*夏虫
*蜻蛉(とんぼ)
*秋草
ふけゆけば鹿にひと夜(よ)の宿かりて月をかたしく小野のくさぶし(夫木抄)
草まくら月もはかなくやどれとて露をむすぶにまかせてぞ見る(治承三十六人歌合)
月もまた露のやどりやたづ ぬらむかりねの草のおなじ枕に(三條相国御百首)
宵々(よひよひ)の旅寝の床(とこ)はかはれども同じ月こそ袖になれぬれ(続拾遺和歌集)
草枕この旅寝にぞ思ひ知る月よりほかの友なかりけり(金葉和歌集・初度本、二度本)
月みれば旅寝の床(とこ)も忘られて夢のみむすぶ草枕かな(新後撰和歌集)
草まくら旅寝の夢は覚めにけり野原の月のありあけの空(住吉社三十五番歌合)
はるかなる沖つ汐瀬(しほせ)の秋の月かげをうつして寄する浦波(嘉元百首)
夕潮のさすにはつれしかげながら干潟にのこる秋の夜の月(新後拾遺和歌集)
秋の海にうつれる月を立ちかへり波はあらへど色もかはらず(後撰和歌集)
玉ならば渚(なぎさ)にいかにつもらまし寄る波ごとにやどる月影(殿上蔵人歌合)
八百日(やほか)ゆく浜の真砂をしきかへて玉になしつる秋の夜の月(千載和歌集)
みかさ山みねより出(い)づる月影はさほの河瀬の氷なりけり(金葉和歌集)
いかだおろす清滝川にすむ月はさほにさはらぬ氷なりけり(千載和歌集)
月影は消えぬ氷と見えながらさざ浪よする志賀のからさき(千載和歌集)
思ふどちいざ見にゆかむ玉津島入り江の底にしづむ月かげ(源氏釈)
あすもこむ野路の玉川萩こえて色なる浪に月やどりけり(千載和歌集)
須磨の浦やあまとぶ雲のあと晴れて波より出(い)づる秋の月かげ(玉葉和歌集)
しほがまの浦ふく風に露はれて八十島(やそしま)かけて澄める月かげ(清輔集)
神代よりあまてる月もかげなれてのどかにぞ澄む住吉の浦(影供歌合)
沖つかぜ吹上の浜の白妙(しろたへ)に猶すみのぼる秋の夜の月(続後撰和歌集)
さびしさを何にたとへむ明石がた浦漕ぐ船のあとの月かげ(紫禁和歌集)