脱がず尻を曳く。暫く座に還りて座し、程無く起ち了んぬ。閑所に睡眠するの間、早歌を聞く。又指し出でて、禄を取るの後、退出す。韓神勧盃、家綱・親長と云々。今夕、御神楽尋常の由。
(『訓読明月記』今川文雄訳、河出書房新社)

(承元元年十二月)十四日。天晴る。内侍所神楽と云々。国通・隆仲(拍子)、経通(笛)、篳(忠行)、和琴(隆雅卿子大夫昇殿)。
(『訓読明月記』今川文雄訳、河出書房新社)

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