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もの書き、ガムランたたき、人形遣いPの日記

16日正月

2008年02月24日 | 那覇、沖縄
 明日から入学試験で、その準備のために日曜日も出勤である。ところが大学に行ってみると、大学前の道路は路上駐車の車でいっぱいである。ちょうど大学構内から出てきた警備員に聞いてみると、16日正月で、首里城の下にある円覚寺に「拝み」にきているからだという。この正月は、旧暦の正月の16日後に行われる「あの世」の正月であり、グソー正月とか、ジュールクニチとよばれる。
 円覚寺は、15世紀末に建立された臨済宗の寺院であり、鎌倉の円覚寺にならった建築物だったという。琉球王朝の第二尚氏の菩提寺でもあったが、沖縄戦で焼けてしまって、現在では1960年代に復元された山門が残るのみである。しかしこの山門だけの寺院の後に、ひっきりなしに人々がおとずれ、食べ物(お重)を持ってきては、山門の前にそれを置いて拝んでいく。もちろん拝んだあとは備えた食べ物も持ち帰る。
 祈りというのは、日本の場合、神社や神棚とか、仏像、仏壇に祈ることが一般的である。しかしここでは、門の向こうは何もない「空き地」である。かつては豪華な寺社があったにせよ、今は何もない。しかし「拝み(うがみ)」に来た人々は、そこに仏を感じ、心の中に仏を感じるのだ。まさにバリでいう目には見えない超自然的存在「ニスカラ」に対する崇拝のようだ。
 そんな宗教的な光景を眺めていると「ここに車を置いているドライバーは、すぐに車を移動しなさい。ここは駐車禁止です。すぐに動かしなさい。」と繰り返し叫ぶパトカーがやってくる。そりゃ、観光地でこんな車を止められたらタクシーやレンタカーには迷惑なのかもしれないが、今日は「儀礼」である。バリのように「儀礼!注意 Hati-hati! ada upacara」の看板がない日本は、儀礼に対して極めて後進国であることを実感する。