名にしおへばたのまれぞする我が恋ふる人にあふちの花咲きにけり(好忠集)
たちかへり見てこそゆかめこの里に咲けるあふちの花の梢を(為村集)
夏草のしげみの花とかつ見えて野中の杜(もり)にちる樗(あふち)かな(草根集)
片岡のあふちの木ずゑ雨はれて露ふく風に花ぞ散りゆく(三十番歌合)
明日も来(こ)む木陰(こかげ)すずしき片岡に咲けるあふちの花散りぬとも(百首歌合)
名にしおへばたのまれぞする我が恋ふる人にあふちの花咲きにけり(好忠集)
たちかへり見てこそゆかめこの里に咲けるあふちの花の梢を(為村集)
夏草のしげみの花とかつ見えて野中の杜(もり)にちる樗(あふち)かな(草根集)
片岡のあふちの木ずゑ雨はれて露ふく風に花ぞ散りゆく(三十番歌合)
明日も来(こ)む木陰(こかげ)すずしき片岡に咲けるあふちの花散りぬとも(百首歌合)
宵(よひ)ごとに立ちも出(い)でなむ夕づつの月なき空のひかりと思はむ(古今和歌六帖)
そよ暮れぬ楢のひろ葉に風おちて星いづる空のうす雲のかげ(夫木抄)
庵さす山の端(は)ちかき夕づつのかげほのかなる小野のしのはら(夫木抄)
くらき夜の山松風はさわげども梢の空に星ぞのどけき(玉葉和歌集)
月をこそながめなれしか星の夜のふかきあはれを今宵知りぬる(玉葉和歌集)
明星(あかぼし)のかげ見えそむる山の端に月のなごりをしばし見るかな(正治二年後度百首)
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あふぎみる空なる星の数よりもひまなきものは心なりけり(続千載和歌集)
くもりなき星の光をあふぎてもあやまたぬ身を猶(なほ)ぞうたがふ(新勅撰和歌集)
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寄星恋
日暮るれば山の端(は)に出(い)づる夕づつの星とは見れど逢はぬころかな(古今和歌六帖)
我が恋は空なる星の数なれや人に知られて年の経(へ)ぬれば(古今和歌六帖)
来ぬ人を待つはむなしくあかぼしの影は夜ごとに閨をとへども(草根集)
あかつきの空とはいはじ夏の夜はまだ宵(よひ)ながらありあけの月(続古今和歌集)
やがてまた有明の空になりにけり出(い)でてほどなきみじか夜の月(延文百首)
ほどもなく山の端(は)しらむ夏の夜にさながら残るありあけの月(延文百首)
あけやすき空に残りて夏の夜は入(い)ること知らぬ月のかげかな(新千載和歌集)
夏山の嶺とびこゆるかささぎのつばさにかかる有明の月(新拾遺和歌集)
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来たりとも寝(ぬ)るまもあらじ夏の夜の有明の月もかたぶきにけり(詞花和歌集)
待つ宵はまだ更(ふ)けなくにありあけの光ぞいづる夏の月かげ(四十番歌合)
恋ひわびぬ海人(あま)の刈る藻にやどるてふわれから身をもくだきつるかな(伊勢物語)
われからと身をこそくだけ心なき海人の刈る藻に乱れ侘びつつ(草根集)
伊勢志摩や海人の刈る藻の人知れずわれからつらき恋もするかな(白河殿七百首)
海人の刈る藻にすむ虫のわれからとねをこそなかめ世をばうらみじ(古今和歌集)
海人の刈る藻にいほりして住む虫の名は知りながらなほうらみつつ(夫木抄)
君はなほうらみられけり海人の刈る藻に住む虫の名をわすれつつ(古今和歌六帖)
風わたる波にまかせて川の瀬になびく玉藻のした乱れつつ(白河殿七百首)
川の瀬に生(お)ふる玉藻のうちなびき君にこころは寄りにしものを(久安百首)
川の瀬になびく玉藻のみがくれて人に知られぬ恋もするかな(古今和歌集)
巻向(まきむく)の穴師(あなし)の河の川風になびく玉藻の乱れてぞ思ふ(新勅撰和歌集)
乱るとも人知らめやもかげろふの岩垣淵(いはがきふち)の底の玉藻は(続古今和歌集)
知られじな古き入り江のみこもりになびく玉藻のしたの乱れは(続後拾遺和歌集)
ありしより乱れまさりて海人(あま)の刈るものおもふ身を君は知らじな(新勅撰和歌集)
思ひ河いつまで人になびき藻のしたに乱れて逢ふ瀬待つらむ(新後撰和歌集)
沖へにも寄らぬ玉藻の浪のうへに乱れてのみや恋ひわたりなむ(古今和歌集)
うきしづみ我ぞこがるる藻刈舟(もかりぶね)人はこころも寄せぬ水際(みぎは)に(新千載和歌集)
わが恋は海人の刈る藻に乱れつつかわく時なき波のした草(千載和歌集)
玉藻刈る野島の浦の海人だにもいとかく袖はぬるるものかは(千載和歌集)