週明けのNY市場は再びリスクオフセンチメントに覆われることになった。株式の下げが拡大した。売り材料は複合的だが、午前の早い段階でWTI原油が約7年ぶりの高値となる
78ドル超まで買われたことだろう。原油が上がるとエネルギー関連が上昇し株高というケースが多い米国株だが、インフレ懸念を高め長期債金利を押し上げ、ハイテク株主導の下げ相場が広がることになった。先週の議会証言でパウエルFRB議長も指摘したようにサプライチェーン(供給網)の混乱が想定以上に長引いていることが懸念事項になっている。供給不足を通して物価上昇につながる。人件費の増加も見られる中でエネルギーコストの上昇は、企業収益を圧迫する可能性があり株式市場には悪材料となる。そもそも1カ月もするとクリスマス商戦も意識に上ることになる。それまでに物流が正常化していないと、需給要因から幅広いインフレにつながる可能性がある。
そんなところに足元では中国恒大集団に象徴されるチャイナリスクに、中国軍機が台湾の防空識別圏内に連日過去最大レベルで侵入し、米中双方が相手方を非難する地政学リスクまで加わり、米国ではリスクオフセンチメントを刺激した。台湾を巡る問題は、地理的に近い本以上に米国では市場の関心事になっている。そこに米国内での財政協議のこう着が加わる。民主・共和の与野党間の政治的駆け引きが続くなかで、新年度のつなぎ予算は簡単に合意したのは争点でないことによる。言うまでもなく「インフラ投資法案」と「3.5兆ドル法案」がバイデン政権の目玉政策であり、その成立の有無は政権の命運を左右する。
財政協議については、やや複雑な構図になっている。1年後に議会選挙(中間選挙)を控え、インフラ投資は超党派の関心事であり、地元へのアピールから上院では早々に可決され、下院での可決待ちとなっている。ところが下院は、まず環境投資や教育分野、家計支援を盛り込んだ「3.5兆ドル法案」をまず通したあとで、インフラ法案を通すとしている。ところが「3.5兆ドル法案」予算規模の大きさに対し共和党は元より民主党内に反対者がいることから、難航している。
そこで伝家の宝刀あるいはオールマイティの切り札といえるものに、財政調整措置(リコンシリエーション)と呼ばれる手続きを用いた採決方法がある。民主党単独で可決できることから、
「3.5兆ドル法案」に行使するといいではないかということになる。そこに立ちふさがるのが連邦債務上限問題がある。
8月1日以降米国政府は連邦債務上限の発効により、新規の借り入れが出来なくなって2カ月余り経過し、財務省のやりくりも今月18日前後には資金切れに陥るとの指摘がされている。予想には幅があり11月上旬までは問題なしとの見方もあるが、いつサドンデスに至るか不明で出来るだけ早めの対処が必要になる。期限が刻々と迫る中で、共和党は債務上限の凍結あるいは引き上げには徹底抗戦の構えとなっている。そして債務上限はリコンシリエーションを使い、単独で通せばいいではないかと民主党をけしかける。ところが民主党はこの案には乗れない。というのもリコンシリエーションは会期中に1度しか行使できないからだ。つまり行使すると、本命の「3.5兆ドル法案」に使えないことになる。
かくして袋小路に入ったかの状況を打開するために民主党は、「3.5兆ドル法案」に債務上限の停止項目を盛り込む形で突破を目指すことになったようだ。
米国が資金切れで利払いができないデフォルト(債務不履行)に陥る事態は、誰もが回避されると思っているし、そのとおりだろう。デフォルト自体が、究極のテールリスクということになる。しかし、そこまでのこう着状態が政治的リスクとして、米国債の格付けに影響を与える要素となる。実際に2011年8月にそれは起こり、現在のS&Pグローバル・レーティングスが米国債の1ランク格下げを発表し、その後、株式市場などが混乱した経緯がある。その際に金価格は急騰し1900ドルを突破、当時の過去最高値を記録した。足元で当時と同様の政治的駆け引きが行われているわけだ。
