院長のへんちき論(豊橋の心療内科より)

毎日、話題が跳びます。テーマは哲学から女性アイドルまで拡散します。たまにはキツいことを言うかもしれません。

話し言葉の世代間継承

2013-05-15 00:45:06 | 日本語
 「私が?昨日?どこそこへ?行ったら?・・」と、いちいち語尾を上げて疑問形のように話す話し方が、あまりに謙譲が過多な感じがして耳障りだった。

 私が初めてこのような話し方に出会ったのは、ある病院の婦長さんの話し方だった。(今は看護婦ではなくて看護師と呼ぶから、婦長は師長に変わった。)最初は「なんて変わった話し方をする人なのだろう」と物珍しく思った。もう20年以上前のことである。

 その後、このような語尾揚げ言葉は瞬く間に全国に広まった。ついには私の親友までが、このような話し方をするようになった。私はこのような話し方が無反省に広がっていくのを恐れた。

 30年前、高校生が「私はぁ、昨日ぉ、どこそこへぇ」と語尾を伸ばす話し方をするようになった。この語尾上げ言葉が広まると、若い人たちが「えーと、あのぉ」と口ごもることがなくなった。「えーと、あのぉ」は私たちは禁止されていたが、その分、話しにくくて仕方がなかった。「えーと、あのぉ」が消えたのは、「私はぁ」と語尾を伸ばしている時間に考えることができるようになったからではないか、と当時思った。(「えーと、あのぉ」が禁止されたから出てきた話法かとも考えた。)

 その高校生が親になって、その子供たちがまた語尾伸ばし言葉をしゃべるようになった。話し方は世代間で継承されるのだなと思った。今は中年になった当時の高校生は、未だに「私はぁ・・」と言っている。

 ところが「私は?昨日?・・」という語尾揚げ言葉の方は、さいきんすっかりなりを潜めてきた。この話し方は世代間で継承されなかったのだ。

 一方は継承されて、一方は継承されない。この違いはどこにあるのだろうか?今のところ、その根拠が見いだせないでいる。