暴風雨(あらし)の鋒鋩はうごめく胎児をはらんで、薔薇色する六本の指はぬめぬめと天(そら)にかがやき、水晶体の憂鬱は祈禱の杖(つゑ)を曳いて青白い小窓のほとりに偸安の花を咲きほこらせる。さざめく微笑、たふれる妄語、十月のむらさき色の乳房には候鳥の悲鳴を蔵して沈みゆき、疾駆する慾情の翅の筋を氷の蝋燭で燃やしつくす。
(『限定版 大手拓次全集 別巻』(白鳳社、1971年、447p)より「季節題詞」
暴風雨(あらし)の鋒鋩はうごめく胎児をはらんで、薔薇色する六本の指はぬめぬめと天(そら)にかがやき、水晶体の憂鬱は祈禱の杖(つゑ)を曳いて青白い小窓のほとりに偸安の花を咲きほこらせる。さざめく微笑、たふれる妄語、十月のむらさき色の乳房には候鳥の悲鳴を蔵して沈みゆき、疾駆する慾情の翅の筋を氷の蝋燭で燃やしつくす。
(『限定版 大手拓次全集 別巻』(白鳳社、1971年、447p)より「季節題詞」