週明け2月24日のNY金は反発した。トランプ政権の打ち出す政策に対するリスク回避の資金の矛先が、引き続き金市場に向けられている。
先週末21日は、金ETF(上場投信)の最大銘柄「SPDR(スパイダー)ゴールドシェア」の残高が1日で20.66トンも増加し市場を驚かせた。NY市場が連休明けとなった18日以降連日増加が見られていたが、結局先週は41.32トンもの大幅増加となった。
この銘柄は欧米投資マネーの流出入の指標として捉えられるもので、金ETFに関しほとんど音なしの構えといえた米系投資マネーが本格的に金市場に流入し始めた可能性を示唆している。
こうした動きに先週もNY金は20日まで最高値を更新していたが、21日は利益確定売りに小反落状態で2.90ドル安の2953.20ドルで終了していた。それでも週足は前週末比52.50ドル、1.8%高の8週連騰となった。
週明け2月24日は、NYの午前に一時2974.00ドルまで買われ、その後益出し売りに反落したものの終盤に買い戻され反発で終了した。終値は2963.20ドルで、終値ベース、取引時間中ともに最高値を更新した。
ちなみに「SPDR(スパイダー)ゴールドシェア」の残高は、24日も3.15トン増加している。
年初からの先週末(2月21日)まで値幅で312.20ドル、率にして11.8%高のNY金。上昇の背景に、トランプ米政権が掲げる関税など政策全般の米経済のみならず世界経済への影響や各国との外交的軋轢(貿易戦争)の高まりなど不透明性がある。
市場の先行き不透明性への警戒は、1月20日の2次政権正式発足後にさらに高まった。断続的に公表される政策が、関税であれば相手国の反応により内容が今後も変わりうる点で市場も対応を固められず、方針を決められない状態が続いている。
そうした中で、先週トランプ政権の政策に対する金市場の反応に変化が現れた。
ウクライナ戦争の停戦協議に当たりトランプ大統領がロシア寄りの対応を明らかにしたことによる。
侵略者としてのロシアへの批判は封印し、ビジネスパートナーとしてロシアを捉え、「ウクライナ戦争」を「ロシアとウクライナ間の紛争」との位置付けに変更し停戦協議を進めようとしている。 報じられているように、その話し合いも当事国たるウクライナ抜きで進められている。米欧の軍事同盟である北大西洋条約機構(NATO)へのウクライナの非加盟や領土面でのウクライナ側の譲歩をロシア側に打診し、その方向で事態は進行している。
意味するのは従来の米国を頂点とする国際秩序の崩壊であり、いまやトランプ政権の外交方針が最大の地政学リスクという受け止め方に変わっている。NY金が2900ドルを超えて未踏の領域をひた走るのは、すでに世界貿易の阻害要因たる関税賦課の悪影響やインフレの再燃にリスクがとどまらないことを表している。
世界政治の構造変化という大きな流れの中で、無国籍通貨であり政治的にも無色の安全資産としてのゴールドの保有が広がっていることがある。
米系投資マネーもゴールド現物保有に動き始めている。