どんぴんからりん

昔話、絵本、創作は主に短編の内容を紹介しています。やればやるほど森に迷い込む感じです。(2012.10から)

とんでにげたおに・・島根

2022年11月26日 | 昔話(中国・四国)

        島根のむかし話/島根県小中学校国語教育研究会編/日本標準/1976年

 

 ある年、雨が降らず田植えをしようにも水がない。ある金持ちが、「もしも、この田ん中に、水を入れてくれるものがおったら、むすめをやってもええがのう」というと、みしらぬ赤ら顔の男が出てきて、念を押して水を入れてくれるという。稲が枯れて米がとれないよりは、むすめをよめにやったがええと思った金持ちは、「水をいれてくれるなら、むすめを あげるわな」といった。

 あくる日、金持ちが田にいってみると、ほんとに水が入っていた。一番目、二番目のむすめに断られ、一番下のむすめが よめにいくことに。むすめは、ヒエの俵に穴をあけ、いきさきがわかるようにして、大男といっしょにいきます。

 何日かたって、金持が落ちたヒエのあとを歩いていくと、山を一つも二つもこえたところに家があって、むすめが 機を織っていました。足音が近づくと、むすめは、父親を押しのなかに押し込みます。大男が戻ってきて、「もどったぞ。や、だれんぞ来たか。人間くせが。」と、鼻をくんくんさせたので、むすめが、「だれも来んだったぞ。人間くせのは、わしの腹のなかに あかんぼうができたけんだ。」といったところ、「ほんとか、そうなら いわいをせなあかん」と大男。おおいそぎでごちそうをつくったり、酒の用意をして、人をよんで、酒盛りがはじまりました。

 むすめは、「さ、この間ににげらや」と、棚にあった黒豆のはいった袋をもって、押し入れにはいっていた父親と逃げ出します。きがつくと、大男はいつのまにか赤鬼になって、そばまでやってきます。むすめがふところに入れておいた黒豆の袋から、豆を取り出し、「あっちへ行け。あっちへ行け。」と投げると、赤鬼は、「こら、たまらん。こらえてごせえ。こらえてごせえ。」といって、逃げていってしまいます。

 

 これも類似の多い話ですが、おわりのほうは節分を思わせます。「人間くせえ、人間くせええ」といわれ、「おなかに あかんぼうが できた」と、答えるのは、はじめて。