院長のへんちき論(豊橋の心療内科より)

毎日、話題が跳びます。テーマは哲学から女性アイドルまで拡散します。たまにはキツいことを言うかもしれません。

家族の顔が分からなくなったことは、認知症の悪化を意味するわけではない?

2013-05-19 00:07:58 | 医療
 認知症が進むと、家族の顔さえ分からなくなることがある。この症状をもって認知症が極度に悪化したことの指標にする向きがあるが、実は違うのではないか?

 人間は何千何万という顔を識別することができる。しかしながら、何千何万という体型を識別することはできない。これは顔に情報が多く、体型に情報が少ないからではない。。

 そうではなくて、人間は他人の顔に特別に鋭敏なのだ。顔を識別する中枢は、脳の紡錘状回、上側頭溝、扁桃体あたりにあるらしい。銃創などで、ここを特異的に破壊されると、他人の顔の識別ができなくなり、親しい人の顔も分からなくなる。それでいて、他の認知機能は侵されない。これを相貌失認という。

 認知症でアミロイド蛋白が、上記の場所に特異的に貯まれば、相貌失認を起こすはずである。だから、家族の顔が分からなくなることをもってして、認知症の重症度を測ることはできない。

 ただし、以上は私が勝手に推測したものであり、広く学界で承認された見解ではないことをお断りしておく。