こうした環境の中でFRBは政策変更に動こうとしているのだが、内外の不透明要因がどうなるかで、変更を強いられる可能性もある事態といえる。
78ドル超まで買われたことだろう。原油が上がるとエネルギー関連が上昇し株高というケースが多い米国株だが、インフレ懸念を高め長期債金利を押し上げ、ハイテク株主導の下げ相場が広がることになった。先週の議会証言でパウエルFRB議長も指摘したようにサプライチェーン(供給網)の混乱が想定以上に長引いていることが懸念事項になっている。供給不足を通して物価上昇につながる。人件費の増加も見られる中でエネルギーコストの上昇は、企業収益を圧迫する可能性があり株式市場には悪材料となる。そもそも1カ月もするとクリスマス商戦も意識に上ることになる。それまでに物流が正常化していないと、需給要因から幅広いインフレにつながる可能性がある。
そんなところに足元では中国恒大集団に象徴されるチャイナリスクに、中国軍機が台湾の防空識別圏内に連日過去最大レベルで侵入し、米中双方が相手方を非難する地政学リスクまで加わり、米国ではリスクオフセンチメントを刺激した。台湾を巡る問題は、地理的に近い本以上に米国では市場の関心事になっている。そこに米国内での財政協議のこう着が加わる。民主・共和の与野党間の政治的駆け引きが続くなかで、新年度のつなぎ予算は簡単に合意したのは争点でないことによる。言うまでもなく「インフラ投資法案」と「3.5兆ドル法案」がバイデン政権の目玉政策であり、その成立の有無は政権の命運を左右する。
財政協議については、やや複雑な構図になっている。1年後に議会選挙(中間選挙)を控え、インフラ投資は超党派の関心事であり、地元へのアピールから上院では早々に可決され、下院での可決待ちとなっている。ところが下院は、まず環境投資や教育分野、家計支援を盛り込んだ「3.5兆ドル法案」をまず通したあとで、インフラ法案を通すとしている。ところが「3.5兆ドル法案」予算規模の大きさに対し共和党は元より民主党内に反対者がいることから、難航している。
そこで伝家の宝刀あるいはオールマイティの切り札といえるものに、財政調整措置(リコンシリエーション)と呼ばれる手続きを用いた採決方法がある。民主党単独で可決できることから、
「3.5兆ドル法案」に行使するといいではないかということになる。そこに立ちふさがるのが連邦債務上限問題がある。
8月1日以降米国政府は連邦債務上限の発効により、新規の借り入れが出来なくなって2カ月余り経過し、財務省のやりくりも今月18日前後には資金切れに陥るとの指摘がされている。予想には幅があり11月上旬までは問題なしとの見方もあるが、いつサドンデスに至るか不明で出来るだけ早めの対処が必要になる。期限が刻々と迫る中で、共和党は債務上限の凍結あるいは引き上げには徹底抗戦の構えとなっている。そして債務上限はリコンシリエーションを使い、単独で通せばいいではないかと民主党をけしかける。ところが民主党はこの案には乗れない。というのもリコンシリエーションは会期中に1度しか行使できないからだ。つまり行使すると、本命の「3.5兆ドル法案」に使えないことになる。
かくして袋小路に入ったかの状況を打開するために民主党は、「3.5兆ドル法案」に債務上限の停止項目を盛り込む形で突破を目指すことになったようだ。
米国が資金切れで利払いができないデフォルト(債務不履行)に陥る事態は、誰もが回避されると思っているし、そのとおりだろう。デフォルト自体が、究極のテールリスクということになる。しかし、そこまでのこう着状態が政治的リスクとして、米国債の格付けに影響を与える要素となる。実際に2011年8月にそれは起こり、現在のS&Pグローバル・レーティングスが米国債の1ランク格下げを発表し、その後、株式市場などが混乱した経緯がある。その際に金価格は急騰し1900ドルを突破、当時の過去最高値を記録した。足元で当時と同様の政治的駆け引きが行われているわけだ。
こうした環境の中でFRBは政策変更に動こうとしているのだが、内外の不透明要因がどうなるかで、変更を強いられる可能性もある事態といえる。