ねずみ女房/ルーマー・ゴッデン・作 ウイリアム・ベーヌ・デュボア・画 石井桃子・訳/福音館書店/1977年
バ-バラ・ウイルキンソンさんという一人暮らしの婦人の家に、家ねずみの夫婦がすんでいました。
めすねずみは、ほかのねずみのすることは、みんなしていました。でも、まだいまもっていない何かが ほしかったのです。
家ねずみの夫婦は、この家を全世界だと思っていました。春になると庭にはスノードロップやりんごの花が見え、森にはブルーベルが咲きました。夏はバラ。
めすねずみは窓ガラスをとおしてみていました。けれど、そういうものが何なのかわかりませんでした。
ある日、男の子がきじばとを一羽ウイルキンソンのところにもってきました。ウイルキンソンは、居間の棚の上の鳥かごにいれました。
はじめは何かおそろしいとおもっていためすねずみでしたが、いつか きじばとの食べ残しの豆を食べるようになりました。きじばとが、めすねずみをすこしも気にしなくなったのです。
いつかはととめすねずみは会話するようになります。丘のことや麦畑、雲のこと。飛ぶっていうのも知らないめすねずみでしたが、ふしぎに心を動かされます。
ある日、めすねずみは、巣にいっぱいになるほどの子どもを産みました。めすねずみは、赤ん坊のことだけしか考えられませんでした。それでも、おなかがすいて豆が欲しくなり、窓じきいにのぼっていきました。はとはめすねずみと話したくてたまりませんでした。
めすねずみはいそがしくて、はとのところにはなかなかいけませんでしたが、こうこうと月のさす夜、ねむれなくて はとのところにでかけました。
突然、めすねずみは森の木の梢を見て、はとは木々や庭や森の中にいなければと、さとります。そして鳥かごの戸をあけると、はとは何も言わず、すぐはばたいて木々をこえてとんでいきました。しかし、めすねずみは、はとが飛び去った窓からごくわずかなねずみにしかできない星を見ることができたのです。
一生鳥かごからでられないとおもっていた、きじばとは、いつか森のなかを 飛んでいるのを夢見ていたのでしょう。
めすねずみは、きじばとを外にだしてあげたあとも、やっぱり家ねずみでした。けれども、はとから何かをもらいました。
でてくるおすねずみは、おくさんを家に閉じ込め、暴力をふるったりと、時代を反映しているようです。