社会福祉士×ちょっと図書館司書の関心ごと~参考文献覚え書き

対人援助の実践、人材育成、図書館学を中心に気まぐれに書物をあさり、覚え書きをかねて投稿中~

「人工呼吸器不装着の筋萎縮性側索硬化症療養者を看取った配偶者における告知から死別後までの体験」

2011-08-05 15:11:55 | 看護学
遊佐美紀、牛久保美津子 『日本難病看護学会』第13巻第2号(2008)

 人工呼吸器を装着せずに亡くなった配偶者を持つ人へのインタビュー調査。質的研究であるため、対象者の体験をリアルに感じることができる。一言一言がとても重く、考えさせられる。

引用
・わが国のALS患者数は平成16年度末に約7000人で、人工呼吸器使用の在宅患者はALS患者全体の18.2%である。

・インタビュー回答から⇒
「介護者と療養者は、同病者や家族介護者と情報交換を行いたいと保健所や病院に求めたが、情報交換ができずに困った」
「人工呼吸器を着けていれば、まだ生きていたのか、着けなかったことが悪かったのか」
「夜間の排尿介助では巡回時にすぐに排泄できないと介護員は苛立ち、また(介護員が)訪問した際に介護者も起きなかればならなかったため、夜間の排尿介助サービスはデメリットであった」
「人的サービスの利用は介護のすべてを任せられず介護負担の軽減にならない」
「自分がやりたいことをしたいと思うが、介護は自由を奪われる感覚があり喜びを感じなかった」

・呼吸状態のアセスメントを十分に行い、療養者と家族が人工呼吸器選択についての意思決定を行えるよう、話し合いの時期を逃さないようにする支援、ならびに不装着の場合は臨死期のたいへんな介護を十分にサポートできるような支援が、ALS遺族へのグリーフケアの見地から重要。


人工呼吸器装着の有無の選択が生死を分ける。これほどに苦しい選択は、他にはないであろう。
しかしこの選択は、診断を受けた時から常につきまとい、療養者や家族を苦しめているのが現実である。
診断を受けた時点では外来患者として医療機関を関わっていることが多いため、診断告知後の支援は、残念ながら不十分であると考える。
どのような選択をしても、家族を亡くしたひとたちは罪悪感に苦しむ。だからこそせめて、誰かが見守り続けていかねばならないと痛感した。
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