monoろぐ

古典和歌をメインにブログを書いてます。歌題ごとに和歌を四季に分類。

「烏羽の色にぞ」

2014年11月18日 | 日本古典文学-和歌

 いろいろな所で和歌などを収集しているのですが、たまたま見た「古筆手鑑大成③文彩帖」(角川書店、昭和59年)の70ページの翻刻和歌に、文字の誤りがあるのではないかと思う部分を発見しました。
 「立さはきとまりあらそふ鳥羽の色にそ杜もやかてくれ行」と翻刻されていますが、「鳥羽の」ではなく「烏羽(からすば)の」だと思います。「鳥」と「烏」の字形の違いをまだ、くずし字辞典等にあたっていないのですが、「からすばの」と読まなくては、字数も合わないし、歌意がとおらない。
 カラスの羽の色で夜の闇の色を表現するのは、和歌としては珍しい歌材。


定家自筆本の「拾遺愚草」が電子書籍で出版

2013年02月02日 | 日本古典文学-和歌

 サイト「やまとうた」の水垣久氏が、定家の自筆本の「拾遺愚草」を電子書籍で出版したとのこと。(Amazon・kindel版「新校拾遺愚草」
 定家自筆本を底本とする正篇に、名古屋大学本を底本とする続篇「拾遺愚草員外」を加え、さらに「堀河題百首」「藤川百首」を付録として付加したとのこと。仮名遣は底本のまま。
 EPUB版は後日 Google play 等で販売する予定とのことです。
 漢文の送り仮名付きならば、DL-MARKET(400円!)があるそうです。


和歌語彙

2012年11月23日 | 日本古典文学-和歌

 山元哲史の『「山吹」をめぐる和歌語彙の空間』という論文をたまたま見つけました。
 以前に読んだ城田俊の「ことばの縁」(リベルタ出版)をきっかけに、和歌語彙から縁語を集めたい、と思っていたので、おもしろく読みました。こういうふうに、数式を元にして視覚的な図で示すことができるのはいいですね。

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 「八重」と「山吹」の語のつながりについては、この論説のとおりだと思います。和歌に詠まれる「山吹」が八重か一重かなんて、そういえば、考えなかったけれど、「通常は八重山吹を詠んでいる」ようです。(「やまふき」×「ひとへ」で和歌検索してみると、反語?的に証歌といえるような和歌がたくさんヒットしました。)

 著者のおっしゃるように、辞書や歌言葉辞典の類にも、その旨を載せてほしいものです。

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 笠間書院の「古典対照語い表」の新データとこういう数式を掛け合わせて色々検索・考察できるでしょうか。散文における語の繋がり、というテーマでも色々調べてみたいかも。

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 ただ、「山吹」の語を元に抽出した語を図示した図4に、なぜ「色」の字が含まれていないのかな?と疑問に思いました。(「梔子」の語も「色」と繋がっていてよいはずと思います。)数式は門外漢でさっぱりわからないのですが、「花」と「色」も繋がっていてよいように思います。
 国文学研究資料館の二十一代集データベースで、「やまふき」×「いろ」で和歌検索した結果、八代集中歌は7首ありました。

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古今和歌集 春雨に/匂へる色も/あかなくに/かさへなつかし/山ふきの花
後撰和歌集 わかきたる/ひとへ衣は/山吹の/八重のいろにも/おとらさりけり
(拾遺和歌集 さは水に/かはつなくなり/やまふきの/うつろふ影や/そこにみゆらん *4うつろふいろや)
後拾遺和歌集 いはぬまを/つゝみし程に/くちなしの/色にやみえし/山ふきの花
千載和歌集 吉野川/岸のやまふき/咲ぬれは/底にそふかき/色はみえける
千載和歌集 口なしの/色にそすめる/やまふきの/はなの下行/井手の川水
新古今和歌集 やへなから/色もかはらぬ/山吹の/なと九重に/さかすなりにし 御返し 九重に/あらて八重さく/山吹の/いはぬ色をは/しる人もなし


甲南女子大で古今和歌集の写本が

2010年10月21日 | 日本古典文学-和歌

 甲南女子大で見つかった古今集の古い写本は、鎌倉時代初期1220~40年頃に書かれたものとのこと。仮名序・真名序を有する完本としては最古であるという。

 ちなみに、元永本古今和歌集は、1120年書写(奥書)と更に古いが、真名序を欠いている。書写年代でいえば、鎌倉初期の「雅経(まさつね)本」、藤原定家書写の「旧伊達家本」、「嘉禄二年本」なども古い時代のもので、今回発表された甲南女子大のものは、これらに続く書写年代の写本となる。

 この写本は、定家が若い頃写したものを別の人が写したものらしいが、この人の書写態度はどういうものであったのかとか、いろいろ興味がわきます。
 論文なども出るのでしょうが、早く影印が出版されないかしら?