昨日のNY金は、NY時間外のアジアからロンドンの時間帯に売りが先行した・
翌2月1日にFOMC声明文発表とパウエルFRB議長の記者会見を控え、一時2週間ぶり安値となる1900.60ドルまで売られたのは、NYコメックスの限月交代(中心になる取引の移行)に伴う手じまい売りがひとつ。
さらに今回会合でのパウエル議長のタカ派発言を警戒した利益確定の売りが先行したものだろう。
ただし通常取引開始間もなく発表された雇用コスト指数の結果を受け、インフレ終息観測とともにFRB利上げ打ち止め期待が高まると切り返しも早く、早々に1940ドル近辺まで水準を回復した。
終値は1945.30ドルだった。
22年10~12月期の雇用コスト指数は前期比で1.0%上した。伸びは市場予想の1.1%を下回り、7~9月期の1.2%から鈍化した。企業からみた給与などの負担の重さを示す指標で、賃金とインフレの動向を判断するうえでFRBが重要視している指標。伸びは統計開始以来の過去最高を記録した22年1~3月の1.4%から3四半期連続で鈍化している。
FRBの政策動向に関心が向けられているいま(現在)ならではの指標で、以前は一般的に注目度の非常に低い指標だった。
昨日少し取り上げたが、国際的な金の広報・調査機関ワールド・ゴールド・カウンシル(WGC)が22年10~12月期(Q4)とともに22年通年の金需給統計を発表した。 繰り返すが目を引いたのが、前期(7~9月期)に続き中央銀行による大量買いの継続だった。
417トンもの買いで22年下半期だけで862トン、通年で1136トンもの量に膨らんだ。1967年以来の歴史的規模となる。その結果、22年通年の世界の金需要は前年比18%増の4741トンとなった。リーマンショックに象徴される世界金融危機後の流れの中で、投資需要が高まった2011年(4746トン)に並ぶ規模でもある。
宝飾需要は年末にかけての価格上昇を受けQ4に低迷(前年同期比18%、628トン)した関係で通年で3%減の2086トンとなった。
一方、欧州やトルコなど中東での地金・地金型コイン需要の高まりから現物投資需要は10%増の1107トンとなった。金ETF(上場投資信託)の110トン減少を現物投資(地金・地金型コイン)の増加がカバーした形になっている。
ちなみに「地金型コイン」と敢えて書くのは、金価格に連動して取引されるコインを指すことによる。記念金貨や収集型金貨(古銭の類)などと違う金価格連動型のコインを指す。たとえばキティちゃん金貨とか令和小判とかの名前で販売されているものは、「金製品」であって、含まれる金の量の価値(価格)の数倍で売られており趣味の類の品と言える。売り手はプレミアム分、儲かる(おいしい商売なのだ)。キティちゃんの金貨が欲しい人が、楽しみで買えばいいだろう。人気が出れば金価格に無関係で値上がりするかも、しれない。発行量がほんとうに限定されていて、人気が出ればの話だが。
話を戻すと、Q4の産業用需要が72トンと新型コロナ禍による活動縮小の影響を受けた20年Q2(68.7トン)以来の低水準となったことも目を引いた。さらに価格上昇の割には、Q4のリサイクルも増えていない(292トン、1%減)。
さて明朝未明(日本時案午前4時)に声明文が発表されるFOMCは、25bp(ベーシスポイント、0.25%)の利上げは確定だろう。
ポイントは今回、利上げをどの水準まで進め、また引き上げた水準をどの程度維持するのかの判断につき、何を基準にするのかを話し合うことにある。どんな話し合いをしたか、内容についてパウエル議長はどの程度言及するのか。
年明け以降、米国株式の上げが目立っているがNasdaqはここ1カ月で11%の上昇で1月としては、ITバブルで知られる2011年1月以来の上昇率らしい。 FRBの引き締め方針の軟化を先読みしようとする市場に対し、株高や米長期金利低下が早い段階で進むことで、金融引き締め効果が不十分なものにとどまってしまうことをパウエル議長はじめFRB執行部は危惧しているとされる。それゆえ明朝の記者会見はタカ派的な内容になるとの見方が欧米のアナリストの間では多い。 繰り返すが昨日も先行してNY金が売られたのは、先行して益出ししようとの動きとみられる。
仮に、その見方通りとしても、全体を引いて見るならば利上げサイクルは終盤に差し掛かっていると思われることから、金の上昇基調に変わりはないものと思う。
Stay Gold