1週間ぶりの更新、ご無沙汰です。実家の方の用向きで更新ができずにいました。ただ書けなかっただけでNYのレート・チェックはしていたので問題ないです。
23日にここで「合理的判断が利くとは限らない政治の世界」と題して書いた。以下は、28日に時事通信社「アナリストの目」向けに書いた原稿の抜粋。
「交渉継続とはいうものの米中間の溝は深く、6月1日の中国による追加関税の発動は実行されそうだ。
両大国間で報復合戦が一段と激化すれば世界経済への打撃は免れそうにない。中国の減速がドイツ経済の低迷につながっていることに明らかなように、世界経済の成長鈍化は、やがて米国景気にも悪影響を及ぼすとみられる。関税報復合戦という事態は、双方にとってダメージとなることから回避されるというのが株式市場を中心とする楽観論の背景となってきた。合理的判断という点で、それは正しい。しかし、政治の世界は必ずしも合理的判断がされないのも事実で、様々な思惑に基づく政治的判断は合理性を欠く結果を招き混乱につながってきたのは歴史の教えるところだろう。この点は英国の欧州連合(EU)離脱問題も同じで、英国とEUの双方にとって悪材料以外の何物でもない、ゆえに合意なき離脱は回避されるとの判断は、その正否が早晩試されることになる。
思うに経済体力に勝る米国は、一定のコストを覚悟のうえで中国潰しにかかっている。ただし、第4弾の制裁関税の対象品目には、スマートフォンや消費材が多く含まれ米国の消費者の負担感も増すだろう。結果として、どこまで米国の輸入物価を押し上げるかも関心事になる。
足元で米国景気の減速を示す指標が見られていることも株式中心に市場心理をざわつかせる。
5月24日に発表された米4月の耐久財受注統計で注目されたのは、民間設備投資の先行指標とされる指標の落ち込みだった。(非国防資本財から航空機を除いた)コア資本財の受注が前月比0.9%減と、市場予想の0.3%減を大きく下回る落ち込みとなった。前日に発表され株価下落の材料となったマークイット発表の5月の製造業PMI(購買担当者景気指数)速報値が50.6と2009年9月以来の低水準となっていたこともあり、米国経済の先行きに対する懸念が増すことになった。今回の耐久財受注の数字は、5月に入って以降急速に悪化した米中関係を反映していないことから、トレンドとしての減速を思わせることになった。」
先週来、金価格を押し上げているのは、マーケットが米国の利下げを前のめりに織り込みにかかっていることがある。トランプ大統領が不法移民対策を講じなければメキシコからの輸入品に関税を課すと表明したことを嫌気したのは当たり前で、メキシコとの貿易の多くに追加関税を課すとメキシコへのダメージというより米国を含む進出企業へのダメージであり、「マクロの問題でなく、経済の動きをほとんど理解していない大統領の気まぐれにすぎない」との指摘がある。もとより自身の大統領選を念頭に置いてのことゆえ、当然の帰結。「米国第一主義」の本質は、「トランプ第一主義」であってマイナス面ばかりではないけれど、国益を蝕みながら進んでいるのは間違いなかろう。それでも下げない米国株式。利下げ期待が株価を支える構図。
23日にここで「合理的判断が利くとは限らない政治の世界」と題して書いた。以下は、28日に時事通信社「アナリストの目」向けに書いた原稿の抜粋。
「交渉継続とはいうものの米中間の溝は深く、6月1日の中国による追加関税の発動は実行されそうだ。
両大国間で報復合戦が一段と激化すれば世界経済への打撃は免れそうにない。中国の減速がドイツ経済の低迷につながっていることに明らかなように、世界経済の成長鈍化は、やがて米国景気にも悪影響を及ぼすとみられる。関税報復合戦という事態は、双方にとってダメージとなることから回避されるというのが株式市場を中心とする楽観論の背景となってきた。合理的判断という点で、それは正しい。しかし、政治の世界は必ずしも合理的判断がされないのも事実で、様々な思惑に基づく政治的判断は合理性を欠く結果を招き混乱につながってきたのは歴史の教えるところだろう。この点は英国の欧州連合(EU)離脱問題も同じで、英国とEUの双方にとって悪材料以外の何物でもない、ゆえに合意なき離脱は回避されるとの判断は、その正否が早晩試されることになる。
思うに経済体力に勝る米国は、一定のコストを覚悟のうえで中国潰しにかかっている。ただし、第4弾の制裁関税の対象品目には、スマートフォンや消費材が多く含まれ米国の消費者の負担感も増すだろう。結果として、どこまで米国の輸入物価を押し上げるかも関心事になる。
足元で米国景気の減速を示す指標が見られていることも株式中心に市場心理をざわつかせる。
5月24日に発表された米4月の耐久財受注統計で注目されたのは、民間設備投資の先行指標とされる指標の落ち込みだった。(非国防資本財から航空機を除いた)コア資本財の受注が前月比0.9%減と、市場予想の0.3%減を大きく下回る落ち込みとなった。前日に発表され株価下落の材料となったマークイット発表の5月の製造業PMI(購買担当者景気指数)速報値が50.6と2009年9月以来の低水準となっていたこともあり、米国経済の先行きに対する懸念が増すことになった。今回の耐久財受注の数字は、5月に入って以降急速に悪化した米中関係を反映していないことから、トレンドとしての減速を思わせることになった。」
先週来、金価格を押し上げているのは、マーケットが米国の利下げを前のめりに織り込みにかかっていることがある。トランプ大統領が不法移民対策を講じなければメキシコからの輸入品に関税を課すと表明したことを嫌気したのは当たり前で、メキシコとの貿易の多くに追加関税を課すとメキシコへのダメージというより米国を含む進出企業へのダメージであり、「マクロの問題でなく、経済の動きをほとんど理解していない大統領の気まぐれにすぎない」との指摘がある。もとより自身の大統領選を念頭に置いてのことゆえ、当然の帰結。「米国第一主義」の本質は、「トランプ第一主義」であってマイナス面ばかりではないけれど、国益を蝕みながら進んでいるのは間違いなかろう。それでも下げない米国株式。利下げ期待が株価を支える構図。