社会福祉士×ちょっと図書館司書の関心ごと~参考文献覚え書き

対人援助の実践、人材育成、図書館学を中心に気まぐれに書物をあさり、覚え書きをかねて投稿中~

「病いとともにその人らしく生きる」ための病いの意味づけ 隅田好美(2010)

2010-07-26 09:38:30 | 社会福祉学
副題:-筋委縮性側索硬化症(ALS)患者への質的調査を通して-
『社会福祉学』第51巻第1号 

患者が考える「ALSとともにその人らしく生きる」ということを明確にし、病いの意味づけという視点から検討することを目的とし、ALS患者への聞き取り調査を実施している。

本研究は、対人援助の基本として「その人らしく」や「その人らしい生活を支援する」と言われているが、そもそも「その人らしく」とはどういうことか?と言う疑問から出発している。援助者が考えるそれではなく、患者(当事者)が考える「その人らしい(自分らしい)」について、丁寧に分析されている。

引用
ALS患者が考える「ALSとともにその人らしく生きる」ために必要なこと
⇒<病いの本質を知ること><本人のやる気と協力者>

聴き取り調査を受けたALS患者の発言
⇒①ALSの本当の厳しさを伝えられるのは医学書ではなく患者や家族当事者であり、逆に“医学書は患者や家族に失望を与えるので、ALS教科書になって同病者に希望を与えたい”
②<病いの本質を知る>ことで、<気持ちの切り替え>が可能となると考えていた。<気持ちの切り替え>をすると、できなくなったことではなく、できることに目を向けることができた。

結論…ALS患者の語る「普通の生活」とは
⇒健康時と同様の生活をいうのではなく、「ALSとともに生きている」いまの生活を<普通の生活>と感じることである。

結論…支援者として
⇒傷ついた「その人らしさ」の回復プロセスを参考にした支援を行うことで、「ALSとともにその人らしく生きている」と感じる可能性が高くなるであろう。


「これまでにもいくつかの症例をみてきたから、今後どのような経過をたどるのかを知っている。患者・家族にとってははじめての経験だろうから、症状の進行に理解やサービスが遅れないように、援助者が教えていかねばならない」
これは、過去に私が関わったケースに対して、私を含め医療・福祉関係者がカンファレンスで述べたことである。
その時は「何か違和感があるけど、実際に生活をしていく上で、生活のしづらさを最低限度におさえるためには、正しい認識であろう」と思っていた。しかし「身体症状の進行」にだけ注目し、その人や家族がどのような過程を経て「決断をしていくか」については、目を向けていなかったように思う。

知っていることを伝え、目にみえる「生活のしづらさ」を軽減させるだけではなく、「どう決断していくのか」の伴走者が必要である。
それは分かっていても、なかなか支援が難しい。本当に大切で、時間をかけるべき部分に手が行き届いていなかったのだと、過去を反省した。



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