12月19日のNY金は続伸で2052.10ドルで取引を終了した。前日比では11.60ドル高となった。NY時間外のアジアからロンドンさらにNYの早朝と、2040ドルを挟んだ狭いレンジ相場に始終し目立った動きは見られなかった。しかし、NY時間にやや買い優勢に転じ、午前の中頃に上昇ピッチを速めた。節目の2050ドルを上抜くとそのまま2060ドルに接近。いったんは押し戻されたものの、反転しそのまま一時2061.00ドルを付け、これが高値に。その後は売りが優勢となったものの、切り上げた水準を維持し2050ドル台は維持して終了とということに。
先週のFOMC後も利下げへの環境が整いつつあるとの発言は続いている。
12月18日にはサンフランシスコ連銀のデイリー総裁が、ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)とのインタビューで、インフレが改善していることから、2024年の利下げを検討し始めるのは適切との認識を示した。しかも、政策金利は「(FOMCの経済予測で示された)来年3回の利下げを実施したとしても、かなり制限的な水準にとどまるだろう」とまで言い切った。
11月28日に以前からタカ派で知られていたウォラー理事が講演で指摘した論点と同じで、インフレ鈍化の継続で実質金利が上がるため、景気抑制的になり、効きすぎる恐れがある。したがって、金利据え置きでなく利下げが必要になるというもの。デイリー総裁は以前からFRB執行部中枢の代弁者ともいえる位置づけの発言で知られるが、24年はFOMC投票権を有している。
さらに19日にはリッチモンド連銀のバーキン総裁も、「インフレに関して最近の進展が続けば、われわれは当然、適切に対応するだろう」と利下げを示唆。もちろん向こう数カ月間にインフレに関するデータの「一貫性と広がり」を見たいと鈍化確認を前提としている。同総裁も24年FOMCの投票権を有している。
一方、早期の利下げ転換をはやす形でこのところ米国株式の上昇が続いているが、19日もダウ30種平均は9営業日続伸し連日で過去最高値を更新。多くの機関投資家が運用指標とするS&P500種株価指数も続伸し、22年1月に記録した最高値に接近中となっている。
FRB高官の中には、早期の緩和転換による景気が着地しないノーランディングと呼ばれる状況を懸念する見方もあり、それが早期利下げに対するけん制発言となっている。ソフトランディングならぬノーランディグとなれば景気過熱とインフレ継続で引き締め政策の再開を余儀なくされ、一段と深刻なリセッションを招きかねないことによる。最悪は金融危機(クラッシュ)の可能性も出てくる。
足元で過熱気味の株高が続いており、その可能性も捨てきれない。「早期の利下げ観測は時期尚早」(15日NY連銀ウィリアムズ総裁=FOMC副議長)などけん制発言も見られるが、これらはソフトランディングに向けバランスを取ろうとしているのだろう。こうした懸念もゴールドへの関心をつなぎ止めている。
パウエル議長の急ともいえる方針転換には、来年が大統領選という政治的要因が透けて見えるというのはうがちすぎか。