『中京学院大学看護学部紀要 第4巻第1号』
入院している子供に付き添っている母親の苦しみは、スピリチュアルペインにあたるのではないか?という仮定に基づき、
半構造化インタビューを行い、検証している。インタビューの対象者が2名であり、研究結果を一般化することは難しいであろうが、
スピリチュアルペインを知るためにはたいへん分かりやすいと感じた。
引用
・本論文の引用文献として、村田久行の論文等を活用している。村田からの引用より…日常生活において人間存在には時間性、関係性、自律性の3次元に支えれ、存在意義を見出している。
・スピリチュアルペインを時間性、関係性、自律性の3次元から捉え、自己の存在と意味の消滅から生じる苦痛と定義した場合、終末期患者以外にもスピリチュアルペインを持つ可能性がある。
・母親の苦しみにおける「入院児を失うかもしれない苦しみ」は「関係存在に関わるスピリチュアルペイン」とされ、「母親役割が果たせない苦しみ」は「自律存在に関わるスピリチュアルペイン」、「先が見えない苦しみ」は、「時間存在」に関わるスピリチュアルペイン」と同定された。
・上記3つのスピリチュアルペインは、<入院児の苦痛を緩和しようと関わる看護師>や<付き添う母親を気遣う他者>により和らいでいた。
入院中の子供に付き添う母親は、病院によっては「付き添ってもらって当たり前」という存在であり、労われる機会は少ないと個人的には感じる。床に敷かれた硬いマットレスの簡易ベットで眠り、食事は病院の売店で購入する弁当やパンで済ませることがほとんどである。温かい食事を摂ってもらいたいという思いから、宅配弁当サービスを行うNPOも登場していると聞く。それでも、先が見えないなかで、物理的にも閉鎖された空間で過ごさざるを得ない母親の存在に、多くの人が目を向けてくれればと願う。
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