馬賊 矢吹丈

2005-03-14 01:37:11 | 演劇

 月蝕歌劇団の公演を土日に観に行った。この2日間だけ森永理科さんが出演するので。

 土曜の昼間観た彼女は、正直、メロメロだった。ハードスケジュールで、稽古量が不足しているのだろう。水曜から公演に入っている他の役者たちから取り残され、舞台に一人だけ部外者が混ざっているような。

 だが、夜の部に入る前の「詩劇ライヴ」で思い切り歌えたことが、いい気分転換になったのかもしれない。それ以降は、普段の、刃物のような鋭さを彼女は取り戻した。兄の敵の矢吹丈を狙う売春婦という役だったが、汚いせりふも彼女が発すると、新しい輝きを帯びて私の胸に突き刺さってくるのだった。
 演技に加えて、「火吹き」という芸もクライマックスで披露してくれた。声優がこんなことをしていいのか。かっこよかったから、いいのだ。

 森永さんのことばかり書いてきたけれど、劇そのものは、リングでの丈の死を認めずに彼を探し続ける白木葉子(一ノ瀬めぐみ)と、彼女の望みに応えて血塗られた物語をつくりあげる詩人(保鳴美凛)、この2人の狂気のぶつかり合いが本筋。高取英得意の、壮大なホラ話なのだった。
コメント
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