亀井幸一郎の「金がわかれば世界が見える」

マクロな要因が影響を及ぼす金(ゴールド)と金融の世界を毎日ウォッチする男が日常から市場動向まで思うところを書き綴ります。

カネの逆流、リスク・オフもデフレ的

2012年06月11日 19時08分49秒 | 金市場
ユーロ圏の財政危機に連動する金融危機に関連しては、金市場では欧州系銀行による資金回収のあおりを受けた記録的なインドルピー安から過去最高値に上昇したルピー建て金価格がある。インド政府の輸入規制を目的とした関税引き上げもあり、インドの需要(1-3月期)は前年比で3割落ち込むことに。実需の後退として金市場では悪材料視されている。

足元でスペインが国内金融救済のための金融支援をユーロ圏に求め、ユーロ圏諸国はそれに応え最大1000億ユーロまでの枠を設けることになった。電話での財務相会合で決めたのは、マーケットのスピードを考えてのことで、それだけマーケットの緊張状態を恐れたことを意味する。個別破綻行に対応する際のいわゆる「金月処理」に準じたスケジュールもそういうこと。週明けの市場は、朝からユーロは買われ、取引を開始したユーロ圏の株式市場も上昇で反応している。「上昇」を「好感して」と解釈するなら、確かにこの決定を好感したわけだが、起きているのは「リスク・オフ」の巻き戻しの上昇と見られるので、賞味期限は短いのではないか。要はショートカバーというわけ。

そもそも先週も書いたが、マーケットとの「心理戦」ゆえにいかに安心させるかも重要要素と思うが、それは支援必要額をIMFは400億ユーロと見積もったところをマックス1000億ユーロと発表したことで配慮が感じられるものだった。ただし、国内の金融問題と同国の財政問題を切り離すことができれば、時間稼ぎもさらに意味のあるものとなったと思われるが、資本注入に関しスペイン政府を噛ましたことで、そのまま支援金が同国政府の負債にカウントすることになった。これでは財政的な救済ではないから、緊縮策の強要などないと言われても、結局、財政問題に行きつく時間が早まるのではなかろうか。まぁ、環境次第だが。

さて書こうと思ったのは、世界の銀行の中で欧州の銀行の対外与信残高つまり対外融資額がずば抜けて大きいこと。世界の対外与信全体で2011年は30兆㌦とのことで、欧州が18兆㌦を占め、日、米のそれぞれ3兆㌦を大きく引き離していること。欧州銀の“貸しはがし”は指摘されて久しいが、この規模からしてその威力はインドルピーの下げを見てもわかろうということ。カネの流れとしては、デフレ的な回転に入っているわけで、金融当局もインフレは考慮しなくてよくなっているわけだ。そもそも外のカネで国家財政を回している米国債の金利が1.5%を下回るというのも、特殊環境とはいえ極めてデフレ的といえる。こうした環境をバーナンキは「良し」としないのではないか。判断の決定材料は、7月に発表される6月の雇用統計かな。

インドはジャンクに格下げされそうな雲行だ。

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1 コメント

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長い? (ナニユエ)
2012-06-12 23:50:08
色々な データやstoryが次々と出てきて私のつたない頭では処理不能です。 gold longでほぼ目いっぱいの状況ですが 長くなって塩漬けなどにはならないことを祈るような気持ちです。 それより気になるのがうそをついて正義漢のようなことを言っても通る いまの時代、、教育に悪いですねー。サーモグラフィーで嘘発見器できませんかねー。国会中継に使えれば少しはよい時代になるよーな。
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