亀井幸一郎の「金がわかれば世界が見える」

マクロな要因が影響を及ぼす金(ゴールド)と金融の世界を毎日ウォッチする男が日常から市場動向まで思うところを書き綴ります。

危機の中でのゴールドの立ち位置 

2022年10月11日 21時19分56秒 | 金市場

週明け10月10日のNY金は、続落となった。

報じられたように9月の米雇用統計は、非農業部門雇用者数は26万3千人増と市場予想の25万人増を上回った。失業率は横ばいの市場予想に反して0.2%低下し、3.5%と7月の水準に逆戻り。約50年ぶりの低水準に並ぶことになった。時間当たり賃金は前年同月比5.0%増に鈍化したものの、伸び率としてはなお高い。労働需給の逼迫による賃金上昇を気にするFRBが、歴史的な低失業率が続く中で利上げの手を緩めるとは考えにくく、11月の次回連邦公開市場委員会(FOMC)でも0.75%の利上げがあることが、ほぼ確実視されることになった。

この発表を受け10月7日の米10年債利回りは、一時3.910%まで上昇し3.889%で終了。DXYも112ポイント台後半まで上昇し、NY金は7日一時1698.40ドルと再び1700ドル割れまで売られ、1709.30ドルで終了していた。

 

週明け10日の金市場は、この雇用統計の結果から今週13日発表の9月の消費者物価指数(CPI)が高めの数字になるとの見方が台頭。雇用の強さに象徴される米国経済の粘り強さから、高インフレの定着、とくにエネルギーと食品を除いたコア指数の高止まりを予想する見方が増えている。それは正しいと思われる。

週明けのNY市場は、コロンバスデー(コロンブスの日)で債券市場は休場となったことで長期金利に影響を受けることはなかったが、前週末からのドル高が続きドル指数(DXY)は9月29日以来の113ポイント台を回復。再びDXYの上昇が金売り手掛かりとして復活、週明けの市場でファンドの積極売りを誘ったとみられる。その結果が前週末比34.10ドル安の1675.20ドルと再び1700ドル割れの水準に押し戻されることになった。

1日を通してみても、目立った反発もなくダラダラと下げた1日となった。しかし、この下げは無視できないものといえる。

 

週末を挟みウクライナ情勢が緊迫化し地政学リスクが一気に高まりを見せる中で、逃避資金の関心はドル買いに向けられ、ゴールドに向いていないことを表すからだ。(米ドルも例外でなく)各国通貨が問題を抱える弱さ比べの為替市場だが、その中で米国が他国に比して圧倒的優位に立っていることが、DXYを20年5カ月ぶりの高値に押し上げる一方で、無国籍通貨ゴールドをしのぐ状況に至っている。

「ドル独り勝ち」と表現された1990年代を彷彿させる状況といえる。もちろん環境は、当時のデタントと表現された地政学的に落ち着いた平和の時代とは、大きく異なる。しかし、ドルの優位という点では共通点がある。言えるのは、そのドルの優位も基盤は脆弱で揺るぎやすく、比較優位に目が向けられている間の賞味期限の短いものなのだろう。

 

しかし、ではドルに代わるものという点で何かあるのかと問われても、通貨村の中では見当たらない。つまり、比較優位に立つ米国をも揺るがすような事態に至って、登場するという立ち位置が、いまのゴールドということになりそうだ。

 

保有資産を担保にして、さらに投資に振り向けるという、いわゆる2階建て3階建ての投資で効率よく稼ごうとした年金基金が、よもや安全資産、安定資産と位置付けていた国債価格が暴落したことで、一気に窮地に立つことになった。ヘッジファンドでなく、年金基金という点が意外性もあるし、ここまでの経緯からは蓋然性もあったと言えるが、それゆえに市場を揺るがすイベントに発展する可能性がありそうだ。イングランド銀行の動きともども、注視しているところ。

本日はNY時間外のアジア時間午後に米10年債利回りが一時4%台に乗せている。本日の米株がどうなるか。

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