めんどりがやいたパン/中央アジア・シベリアのむかしばなし集/小檜山 奮達男 訳 宮澤ナツ・画/新読書社/2006年初版
中国新疆ウイグル自治区に住むというサラル族の昔話。
出だしは異なるが、日本の「絵姿女房」に似ている。しかしサラル版は日本のものより複雑な構成である。
ヘビを助けた男が、ヘビの御殿に招待され、ヘビの父親から銀貨がどっさりはいった袋と少しだが金貨が入った袋をのどちらか選んだ方をあげるというのを、助けたヘビの助言で、めんどりをもらう。
このめんどりの作るパンはかおりがよく、なんともおいしいパン。
ある日、若者が部屋をのぞいてみると、めんどりが羽根をぬぎ、きれいな娘姿でパンを焼いたり、お茶をわかしたりするところをみてしまう。
若者は、羽根をやいてしまい、娘がめんどりにもどらないようにして、若者と娘は結婚する。
ある日、この家に、狩人がやってきたとき、パンをだすが、そのおいしさにびっくりした狩人は、このパンの残りを皇帝にさしあげる。すると皇帝はパンをつくった娘を自分のものにしようと画策する。
皇帝は若者の嫁を手に入れようと、馬の競争や山をくずして平らにする競争をするが、うまくいかない。しかしそれでも皇帝は強引に嫁を御殿につれていってしまう。しかしそれから嫁は一度も笑顔をみせなくなる。
しかし、一週間後、鳥の羽根とけものの毛でつくったマントを着たものもらいが(じつは若者が変装したもの)やってくると、嫁は大笑い。
これを見た皇帝が、嫁を笑わせようと、同じ格好をして御殿にやってくるが、嫁は門番にいいつけて、皇帝のものもらいを締め出してしまい、かわりに若者が皇帝になる。
タイトルからはちょっとイメージできない話。
権力者のおろかさを笑い飛ばすことは、昔話でしかできなかったことだ。