monoろぐ

古典和歌をメインにブログを書いてます。歌題ごとに和歌を四季に分類。

「野面」用例

2021年02月03日 | 日本国語大辞典-な行

 「野面(のづら)」という単語の「野原の表面。野原。」という語釈の用例は、日本国語大辞典では1800年代ですが、もっとさかのぼる用例があります。

をしなへて野面ににほふ梅よりも宿のかきねを先はとはなん
(巻第百七十八・文治六年女御入内御屏風和歌、二月、梅)
『群書類従・第十一輯(訂正三版)』1993年、432ページ

旅衣けふは野づらに宿とひぬあすはいかなる山路くらさむ
(飛月集・216)
『新編国歌大観10』1992年、845ページ


「にほてる」用例

2017年10月14日 | 日本国語大辞典-な行

 「にほてる(におてる)」という動詞は日本国語大辞典では、語義未詳とされており、『月清集』(1204年頃)からの例を早い用例として挙げていますが、少々さかのぼる用例があります。また、この語は、和歌によく用いられるとのことですが、散文用例も見つけました。

辛崎やにほてる沖に雲消て月の氷に秋かせそふく
(巻第三百八十二・正治二年院御百首、藤原良経、秋)
『続群書14下』580ページ

今宵の月もおもしろきに、にほてる影も見がてら
(しら露・下)
『中世王朝物語全集10』笠間書院、1999年、240ページ


「名残の月」用例

2017年05月19日 | 日本国語大辞典-な行

 「名残(なごり)の月」という用語の「①夜明けの空に残っている月。有明けの月。」という語釈は、日本国語大辞典・第二版では、謡曲『雲林院』〔1426年頃〕からの例が添えられていますが、200年近くさかのぼる用例があります。

さみだれのなごりの月もほのぼのと里なれやらぬ郭公かな
(拾遺愚草、下、2209)
『新編国歌大観3 私家集編1 歌集』1985年、角川書店、817ページ


「ならぶかたなし」という用語

2016年05月29日 | 日本国語大辞典-な行

 「ならぶかたなし」という用語は、「比類ない。比べようのない。」という語釈になりますが、日本国語大辞典・第二版には立項していません。
 見つけた用例を古い順に並べて挙げます。

いけ水につがはぬをしのうきまくらならぶかたなき恋もするかな
(197・千五百番歌合、2424)
『新編国歌大観 第五巻 歌合編、歌学書・物語・日記等収録歌編 歌集』角川書店、1987年、490ページ

なかにまた-ひとをはふせし-かみかきや-ならふかたなき-まろねなりとも
(長明集(鴨長明集)・74)~日文研HPより

まことに大やけとなり給はずはこれよりまさること何事かあらむとにぎはゝしくはなやかさはならぶかたなし。
(増鏡)~国文学研究資料館HPより

中にも昭君は。ならぶ方なき美人にて。帝の覚えたりしなり。
(謡曲・昭君)~サイト「半魚文庫」より

相手は主人の弟で、殿上でも当時ならぶ方のない頼長である。さすがに情(すげ)なく突き放して逃げるわけにもいかないので、玉藻もよいほどにあしらっていると、頼長はいよいよ図に乗って、ほとんど手籠めにも仕兼ねまじいほどのみだらな振舞いに及んだ。
(岡本綺堂「玉藻の前」法性寺・一)~青空文庫より


「根差(ねざし)」用例

2015年12月20日 | 日本国語大辞典-な行

 「根差(ねざし)」という単語には「ねざすこと。地中に根をのばすこと。また、その根。」という語釈があり、日本国語大辞典・第二版では、『源氏物語』(1001-14年頃)の例が早いのですが、100年ほどさかのぼる用例があります。

為君(キミガタメ)根刺将求砥(ネザシモトムト)雪深杵(ユキフカキ)竹之園生緒(タケノソノフヲ)別迷鉋(ワケマドフカナ)
(新撰万葉集・巻之上・冬歌二十一首・191)
『新編国歌大観 第二巻 私撰集編 歌集』角川書店、1984年、182ページ