ジミ・ヘン亡き今、私が追いかけているのが彼です。
シーザーといっても日本人で、本名は確か寺原さんだったかな。現在「演劇実験室◎万有引力」の主宰者で、作、演出、音楽を担当。自分の劇団以外にも、「月蝕歌劇団」の音楽をずっと手がけています。つまり彼は演劇の世界の人で、一般の音楽愛好者にはまだまだ知られていない存在なのです。
私が彼を知ったきっかけは、「レコードコレクターズ」に載った、アニメの「少女革命ウテナ」のサントラCDの記事でした。寺山修司が主宰していた「演劇実験室◎天井桟敷」で音楽を担当していた、J・A・シーザーという人の曲が収録されていて、それが、他ではちょっと聴けない、独特なものだと知り、さっそくテレビ東京で放送されていたアニメを観てみました。・・・何というか、ストーリーよりも、観ている人にいかにインパクトを与えるかを重視した、まさにアングラ演劇のようなアニメでした。どうしてあれが平日の夕方に放送されていたのか、今でも不思議です。
シーザーの曲は、クライマックスの決闘シーンで、東京混声合唱団や杉並児童合唱団によって歌われるのですが、合唱という形をとっているのに、それまで聴いたどのロック・ボーカルよりも悪魔的な力が伝わってきました。慌しく流れる夕方の時間を凍りつかせるような魔力が・・・。一人の圧倒的な個性を持ったボーカリストが思いのままに歌った歌は、どんな合唱にもまさる、というのが私の常識でしたが、それがあっさり覆されて、俄然、シーザーという人物に興味を持つようになりました。
以来、「万有」と「月蝕」の公演は必ず観に行くようにしています。私にとっては単なる演劇ではなく、シーザーの音楽を聴くライヴの意味があります。
彼に興味を持った方は、「少女革命ウテナ」と「青ひげ公の城」(パルコ劇場)のDVDがネットで入手可能なので、ぜひご覧になってみて下さい。