亀井幸一郎の「金がわかれば世界が見える」

マクロな要因が影響を及ぼす金(ゴールド)と金融の世界を毎日ウォッチする男が日常から市場動向まで思うところを書き綴ります。

リスク回避の買いで9カ月ぶり高値

2023年01月20日 21時08分00秒 | 金市場

19日のNY金は16.90ドル高の反発で1923.90ドルで通常取引を終了。1900ドル超の高値水準でもあり、利益確定の売りで3連休明けの2営業日続落となっていたが、この日の上げで下げ幅を取り戻し、終値ベースで昨年4月22日以来9カ月ぶりの高値となった。通常取引終了後の時間外取引でも上値を伸ばし一時1936.90ドルまで付け1933.80ドルで終了。

前日は一時1930ドル近くまで買われたものの、タカ派で知られるセントルイス連銀ブラード総裁の金利水準を早期に5%超に引き上げ、最終的には5.5%も視野に入れている旨の発言を受け、上げ幅を失いマイナス圏に転落していた。

そもそも前日早い段階での上昇は、12月の米生産者物価指数(PPI)が市場予想を上回る鈍化を見せ、12月小売売上高も予想以上に落ち込むなど、景気減速を示唆する指標が続いたことに反応したものだった。この日もブレイナード連邦準備理事会(FRB)副議長などによる政策金利高止まり発言が続いたが、一定の織り込みが進んでいることから、目立った反応は見られなかった。

金市場では、むしろ株価の下げに象徴される景気後退を警戒するリスクオフ・センチメントの高まりや、この日期限を迎え財務省による特別措置に入った「連邦債務の上限」突破という、不透明要因を手掛かりにした買いが入っているとみられる。

米経済指標は、相変わらず労働市場が強さを示す一方で、実体経済は悪化という流れが続いている。

朝方発表の週間の新規失業保険申請件数は19万件と前週(20万5000件)から減少した。3週連続の減少となる。度重なる利上げにもかかわらず、労働需給が逼迫しているとの見方が意識された。市場は21万5000件への増加を予想していた。同じ時間に発表された12月の住宅着工件数は1.4%減の138万2000戸となった。建設許可件数も1.6%減の133万戸だった。フィラデルフィア連銀が発表した1月の景況指数はマイナス8.9に。ゼロを境に拡大と後退を示すが5カ月連続のマイナスだった。ただし、12月のマイナス13.7からは改善が見られている。

こうした結果を受け19日の米10年債利回りは一時3.320%と昨年9月13日以来の低水準を付け3.4%で終了。年末時点では3.88%だった。金利を生まないゴールドにはプラスということに。

 

なお連邦政府の債務が法定上限を突破したことで、米国財務省はこの日、公務員退職・障害者基金などの再投資の見送りなど運用を変更して資金繰りをつなぐ特別措置を発動した。6月5日までの措置とされるものの、多少の余裕をもって期日を切っているのだろう。ただし、資金切れの特定日の見極めは難しいとされる。

2011年のオバマ政権下で国債の利払いができないデフォルト(債務不履行)寸前まで切迫したことがあり、その際は米国債が格下げされ、混乱の中でNY金は11営業日で240ドルほど急騰し、当時の最高値の更新を続け1900ドル台に駆け上がった経緯がある。

そのうち改めて書くが、昨年末に書いた2023年のゴールド展望で、押し上げ要因としてこの問題を指摘した。

NY金は1950ドル手前の売りを消化しているところ。本日はNY株がどうなるか。

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