こんにちは「中川ひろじ」です。

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TPPと私たちの食・農・くらし 鈴木宣弘東京大学教授 1、TPP推進をめぐる本当の話

2016-04-16 11:58:07 | TPPと私たちの食・農・くらし
1、TPP推進をめぐる本当の話
米国アトランタでの「大筋合意」の真相~日本は米国の草刈り場
 TPP(環太平洋連携協定)が合意したとされたアトランタ会合で、日本は、決着することを目的化し、合意のためには何でもする「草刈り場」と化して、他の国が「よくそこまで譲れるね」というほどに譲歩を一手に引き受けた(注)。他の国が、医薬品の特許の保護期間などで最後までもめたら、どちらともとれる表現を提案し、火種を残したままでも、とにかく合意した形を作ろうとした。現に、豪州政府は「5年間のデータ保護期間は一切変更しない」と発表し、米国が反発している(JC総研木下寛之顧問による)。
 日本政府は、自動車での利益確保に、ハワイ会合を決裂させるほどにこだわった(ハワイ会合決裂の「戦犯」は日本だと海外メディアは報道し、日本メディアの報道を著しく乖離)のに、アトランタでは、それさえ差し出した。TPP域内での部品調達が55%以上でないとTPPの関税撤廃の対象とならないとする厳しい原産地規則を受け入れたが、TPP域外の中国やタイなどでの部品調達が多い日本車はこの条件のクリアが難しい。また、米国の普通自動車の2.5%の関税は15年後から削減を開始して25年後に撤廃、大型車の25%の関税は、報道規制がなされたが、29年間現状のままで、30年後に撤廃するという気の遠くなるような内容である。農産物についても日本だけ7年後の再交渉=更なる削減も屈辱的に約束させられている。さらに、今回の合意は関税撤廃への過程であり、最終目標は全面的関税撤廃だと協定に書かれている。まさに、TPPが「生きている協定」と言われる所以である。
(注) アトランタに駆け付けていた山田正彦元農水大臣やアジア太平洋センターの内田聖子さんが現地情報として紹介している。また、筆者も出演した2014年5月1日NHK BS1の「WISDOM」で「TPP 世界はどう見る」で米国市民団体Public CitizenのLori Wallachさんが、すでにそう言っていた。また、同番組で、米国大学教授の「TPPに参加せずに日本はGDPで1%の農林水産業のために99%を犠牲にするのか」との発言に対するWallachさんの「命と環境を守る農業を狭い視野の経済で論じてはいけない。たとえ1%だとしても、それが消費者100%を支えている」との反論は的を射ていた。
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TPPと私たちの食・農・くらし 鈴木宣弘東京大学教授  「自由貿易」と「規制緩和」の本質

2016-04-16 11:21:38 | TPPと私たちの食・農・くらし

4月15日食とみどり、水を守る長野県民会議の総会に続いて東京大学鈴木宣弘教授の記念講演がありました。今、まさに国会で議論されているTPP問題についてその本質を鋭くえぐりだす中味であり、何回かにわけて紹介したいと思います。

「自由貿易」と「規制緩和」の本質
 TPP(環太平洋連携協定)を推進する米国共和党の幹部が巨大製薬会社やバイオメジャーから巨額の献金を得て新薬特許の保護期間の延長を画策しているように、TPPには国際的な「斡旋利得罪」の構図が当てはまる。
 多国籍化した大企業の経営陣は、その資金力を利用して、政治、官僚、マスコミ、研究者を操り、大多数の国民を欺き、さらなる利益集中に都合の良い制度改変を推進していく。equal footing(対等な競争条件)の名目の下に「企業利益の拡大にじゃまなルールや仕組み徹底的に壊す、または都合のいいように変える」ことによって、人々の命、健康、暮らし、環境よりも目先の企業利益を追求する。この「今だけ、金だけ、自分だけ」(3だけ主義)の行為こそが「1%」(富の集中する人々に対するスティグリッツ教授の象徴的な呼称)による「自由貿易」や「規制改革」の主張の本質である。規制緩和すれば「対等な競争条件」が実現し、みんなにチャンスが増えるかのように見せかけて、国民の命や健康、豊かな国民生活を守るために頑張っている人々や、助け合い支え合うルールや組織を「既得権益」「岩盤規制」と攻撃して、それを壊して自らの利益のために市場を奪おうとしている。
 「米国に追従することで自らの地位を守る」ことを至上命題とする官邸にとってTPPは絶対であった。米国の政治は巨大企業の献金によって動かされており、日本にも類似の構造がある。つまり、結局は、一部の日米企業の経営陣の思惑で政治が動かされている構造がある。

【コラム】3だけ主義暴走の背景
 長期的に利子率≒利潤率の傾向がある。銀行に預けるか、投資しても何%もうけが出るかで判断するからである。水野和夫氏が『資本主義の終焉と歴史の危機」で指摘するように、利子率の異常な低さは利潤率の低下を意味し、つまり、もうけられる余地が減ってきている中で、市場の相互扶助的仕組みを岩盤規制と攻撃し、周りからの収奪を強める3だけ主義が強まり、格差が拡大する。
 こうした中で、トマ・ピケティの『21世紀の資本』が指摘するように、「g<rが続くため、資本の伸びが、賃金の伸びを上回り、格差は拡大し続ける。ここでg=経済成長率(≒賃金上昇率)、r=資本収益率(投資の利回り≒資本の成長率)」との議論がある。g<rが続く要因の一つとして独占・寡占の存在があり、その下で進むレントシーキングが強化されているという現実がある。
(用語)レントシーキング=企業が政府官庁に働きかけて法制度や政策を変更させ、利益を得ようとする活動。自らに都合よくなるよう、規制を設定、または解除させることで、超過利潤(レント)を得ようという活動のこと。

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