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古典和歌をメインにブログを書いてます。歌題ごとに和歌を四季に分類。

忘れ貝・恋忘れ貝

2022年07月24日 | 日本古典文学-禽獣魚虫

我が背子に恋ふれば苦し暇あらば拾ひて行かむ恋忘貝
(わがせこに,こふればくるし,いとまあらば,ひりひてゆかむ,こひわすれがひ)
(万葉集~バージニア大学HPより)

暇あらば拾ひに行かむ住吉の岸に寄るといふ恋忘れ貝
(いとまあらば,ひりひにゆかむ,すみのえの,きしによるといふ,こひわすれがひ)
(万葉集~バージニア大学HPより)

海人娘子潜き採るといふ忘れ貝世にも忘れじ妹が姿は
(あまをとめ,かづきとるといふ,わすれがひ,よにもわすれじ,いもがすがたは)
(万葉集~バージニア大学HPより)

紀の国の飽等の浜の忘れ貝我れは忘れじ年は経ぬとも
(きのくにの,あくらのはまの,わすれがひ,われはわすれじ,としはへぬとも)
(万葉集~バージニア大学HPより)

 この泊の浜には、くさぐさのうるわしき貝、石など多かり。かかれば、ただ、昔の人をのみ恋ひつつ、船なる人のよめる、
  寄する波うちも寄せなむわが恋ふる人忘れ貝下りて拾はむ
といへれば、ある人の堪へずして、船の心やりによめる、
  忘れ貝拾ひしもせじ白玉を恋ふるをだにもかたみと思はむ
(土佐日記~新編日本古典文学全集)

おもひかね-こひわすれかひ-ひろへとも-そてぬれまさる-おきつしまもり
(六条修理大夫集~日文研HPより)

なぐさめにひろへば袖ぞぬれまさる伊良子が崎の恋忘れ貝
(三河守為忠名所歌合~「平安朝歌合大成3」)

(たいしらす) 源頼康
よそにたに/見ぬめの浦の/忘貝/かひなくひろふ/袖はぬれつゝ
(新後拾遺和歌集~国文学研究資料館HPより)

(たいしらす 読人不知)
ありそうみの/浦とたのめし/なこりなみ/うちよせてける/わすれかひ哉
(拾遺和歌集~国文学研究資料館HPより)

吹きよせよ清見浦風わすれ貝拾ふなごりの名にしおはめや
(海道記~バージニア大学HPより)

 不知身程恋  暁覚
つれもなき人になにそはわすれ貝うき世の浪にあらぬ此身を
(大永二年八月四日御会和歌~「続群書類従14下」)


潮貝(しほがひ)

2022年07月23日 | 日本古典文学-禽獣魚虫

ふるうたゝてまつりし時のもくろくのそのなかうた
つらゆき
ちはやふる/神のみよゝり/くれ竹の/世々にもたえす/(略)/いせのうみの/浦のしほかひ/ひろひあつめ/とれりとすれと/(略)
(古今和歌集~国文学研究資料館HPより)

いせのうみ-かすめるかたも-ひろふてふ-うらのしほかひ-てにもたまらす
(建保名所百首~日文研HPより)

述懐
和歌の浦にひろひもちても何かせん磯の塩貝玉もえぬ身に
(草根集~日文研HPより)

人伝恨恋
たのみつつ松はこぬみのはま風にからしとつけよよするしほ貝
(草根集~日文研HPより)


友船・共船・伴船(ともぶね)

2022年07月16日 | 日本古典文学-人事

みなとかは-ほのかにしらむ-かすみより-こゑのみいつる-あまのともふね
(建仁元年十首和歌~日文研HPより)

春霞飾磨の海をこめつればおぼつかなしや海人の友舟
(堀河院百首和歌~「和歌文学大系15」)

なにはかた-なみもかすみも-ひとつにて-そらにきえゆく-おきのともふね 
(延文百首_経教~日文研HPより)

建保名所百首歌に 前中納言定家 
もしほ火の/明石の沖の/友舟も/行かたゝとる/秋の夕きり 
(新続古今和歌集~国文学研究資料館HPより)

あかつきの-うらのともふね-こきわかれ-きりにやたとる-しかのあまひと 
(三十番歌合_頓阿判~日文研HPより)

さのみやは-まちわたるへき-ともふねの-やすらふほとに-いつるつきかな 
(為忠家後度百首_親隆~日文研HPより)

 渡月 寂能 
淀河のよとまぬ月の渡し守わたるせはやきあまの友舟
(宝治百首~日文研HPより)

 平高業
後れじと人も旅にや出でぬらん
波のよるゆく月の友舟
(菟玖波集~バージニア大学HPより)

みなと川苫(とま)に雪葺(ふ)く友舟はむやひつゝこそ夜(よ)をあかしけれ
(山家集~「西行全歌集」岩波文庫)

 舟中雪
あるる日の湊入りくる友舟はかす限なき雪のとまふき
(草根集~日文研HPより)

ふりまかふ-ゆきをへたてて-いてつれと-くもまにきゆる-あまのともふね
(拾遺愚草~日文研HPより)

平宗宣朝臣すゝめ侍ける住吉社卅首歌に、海路 前大納言為世 
今朝はみな/真帆にそかくる/追風の/吹一かたに/出るとも舟 
(続千載和歌集~~国文学研究資料館HPより)

