さてドル建て金価格がNYコメックスのフロア取引の終値で見て9月22日以来となる1700ドル台に復帰してきた。「HFT(High Frequency Trade)高頻度高速取引」だ、やれファンドのリスクヘッジ(ストップ・ロス)が合わさった「合成の誤謬」だとここでも下げの背景の要素を書いたが、結果的に急騰も急落もイレギュラーなものとなった。9月26日のNY時間外の下値1535ドル示現時は見ていたが真空地帯をアッという間に下げてアッという間に戻した印象を受けた。あの中でほとんど商いも出来ていないと見られた。いわばイレギュラーな下げだった(そもそも上げもイレギュラーだったが・・・)。しかし、イレギュラーであっても相場としてはヒビ割れた状態となったのは否めない。修復には相応の時間あるいは材料が必要になる。その材料の最大のものが、いわゆる「QEⅢ」であることは言うまでもないだろう。ただ、それが出てもファンドが無反応では本格的な反騰にはつながらない。
大まかな数字を上げると、ファンドは8月のはじめに約780トンほどのネットのロングを抱えていた。それが9月末には400トン割れまで減った。それ以降も多少の増減はあれ水準に大きな変化はない。昨今は、NYコメックスから資金も外に出ていることが指摘されているが、それでも傾向は把握できる。彼らが急激に抜けたことが急落をもたらしたが、全てではないが再参入するタイミングが問題となる。
金市場では8、9月の乱高下を経て「果たしてこんな不安定なモノをSafety Assetと呼ぶのや否や」という論議も起きた。また同時に9月の急落でこれまでの「金上昇見通し」に対する“疑い”も芽生えた。あの値動きの中では、もっともな疑問といえる。いま傍観者となっているファンドは、環境の落ち着くのを待っていると見られる。その不透明感が払しょくされる第一弾が日本時間の27日午前1時から始まるEUサミット、さらに同じく2時15分開始予定のユーロ圏サミットでの決定事項となる。メルケル首相が言うように、今夜で全てが決するわけではないが、方向性は出よう。内容如何とその市場の反応は来週のFOMCにも影響を与えるのではないか。
カンカンの総強気から強気弱気見方が割れることになった金市場。相場の寿命?は結果的に伸びることになるのではないか。相場は疑いの中で育つ。1705ドル突破でショート・カバーがここからの押し上げ要因に。