「高学歴ワーキングプア―――「フリーター生産工場」としての大学院」
というタイトルを見るだけで、おおよその(特に文系)大学院生には
内容がわかってしまうだろう。
急激に大学院生が増え、その先にあるべき教員市場は拡大しなかった。
その市場も、東大を始めとしたエリート校が上から順に
埋まっていくものであったため、
それ以外の大学院卒の学生が教員席を得られる機会は激減した。
(東大の大学院は、定員数が多いし、確か公共政策大学院なんかも近年できた)
これは、学生減少が必至となってきた大学(ここでは東大法学部、となっている)が、
収入の確保と教員の配置先創出のために、文科省を用いて
大学院生をむやみに「世界水準へ」と近づけようとしたことの結果なのだ・・・
さほど目新しい事実があったわけではなかった。
本書は上に書いたような
「高学歴ワーキングプアが生まれる構造がどのように出来たか」ということよりむしろ、
高学歴ワーキングプアがどれほど悲惨か、
どのような仕組みの中でもがいているのか、というところが
主要部分となっている。
高学歴ワーキングプア、とは、具体的には「文系博士課程学生、博士課程単位取得卒業の人、
博士号を取得した人」である。
「いまや、競争が激しくなっているから、博士号をとらなくてはマーケットバリューはない。
だからがんばって取得するべく在学期間を延ばす。
5年とか6年とかで必死に取っても、それでも職はない。
かつて、博士号が要求されなかった時代に易々と職を経た教授、助教授たちに
”ぱっとしない”などと批評され、博士号もないような研究雑誌レフリーたちに
投稿論文をリジェクトされ・・・納得がいかないが、食べてはいけないので塾講師」
そんな話が満載である。
なぜ、この国は教育制度と労働市場がこうも乖離しているのか。
お互い無視しあって、違う方向を向いて動いているように見える。
労働市場は、ほぼ完全に市場任せ、企業任せの新卒一括採用主義。
だから転職市場も成熟せず、キャリアは分断されやすくなっている。
一方教育制度は、どう見ても規制市場だ。
設置基準、教員制度、研究補助金の配分・・・
教育は、アウトプットが見えにくいし、外部性があるからもちろん規制は必要だと思う。
が、労働市場を無視した政策なんて、普通考えるだろうか?
最近、経産省の消費者行政と、厚生省の衛生管理部門などを合わせて
消費者行政省、みたいな組織を作ろうとする動きが盛んだが
http://www.kantei.go.jp/jp/hukudaphoto/2008/02/12shouhisha.html
労働と教育の統一的制度づくり、運営も、緊急な課題ではないだろうか。
著者について少し触れると、面白い経歴をお持ちである。
これを読んだだけで、ちょっとこの本読んでみようかという気になってしまうよね。
著者について(アマゾンより)
水月昭道(みづきしょうどう)
1967年福岡県生まれ。龍谷大学中退後、バイク便ライダーとなる。仕事で各地を転々とするなか、建築に興味がわく。97年、長崎総合科学大学工学部建築学科卒業。2004年、九州大学大学院博士課程修了。人間環境学博士。専門は、環境心理学・環境行動論。子どもの発達を支える地域・社会環境のデザインが中心テーマ。2006年、得度(浄土真宗本願寺派)。著書に『子どもの道くさ』(東道堂)、『子どもたちの「居場所」と対人的世界の現在』(共著、九州大学出版会)など。現在、立命館大学衣笠総合研究機構研究員および、同志社大学非常勤講師。任期が切れる2008年春以降の身分は未定。
というタイトルを見るだけで、おおよその(特に文系)大学院生には
内容がわかってしまうだろう。
急激に大学院生が増え、その先にあるべき教員市場は拡大しなかった。
その市場も、東大を始めとしたエリート校が上から順に
埋まっていくものであったため、
それ以外の大学院卒の学生が教員席を得られる機会は激減した。
(東大の大学院は、定員数が多いし、確か公共政策大学院なんかも近年できた)
これは、学生減少が必至となってきた大学(ここでは東大法学部、となっている)が、
収入の確保と教員の配置先創出のために、文科省を用いて
大学院生をむやみに「世界水準へ」と近づけようとしたことの結果なのだ・・・
さほど目新しい事実があったわけではなかった。
本書は上に書いたような
「高学歴ワーキングプアが生まれる構造がどのように出来たか」ということよりむしろ、
高学歴ワーキングプアがどれほど悲惨か、
どのような仕組みの中でもがいているのか、というところが
主要部分となっている。
高学歴ワーキングプア、とは、具体的には「文系博士課程学生、博士課程単位取得卒業の人、
博士号を取得した人」である。
「いまや、競争が激しくなっているから、博士号をとらなくてはマーケットバリューはない。
だからがんばって取得するべく在学期間を延ばす。
5年とか6年とかで必死に取っても、それでも職はない。
かつて、博士号が要求されなかった時代に易々と職を経た教授、助教授たちに
”ぱっとしない”などと批評され、博士号もないような研究雑誌レフリーたちに
投稿論文をリジェクトされ・・・納得がいかないが、食べてはいけないので塾講師」
そんな話が満載である。
なぜ、この国は教育制度と労働市場がこうも乖離しているのか。
お互い無視しあって、違う方向を向いて動いているように見える。
労働市場は、ほぼ完全に市場任せ、企業任せの新卒一括採用主義。
だから転職市場も成熟せず、キャリアは分断されやすくなっている。
一方教育制度は、どう見ても規制市場だ。
設置基準、教員制度、研究補助金の配分・・・
教育は、アウトプットが見えにくいし、外部性があるからもちろん規制は必要だと思う。
が、労働市場を無視した政策なんて、普通考えるだろうか?
最近、経産省の消費者行政と、厚生省の衛生管理部門などを合わせて
消費者行政省、みたいな組織を作ろうとする動きが盛んだが
http://www.kantei.go.jp/jp/hukudaphoto/2008/02/12shouhisha.html
労働と教育の統一的制度づくり、運営も、緊急な課題ではないだろうか。
著者について少し触れると、面白い経歴をお持ちである。
これを読んだだけで、ちょっとこの本読んでみようかという気になってしまうよね。
著者について(アマゾンより)
水月昭道(みづきしょうどう)
1967年福岡県生まれ。龍谷大学中退後、バイク便ライダーとなる。仕事で各地を転々とするなか、建築に興味がわく。97年、長崎総合科学大学工学部建築学科卒業。2004年、九州大学大学院博士課程修了。人間環境学博士。専門は、環境心理学・環境行動論。子どもの発達を支える地域・社会環境のデザインが中心テーマ。2006年、得度(浄土真宗本願寺派)。著書に『子どもの道くさ』(東道堂)、『子どもたちの「居場所」と対人的世界の現在』(共著、九州大学出版会)など。現在、立命館大学衣笠総合研究機構研究員および、同志社大学非常勤講師。任期が切れる2008年春以降の身分は未定。