うなはらやなきたる浪のうへとほみあまたこきゆくおきのとも舟
(三十番歌合_伝後伏見院筆~日文研HPより)

なみこしに-やへのしほちを-みわたせは-あまのともふね-かすそきえゆく 
(広田社歌合~日文研HPより)

あけぬれは-おきのともふね-さをさして-こころこころに-こきかへるなり
(二十番歌合_乾元二年~延慶元年~日文研HPより)

ともふねを-おのかいへちに-よひわひて-くれゆくいその-あまのもしほひ
(院当座歌合_正治二年十月一日~日文研HPより)

次の日のまた朝、蜑共船に乗つれ、遥はるかの沖に出て見れば、(略)
(源平盛衰記・北条上洛尋平孫附髑髏尼御前事~バージニア大学HPより)


割れ舟・破れ舟、片割舟(かたわれぶね)

2022年07月14日 | 日本古典文学-人事

つかさめしにもりてなけき侍ける比、女のもとにつかはしける 中納言基長
われ舟の/しつみぬる身の/かなしきは/渚によする/浪さへそなき
(後拾遺和歌集~国文学研究資料館HPより)

つきもせぬ-なみたのかはの-われふねの-あふせなきさに-くちやはてなむ
(夫木和歌抄~日文研HPより)

寄船恋 院御製
浦かくれ/入江にすつる/われ舟の/われそくたけて/人は恋しき
(玉葉和歌集~国文学研究資料館HPより)

堀川院御時、百首歌奉りける時、述懐の歌によみてたてまつりける 源俊頼朝臣
もかみ河/瀬ゝの岩かと/わきかへり/思ふこゝろは/おほかれと/(略)/なきさなる/かたはれ舟の/うつもれて/ひく人もなき/なけきすと/浪のたちゐに/あふけとも/(略)
(千載和歌集~国文学研究資料館HPより)

たのむxき-そのことのはも-なきさなる-かたわれふねの-われそこかるる
(文保百首_経継~日文研HPより)


捨て舟、捨て小舟(をぶね)

2022年07月13日 | 日本古典文学-人事

わたつうみの涙のあわとうく袖やよるべもしらぬ海人の捨舟
(内裏百番歌合_建保四年~「新編国歌大観5」)

よるへなき-ひとのこころの-あらいそに-おもひくたくる-あまのすてふね
(延文百首_尊胤~日文研HPより)

こひすてふ-わかみはあまの-すてふねよ-うきぬしつみぬ-ものおもふころ
(沙玉集~日文研HPより)

にこりえの-こひちにわれは-しつみつつ-こきすてられし-あまのすてふね
(安嘉門院四条五百首_阿仏~日文研HPより)

 寄舟恋
いつまてとたか捨舟の浅き江に朽ちぬうらみを猶残すらん
(草根集~日文研HPより)

あふことは-なきさによする-すてふねの-うらみなからに-くちやはてなむ
(延文百首_公清~日文研HPより)

ふるかはに-かたふきをれる-すてふねの-うかふかたなく-くちやはてなむ
(新撰和歌六帖_信実~日文研HPより)

宝治二年百首歌に、浦船 常盤井入道前太政大臣
さそはるゝ/波のゆきゝに/年もへぬ/あまのなかせる/浦の捨舟
(玉葉和歌集~国文学研究資料館HPより)

いかにせむ-かせしくなみの-しまかくれ-よにすてふねの-よるへなきみは
(文保百首_覚助~日文研HPより)

うきみよに-たちこそめくれ-すてふねの-ひくひともなしと-なにうらみけむ
(白河殿七百首~日文研HPより)

題しらす藤原頼景
夕塩の/さすにまかせて/湊江の/あしまにうかふ/あまのすて舟
(玉葉和歌集~国文学研究資料館HPより)

(たいしらす) 津守国夏
みこもりの/古江の浪に/朽はてゝ/しほたにさゝぬ/あまの捨舟
(新千載和歌集~国文学研究資料館HPより)

 月前舟
浦ち行く月をのせしは昔にてわれて洲にゐる浜の捨舟
(草根集~日文研HPより)

 救濟法師
ふりぬるやかたに秋もしられず
主もなき浦の捨舟月のせて
(菟玖波集~バージニア大学HPより)

今は心もみたれ髪のいふにもあまる恋草はつむともつきぬ七車の又めくりあふ事もやといたらぬくまもなくまとひありきてもとむれとひとりこかるゝすて舟のさほさしていつことをしゆるよすかもなけれはむなしく立かへりけるか
(鳥部山物語~バージニア大学HPより)

まほならぬ-あしまかくれの-すてをふね-こかれわふとも-ひとはしらしな
(沙玉集~日文研HPより)

うき世を物にたとふれば、岸の額(ひたひ)の根無草(ねなしぐさ)、入江の水に捨て小舟(をぶね)、波にひかれて行方(ゆくゑ)なく、(略)
(横笛草紙~岩波文庫「御伽草子・下」)

大納言殿泪を押へて宣けるは、「我身かく引人もなき捨小舟の如く、深罪に沈みぬるに付ても、たゞならぬ御事とやらん承りしかば、(略)
(太平記・十三「北山殿謀叛事」~WIKISOURCEより)