院長のへんちき論(豊橋の心療内科より)

毎日、話題が跳びます。テーマは哲学から女性アイドルまで拡散します。たまにはキツいことを言うかもしれません。

台湾小紀行(食べ物篇)

2013-05-08 00:32:38 | 文化
 かねてから台湾は食べ物がおいしいと聞いていた。それを楽しみにしての台湾旅行だったが、アテが外れた。そりゃぁ高級料理店はおいしい。しかし、一般庶民が食べる食事がおいしいかどうかが問題なのだ。

 地元の人が行く観光地の食べ物屋に入った。昼時のことで満員だった。メニューの最初に「牛肉麺」と書いてある。なんだか分からないが、とにかく注文した。250円ほどで、台湾のメニューとしては安くはない。

 出てきたどんぶりにはコーヒー色をしたスープに米粉で作った麺が入っていた。スープは色の割に塩っぱくはなかった。麺にはよじれがなく、スープが絡まなかった。具として煮た牛肉のかけらが2つ乗っていた。そのため「牛肉麺」と呼ぶのだろう。

 ひどくまずくはなかったが、おいしくもなかった。麺はただの米粉で、味も素っ気もなかった。スープに香りがない。味も薄味で、おいしい味ではない。具の牛肉は柔らかく、わずかにそれだけがおいしかった。日本のラーメンや蕎麦がいかにおいしいかを改めて思った。

 ただ、観光地の「牛肉麺」だけで台湾の料理を代表させてはならないだろう。日本の祭りに出る屋台の焼きそばが、日本の料理を代表しているわけではないからだ。

 別に餃子のようなものも注文してみた。まずくはないが、あまり味がしない。エビがはいっているようだったが、エビの香りはしなかった。皮はまずまずといったところか。

 この店を初め、観光地の店はおいしいものを食べさせようという気持ちがないのではないか?店は吹きさらしで、何より汚い。テーブルは前の人がこぼした汁でべとべとである。

 幼少のころ、父親に連れられて浅草のストリップ小屋裏で食事をしたことがある。その店も吹きさらしだった。でも、出された焼きそばは大変おいしかった。テーブルもべとべとしていなかった。

 浅草の外れにバラックの店があって、店頭の大鍋にはモツやらなにやらが煮込まれていて、異臭を放っていた。日雇い労働者風の男が昼間から焼酎を呑んでいた。さすがの父親も、この大鍋には手を出そうとはしなかった。

 以上のことを思い出しながら、台湾の飯屋や屋台を見て歩いた。何かを焼いている屋台からは、猛烈な悪臭が漂ってきた。浅草の大鍋の異臭よりもずっと強烈だった。臭豆腐という看板があちこちにあった。これを焼いているのではないか?くさやの干物を焼いたのをしのぐ臭いだ。

 まったく同じ臭いが台北の夜市にも漂っていた。それ以外にも、繁華街のあちこちで、この臭いに遭遇することになった。関東人が少々臭くても納豆が好きなように、台湾人はこの臭いが好きなのだろうか?

 もう一つ台湾で苦になる匂いがあった。それは八角のような香りで、どうも香辛料らしく、多くの煮ものに使われていた。台湾の航空会社の機内食がすでにこの香りだった。私はこの香りが受け付けられず、それが入った料理は食べることができなかった。ホテルのバイキングで出た大根の煮つけにも微かにこの香料が含まれていた。何の香りなのか、フロントの台湾人に一生懸命に訊ねたが、ついに話が通じなかった。台湾人には当たり前すぎる香りで、取り立てて聞かれても答えられないほど意識にないのだろうか?

 瑞芳という町に立ち寄った。この街でも「くさや」の臭いや「八角」のような匂いがした。スーパーにはドリアンが置いてあって、皮を剥いていないのに悪臭がした。剥いたらすごい臭いだろう。

 この町に「美食街」という市場があったので入ってみた。2間間口の店々が並んでいるのは博多や金沢の市場と同じで、遠くチュニジアの市場とも同じだった。違うのは店の前に丸椅子が置いてあって、その場で食事ができることだった。店先には鶏や獣の内臓が無造作に吊るしてあった。浅草の大鍋のようなものがあって、何やら煮ていた。寿司屋の木製のウインドウには作り置きの寿司が並べてあった。寿司ネタはハムとか野菜とかその他わけの分からないものだった。

 日本やチュニジアの市場と違って、「美食街」には不潔感があった。そこで寿司を食べている人がいた。寿司には少しうるさい私は、本気かよと思った。自国の文化を他国に押し付けてはいけないのだろうが、せめて木製のウインドウに作り置きをするのはやめたらどうか。

 この臭いと不潔感はどうにも我慢ができなかった。台湾は食事がおいしいなぞと言ったのは誰なのか?もちろん台北の有名料理店には行列ができている。でも、その店の支店が東京や名古屋にあって、同じ味を楽しめる。飛行機を使ってわざわざ来る必要もないのだ。台湾は食べ物がおいしいというのは伝説に過ぎないことを知った。

 コメの飯の話をまだ書いていない。だが、コシヒカリやあきたこまちを食べている私たちが、台湾のコメのことを話しても誰も得をしないから、言わないほうがよいだろう。