とにかくに身にもおぼえぬ年暮れて儺(な)やらふ夜にもなりにけるかな(後小松院御百首)
あらたまの春をむかふる年のうちに鬼こもれりとやらふ声かな(夫木抄)
九重の雲のうへよりやらふ儺(な)のほどにともなふふりつづみかな(久安百首)
とにかくに身にもおぼえぬ年暮れて儺(な)やらふ夜にもなりにけるかな(後小松院御百首)
あらたまの春をむかふる年のうちに鬼こもれりとやらふ声かな(夫木抄)
九重の雲のうへよりやらふ儺(な)のほどにともなふふりつづみかな(久安百首)
冬景色
さ霧消ゆる湊江(みなとえ)の
舟に白し朝の霜
ただ水鳥の声はして
いまだ覚めず岸の家
烏(からす)啼きて木に高く
人は畑(はた)に麦を踏む
げに小春日(こはるび)ののどけしや
かえり咲(ざき)の花も見ゆ
嵐吹きて雲は落ち
時雨降りて日は暮れぬ
若(も)し燈火(ともしび)の漏れ来ずば
それと分かじ野辺の里
かあさんの歌(作詞・作曲:窪田聡)
母さんが夜なべをして 手袋編んでくれた
こがらし吹いちゃ冷たかろうて せっせと編んだだよ
故郷(ふるさと)の便りは届く 囲炉裏の匂いがした
母さんは麻糸紡ぐ 一日紡ぐ
おとうは土間で藁打ち仕事 おまえも頑張れよ
故郷の冬は寂しい せめてラジオ聴かせたい
母さんのあかぎれ痛い なま味噌を擦り込む
根雪も融けりゃ もすぐ春だで 畑が待ってるよ
小川のせせらぎが聞こえる 懐かしさがしみとおる
冬の夜
燈火(ともしび)近く 衣(きぬ)縫う母は
春の遊びの楽しさ語る
居並ぶ子どもは指を折りつつ
日数(ひかず)かぞえて喜び勇む
囲炉裏火(いろりび)はとろとろ 外は吹雪
囲炉裏のはたで縄なう父は
過ぎしいくさの手柄を語る
居並ぶ子どもはねむさ忘れて
耳を傾けこぶしを握る
囲炉裏火はとろとろ 外は吹雪
うづみ火にすこし春あるここちして夜ふかき冬をなぐさむるかな(風雅和歌集)
消えのこる火桶の灰にかく文字の手すさびうすき夜半のともしび(草根集)
風さむみ暁ふかく寝覚めしてまたおきむかふ閨のうづみ火(新後拾遺和歌集)
いふこともなきうづみ火をおこすかな冬の寝覚めの友しなければ(堀河百首)
埋み火に炭さしそへてしづかなる寝屋のひかりに明くるをぞ待つ(草根集)
いかにせむ下にかくるる埋み火のおもひしらさむけぶりだになし(夫木抄)
うづみ火の下にこがるるかひなしや消ゆも消えずも人し知らねば(堀河百首)
いかにせむ灰のしたなる埋み火のうづもれてのみ消えぬべき身を(風雅和歌集)
埋み火をよそにみるこそあはれなれ消ゆればおなじ灰となる身を(玉葉和歌集)
(2009年12月30日の「炉火/埋火」の記事は削除しました。)