「月の鏡」という用語の「月をうつした池を鏡に見立てていう語。」という語釈は、日本国語大辞典・第2版では、『新後拾遺和歌集』(1383-84年)からの例を挙げていますが、もっとさかのぼる用例があります。
いく秋の月のかゝみと成ぬらんかけみる人のおほさはのいけ
(巻第百七十・正治二年第二度百首和歌、女房越前、つき)
『群書類従11』1993年、262ページ
「月の鏡」という用語の「月をうつした池を鏡に見立てていう語。」という語釈は、日本国語大辞典・第2版では、『新後拾遺和歌集』(1383-84年)からの例を挙げていますが、もっとさかのぼる用例があります。
いく秋の月のかゝみと成ぬらんかけみる人のおほさはのいけ
(巻第百七十・正治二年第二度百首和歌、女房越前、つき)
『群書類従11』1993年、262ページ
日本国語大辞典・第二版には「月のやどり」という語は立項されていませんが、「月の宿」よりも古例があるので、こちらをむしろ立項した方がよいのではないでしょうか。
語釈としては、「月の光が一時的にとどまること。月の光のとどまるところ。」という意味だと思います。
なにはえや-いりえのあしは-しもかれて-つきのやとりそ-くもらさりける
(俊成五社百首~日文研HPより)
露ならで月(つき)の宿(やど)りは誰か知るもの思ふ袖の涙なりけり
(巻第十五・雑歌二、3006)
『万代和歌集・下(和歌文学大系14)』安田徳子、明治書院、2000年、145ページ
秋はたたいく夜の露も袖におち月のやとりをいかにうつさて
(仙洞五十番歌合~日文研HPより)
苔ごろもつゆけき袖のとるかたは月のやどりとなるにぞ有りける
(39・延文百首、空静、秋二十首、月、2348)
『新編国歌大観 4』1986年、角川書店、579ページ
秋はたゝ袖こそつきのやとりなれ草木の露は風しほるなり
(42・後崇光院1・沙玉集、235)
『私家集大成 5巻(中世3)』和歌史研究会編、明治書院、1983年、466ページ
行舟を木の間の山路海晴て
月のやとりをとふ人もなし
山の端をなかむるかたの限にて
(巻第四百八十九・壁草、第八・雑連歌上)
『続群書類従・十七輯下(訂正三版)』1958年、996ページ
露ならで月のやどりもなかりけり蓮にうづむ庭の池水
(海人の刈藻)
水にすむ影は手にだにとられねど月のやどりは疑もなし
『礼厳法師歌集』与謝野礼厳(尚絅)著、与謝野寛校、明治書院、1910年、13ページ
「月の宿」という用語は日本国語大辞典・第2版では、『無言抄』(1598年)からの例を早い用例として挙げていますが、もっとさかのぼる用例が複数あります。
秋の田のつゆしくとこのいなむしろ月のやどとももるいほりかな
(続後撰和歌集、巻第六・秋中、362、後鳥羽院下野)
『新編国歌大観 1』1983年、角川書店、395ページ
夜もすがら露もよすがにむすばれて月のやどなるしののかり庵
(38・文保百首、藤原為実、秋二十首、2342)
『新編国歌大観 4』1986年、角川書店、528ページ
秋御歌中に 伏見院御製
露ふかきまた朝あけの草かくれ夜のまの虫の声そ残れる
(新拾遺和歌集~国文学研究資料館HPより)
秋歌とて 従三位親子
村々の雲の空には雁なきて草葉露なる秋の朝あけ
(玉葉和歌集~国文学研究資料館HPより)
うへのをのことも三首歌つかうまつりしとき、朝草花 権中納言実任
色ことに咲にほふらし朝露の玉しく庭の秋萩のはな
(続後拾遺和歌集~国文学研究資料館HPより)
おきてみる草葉のうへも露しろみややはたさむし秋の朝あけ
(正安元年~嘉元二年_歌合~日文研HPより)
貞和百首歌に 前大納言公泰
小倉山ふもとのおはな袖みえてたえたえ晴る秋の朝霧
(新続古今和歌集~国文学研究資料館HPより)
すみなるるわれたにさひしやまさとのきりたちこむるあきのあさあけ
(文保百首~日文研HPより)
秋うたとて 太上天皇 (後鳥羽院)
さひしさはみ山の秋の朝くもり霧にしほるゝまきの下露
(新古今和歌集~国文学研究資料館HPより)
九月十三夜、十首歌合に、朝草花 太上天皇 (後嵯峨院)
忘れすよ朝きよめする殿守の袖にうつりし秋はきの花
(続後撰和歌集~国文学研究資料館HPより)
関霧 為家
鳥のねはいそく習の関のとにあくるをみせぬ秋の朝霧
(宝治百首~日文研HPより)
なにはよりふきこすかせになひくめりたかつのうらのあきのあさきり
(八幡若宮撰歌合~日文研HPより)
あけわたるあはちのせとのなみまよりしまたちかくすあきのあさきり
(為家五社百首~日文研HPより)