注目の米連邦公開市場委員会(FOMC)は、予想通り0.25%の利上げを決め、声明文では「継続的な利上げが適切」との文言を変えず、利上げを続ける方針を示した。
声明文発表の時点では、今後も強気の引き締めが続くとの見通しから、株価はダウ30種平均が一時500ドル安になるなど急落。声明文発表前に前日比2.50ドル安の1942.80ドルで通常取引を終えていたNY金は、パウエル連邦準備理事会(FRB)議長の記者会見が開始された時点で時間外取引に入っており、その時点で1937ドル台まで水準を下げていた。
議長発言が続く中で、すぐに反転し逆に騰勢を強め、30分経過後には節目の1950ドルを突破し1960ドル台に乗せる上昇となった。記者会見終了時には1960ドル台半ばまで水準を切り上げ、最終的にこの日の時間外取引は1966.80ドルで終了した。高値は1970.80ドルで、昨年4月19日以来の水準となる。
同様に株式市場も切り返し、ダウ30種は6.92ドル高と下げ幅を解消しプラス圏で取引を終了した。
パウエル議長の記者会見の内容は一言で表現するならば、総じてハト派的なものだった。
新型コロナ禍による落ち込みからの回復途上にあり、ウクライナ戦争や米連邦債務上限突破問題など、現在の米国は特殊な経済環境の中にある。それゆえに不確実性は残るものの、FRBによる今回の利上げサイクルが終盤に差し掛かっていることを、FRB執行部(地区連銀総裁でなく本部の理事)も認識していることを思わせる内容だった。
パウエル議長の発言トーンも、引き締め方針緩和の言質を取らせないタカ派一点張りのこれまでとは異なり、やや緩みを感じさせるものだった。年始1月4日に発表された昨年12月開催のFOMC議事要旨では、引き締め方針の軟化を先読みし、株高や米長期金利低下が早い段階で進むことで、金融引き締め効果が薄まってしまうことを危惧する内容が記されていた。「金融環境が不当に緩和されれば、物価安定を回復するための努力を複雑にしてしまう」と表現していた。
それゆえ市場は、今回のパウエル議長発言は、金融環境の緩みを強くけん制するものと警戒感を高めていた。それだけに発言内容は、余計にハト派的な印象与えることになった。
印象的だったのは、パウエル議長が「(物価の伸びが鈍化する)ディスインフレのプロセスが始まった」と明言したこと。
インフレ鈍化の兆しが出ていることを今回「喜ばしい」とも表現したが、これまでも「評価できる」という表現が使われたりしていた。ディスインフレという言葉は、捉え方が変化したことを思わせた。質疑応答にて前回12月の会合で示した見通しに沿った動きになれば「年内の利下げは適切ではない」としたが、その一方で、インフレ鎮静化が早く進めば、政策運営で考慮する考えも示した。環境次第では利下げの可能性も否定しないということだった。
ハト派的な内容を受け、為替市場ではドル安が進み、金価格に影響を与えるドル指数(DXY)は一時101.036まで売られ101.217ポイントで終了。終値ベースで昨年4月21日以来の安値となった。米長期金利も一時3.3%台へと低下する中で、NY金は昨年4月19日以来の高値水準となる1970ドル台に到達ということになった。
1月中旬から1900ドル台前半を中心とするレンジ相場が続いてきたが、2月1日のNY時間外にてレンジを上放れということになった。
本日2日は欧州中央銀行(ECB)の政策決定理事会が開かれる。ラガルド総裁はインフレ抑制の強めの利上げを続ける意向を示しており、ユーロは対ドルで強含みに推移しており、1日も一時1.1001ドルと昨年4月4日以来の高値を付け、DXYを押し下げた。
今回のECB理事会の政策決定と終了後のラガルト総裁の記者会見の内容、また明日の米1月の雇用統計の結果次第では、DXYは100ポイント割れの可能性がある。環境としては、NY金が2000ドルに接近する局面を見通せる状況とになった。
昨年のようなロシアによるウクライナ侵攻というイベント含みでの2000ドル突破でなく、市場環境の変化を映した上昇という点で、背景は大きく異なる。