とにかくに身にもおぼえぬ年暮れて儺(な)やらふ夜にもなりにけるかな(後小松院御百首)
あらたまの春をむかふる年のうちに鬼こもれりとやらふ声かな(夫木抄)
九重の雲のうへよりやらふ儺(な)のほどにともなふふりつづみかな(久安百首)
とにかくに身にもおぼえぬ年暮れて儺(な)やらふ夜にもなりにけるかな(後小松院御百首)
あらたまの春をむかふる年のうちに鬼こもれりとやらふ声かな(夫木抄)
九重の雲のうへよりやらふ儺(な)のほどにともなふふりつづみかな(久安百首)
うづみ火にすこし春あるここちして夜ふかき冬をなぐさむるかな(風雅和歌集)
消えのこる火桶の灰にかく文字の手すさびうすき夜半のともしび(草根集)
風さむみ暁ふかく寝覚めしてまたおきむかふ閨のうづみ火(新後拾遺和歌集)
いふこともなきうづみ火をおこすかな冬の寝覚めの友しなければ(堀河百首)
埋み火に炭さしそへてしづかなる寝屋のひかりに明くるをぞ待つ(草根集)
いかにせむ下にかくるる埋み火のおもひしらさむけぶりだになし(夫木抄)
うづみ火の下にこがるるかひなしや消ゆも消えずも人し知らねば(堀河百首)
いかにせむ灰のしたなる埋み火のうづもれてのみ消えぬべき身を(風雅和歌集)
埋み火をよそにみるこそあはれなれ消ゆればおなじ灰となる身を(玉葉和歌集)
(2009年12月30日の「炉火/埋火」の記事は削除しました。)
さびしさは冬こそまされ大原や焼く炭がまのけぶりのみして(堀河百首)
山ふかみたく炭がまのあさけぶり心ぼそくも見えわたるかな(夫木抄)
大原や小野のすみがま雪ふればたえぬけぶりぞしるべなりける(堀河百首)
かきくらす嶺のふぶきに炭がまの煙のすゑぞむすぼほれゆく(新続古今和歌集)
炭がまにかよふゆききのあとばかり雪にぞみゆる大原の山(新拾遺和歌集)
思ふことおほ原山の炭がまはいとどなげきのかずをこそ積め(新古今和歌集)
なげきつつ世にすみがまの我がこころしたに燃ゆともたれか知るべき
炭やきのこりつむ木々の煙よりたえぬや胸のおもひなるらむ(四吟百首)
(2009年12月30日の「炭竈(すみがま)」の記事は削除しました。)
はしたかの木居のした草枯れしよりかくれかねてや雉子(きぎす)鳴くらむ(新後拾遺和歌集)
萩原も霜枯れにけり御狩野(みかりの)はあさる雉子のかくれなきまで(続拾遺和歌集)
御狩(みかり)するかた山かげのおち草にかくれもあへず立つ雉子かな(風雅和歌集)
降る雪に鳥立(とだち)たづ ねて今日いくか交野(かたの)の御野(みの)を狩りくらすらむ(新拾遺和歌集)
やかた尾のましろの鷹を引きすゑてうだの鳥(と)だちを狩りくらしつる(千載和歌集)
はしたかの身よりのつばさ白たへに我が袖かけて雪は降りつつ(延文百首)
はしたかのしるしの鈴の近づ けばかくれかねてや雉子(きぎす)鳴くらむ(堀河百首)
鈴の音(ね)はよそにもしるしはし鷹の白斑(しらふ)に雪は降りまがへども(新千載和歌集)
み狩りする山路に鈴のこゑはして白斑の鷹は雪にまがひぬ(夫木抄)
み狩りする交野の御野(みの)に雪ふれば黒斑(くろふ)の鷹も白斑とぞ見る(東塔東谷歌合)
冬ふかき野べのみゆきの今日しもあれ白斑(しらふ)の鷹をすゑてけるかな(永久百首)
大原や野べのみゆきにところ得て空とるけふの真白斑(ましらふ)の鷹(六百番歌合)
嵯峨の原はしる雉子(きぎす)のかた跡も今日のみゆきに隠れなきかな(夫木抄)