「指折る」という語句の日本国語大辞典での用例は、浮世草子『好色三代男』(1686年)を挙げていますが、もっと遡る用例があります。
淀の渡りをし給ひしより、日数を指折らせ給ひければ、げにも十三夜にてありけり。
『中世王朝物語全集16 松陰中納言』笠間書院、2005年、34ページ
睦月たちしより、いかめしきことのみありつる。者(もの)をして、我が御齢(よはひ)を指折らせ給へるに(略)
『中世王朝物語全集16 松陰中納言』笠間書院、2005年、104ページ
「指折る」という語句の日本国語大辞典での用例は、浮世草子『好色三代男』(1686年)を挙げていますが、もっと遡る用例があります。
淀の渡りをし給ひしより、日数を指折らせ給ひければ、げにも十三夜にてありけり。
『中世王朝物語全集16 松陰中納言』笠間書院、2005年、34ページ
睦月たちしより、いかめしきことのみありつる。者(もの)をして、我が御齢(よはひ)を指折らせ給へるに(略)
『中世王朝物語全集16 松陰中納言』笠間書院、2005年、104ページ
「五月頃に咲く山梨の白色の花。」という意味の「山梨の花」という用語は、日本国語大辞典第2版では『散木奇歌集』(1128年頃)の和歌を早い例として挙げていますが、もっとさかのぼる用例があります。
山梨の花
15世の中を憂(う)しといひてもいづくにかみをばかくさむ山なしの花
(三六〔延長八年以前〕春 近江御息所周子歌合)
『平安朝歌合大成 増補新訂 第一巻』同朋舎出版、1995年、278ページ
かひかねに-さきにけらしな-あしひきの-やまなしをかの-やまなしのはな
(能因法師集(能因集)・42)~日文研HPより
遠友夜学校校歌の歌詞に「やしほ味よきうま酒か」という文章があり、過去ブログで「『やしほ』という語が、酒に使われる例を知らない」と書いたのですが、「やしほ+酒」は語形が少々違うのですが、古例があるようです。
最近、御伽草紙の本を読んでいたら、たまたま以下の文章を発見しました。
昔、出雲国簸川上と申所に、八岐大蛇(やまたのおろち)といふ大蛇ありしが、此大蛇、毎日生贄とて生きたる人を食ひける也。また、酒を飲む事おびたゝし。八塩折(やしほり)の酒を八の酒槽(さかぶね)に飲みしほどに、(略)
八塩折(やしほり)の注:幾度もくり返して醸(かも)したよい酒。やしおおり。中世「やしぼり」の訓も行われた。
(「伊吹童子」~『新日本古典文学大系54 室町物語集 上』岩波書店、1989年、189ページ)
そこで、日本国語大辞典・精選版でこの単語を引いてみたところ、前後に関連語が載っていたのです。「おり」「しほ」も調べました。
やしおおり(やしほをり)【八入折・八塩折】:幾回も繰り返し精製すること。やしおり。
やしおおりのさけ:何度も繰り返して醸成した酒。やしおりのさけ。古事記用例
やしおり(やしほり)【八入折・八塩折】:(「やしぼり」とも。「やしおおり(八入折)」の変化した語)=やしおおり(八入折)
やしおりのさけ:=やしおおり(八入折)の酒。古事記用例
おり(をり)【折】:🈪何回も繰り返すこと。「やしおおり(八塩折)」の形で、何回も酒をかもすこと、また、刀を何回も鍛えること。
しお(しほ)【入】:〔接尾〕色を染めたりする時に、染料を浸す度数を数えるのに用いる。古く、酒の醸造のとき、醸(か)む程度などにもいう。
ただ、「やしお(やしほ)」の語釈に「酒を何回も醸成すること」という語釈はありませんでした。やしほをりの酒=やしほりの酒=やしほの酒、ということになるので、「やしほ」の語釈にも追加されてよろしいと思います。
酒ではないが、たまたま以下の用例を見つけました。「喜びもひとしお」という用法は一般的ですが、こうなると、語釈が更に広がりそうです。
舘(定正をいふ)程なく還(かへ)らせ給はゞ、憂(うき)を轉(かへ)して御歓びは、八入(やしほ)ならん、と査(さつし)まつりぬ。
(「南総里見八犬伝 10」岩波文庫、131ページ12行目)
「痩せ痩せ」という副詞の用例は、日本国語大辞典・第二版では、『寛永刊本蒙求抄』(1529年頃)からの例が早いのですが、200年以上さかのぼる用例があります。
ありしにもあらずやせやせとして
(「しのびね」~『中世王朝物語全集10』笠間書院、1999年、66ページ)
「山の尾」という用語は「山の峰。山の稜線。」という意味で、日本国語大辞典では「頼基集」〔11C初か〕の和歌を早い例として挙げていますが、さかのぼる用例があります。
山のをのかづらはたえてなけれどもこゑはのこせりきく人のため
(4・古今和歌六帖、第五、こと、3387)
『新編国歌大観 第二巻 私撰集編 歌集』角川書店、1984年、239ページ
めのおよぶ山のをちかきゆふまぐれおりゐる雲ぞしるべなるらし
(66・為頼集、1)
『新編国歌大観 第三巻 私家集編1 歌集』角川書店、217ページ