monoろぐ

古典和歌をメインにブログを書いてます。歌題ごとに和歌を四季に分類。

「童形」用例

2018年04月12日 | 日本国語大辞典-た行

 「童形(どうぎょう)」という単語は、日本国語大辞典によると、語釈が二つありますが、いずれも「吾妻鏡」にさかのぼる用例があります。

語釈① まだ結髪していない子ども。また、その姿。稚児姿(ちごすがた)。『平家物語』(13C前)用例

廿一日、癸巳、筥根ノ児童等、召に依りて去夜参著す、是来月三日鶴岡の舞楽勤仕の為なり、童形八人、増寿、筥熊、寿王、閉房、楠鶴、陀羅尼、弥勒、伊豆石丸等なり、(略)
(吾妻鏡巻第九、文治五年二月二十一日)
『吾妻鏡 二(岩波文庫)』龍肅訳注、岩波書店、1940年、177~178ページ

語釈② 貴人の元服前の称。『東寺百合文書‐を』弘安一〇年(1287年)一一月一八日「四辻宮入道善統親王譲状案」用例

十一日、甲子、未剋、南御堂柱立なり。武衛監臨し給ふ、此間、西海の飛脚參じ、平氏討滅の由を申す、廷尉一巻記を進ず、是去月廿四日、長門國赤間關海上に於て、八百四十餘艘の兵船を浮べ、平氏又五百餘艘を艚ぎ向けて合戰す、午尅、逆黨敗北す、
 (略)
 一生虜人々、
 前内大臣 平大納言〈時忠〉、右衛門督〈清宗〉、前内藏頭信基〈疵を被る〉、左中將〈時實、同上〉、兵部少輔尹明 内府子息六歳の童形〈字は副將〉、 (略)
(文治元年四月十一日)
『吾妻鏡 一(岩波文庫)』龍肅訳注、岩波書店、1939年、180~181ページ

十八日 庚寅 北条殿ノ三男〈十五歳、〉御所ニ於テ、首服ヲ加ヘラル。秉燭ノ程、西侍ニ於テ此ノ儀有リ。武州駿河ノ守広綱、遠江ノ守義定、参河ノ守範頼、江間殿、新田ノ蔵人義兼。千葉ノ介常胤、三浦ノ介義澄、同キ十郎義連、畠山ノ次郎重忠、和田ノ太郎義盛、岡崎ノ四郎義実、小山田ノ三郎重成、八田ノ右衛門ノ尉知家。足立右馬ノ允遠元、工藤庄司景光、梶原平三景時、土肥ノ次郎実平。宇佐美ノ三郎祐茂、著座ス。〈東上〉 二品出御シタマフ。先ヅ三献。江間殿、御酌ヲ取ラシメ給フ。千葉ノ小太郎成胤、相ヒ代ツテ之ヲ役ス。次ニ童形、召シニ依テ参進ゼラレ、御前ニ蹲踞シタマフ。次ニ三浦ノ十郎義連ニ、加冠タルベキノ由ヲ仰セラル。義連頻ニ敬屈ス。頗ル辞退ノ気有リ。重ネテ仰セニ曰ク、只今上首、多ク祗候スルノ間、辞退一旦然ルベシ。但シ先年、三浦ニ御出ノ時、故広常ト義実ト諍論ス。義連之ヲ宥ムルニ依テ、無為ナリ。其ノ心操尤モ感ジ思シ食サレキ。此ノ小童ハ、御台所殊ニ憐愍シ給フノ間、将来ニ至ルマデ、館方人タラシメンガ故ニ、計ラヒ仰セラルル所ナリ。此ノ上子細ニ及バザルナリ。小山ノ七郎朝光、八田ノ太郎朝重、脂燭ヲ取リ進ミ寄ル。梶原源太左衛門ノ尉景季、同キ平次兵衛ノ尉景高、雑具ヲ持参ス。義連加冠ニ候ズ。名字〈時連五郎ト云云〉。今夜加冠ノ役ノ事、兼日ニ定メラレザルノ間、思ヒ儲クルノ輩、多ク当座ニ候ズト雖モ、御計左右ニ能ハザル事カ。
(吾妻鏡【文治五年四月十八日】条~国文学研究資料館HPより)


古典の季節表現 夏 四月上卯日 稲荷祭

2018年04月10日 | 日本古典文学-夏

 稲荷祭見しに、傍らなる車の粽(ちまき)など取り入れて苦しきを、まろが車に取り入れしと、公信の少将、蔵人の少将言ひけると聞きしを、一日祭を見るとて車の前を過ぐる程に、木綿(ゆふ)かけて取り入れさせし
稲荷にも言はると聞きしなき事を今日は糺(ただす)の神にまかする
 返し
何事と知らぬ人には木綿襷(ゆふだすき)なにか糺(ただす)の神にかくらん
 と言ひたれば、幣(みてぐら)のやうに、紙をして書きてやる
神かけて君はあらがふ誰かさはよるべに溜(たま)るみづと言ひける
(和泉式部集~岩波文庫)

(建仁二年四月)十七日。天陰り、雨灑ぐ。稲荷の祭を見んがため、小児等桟敷に向はしむ。予、大臣殿に参じて退下す。今日、三位中将殿行始め。右中将御共に参ずと云々。
(『訓読明月記』今川文雄訳、河出書房新社)


「くんづほぐれつ」用例

2018年04月09日 | 日本国語大辞典-か行

 「組んづほぐれつ」という用語の用例は日本国語大辞典・第二版では、仮名垣魯文『西洋道中膝栗毛』(1870-76年)からの例を早い例として挙げていますが、100年以上さかのぼる用例があります。

ねこの子のくんづほぐれつ胡蝶哉
(炭俵、上巻、春之部発句、其角)
『芭蕉七部集』中村俊定校注、岩波書店(ワイド版岩波文庫)、1991年、257ページ


「たける(長・闌)」用例

2018年04月08日 | 日本国語大辞典-た行

 「たける(長・闌)」という単語には「季節が、その盛りを過ぎる。その季節が終わりに近づく。」という語釈があり、日本国語大辞典では、和漢朗詠集(1018年頃)の例を早い用例として挙げていますが、もっとさかのぼる用例があります。

杜鵑(とけん)の啼序(ていじょ)春将(まさ)に闌(た)けむとし、
(頭注:ほととぎすのなくべき時がやって来て、春は盛りを過ぎようとしている)
杜鵑啼序春将闌。
(文華秀麗集、23・敬和左神策大将軍春日閑院餞美州藤大守甲州藤判官之作一首、巨識人)
『日本古典文学大系69(懐風藻 文華秀麗集 本朝文粋)』小島憲之校注、岩波書店、1964年、215~216ページ

秋欲闌閨門寒
秋闌(た)けなんとして 閨門(けいもん)寒し
秋もふけようとして閨(ねや)の入口のあたりは寒い
(経国集、奉和擣衣引、惟氏)
『王朝漢詩選(岩波文庫)』小島憲之編、岩波書店、1987年、261ページ