古くて新しい椅子/中嶋浩郎・文 パオラ・ボルドリーニ・絵/福音館書店/2014年(1997年初出)
マルコは10さい。背が急に伸びてきて、子ども用の机では窮屈になってきました。お父さんに新しいのを買ってくれるようにいうと、お父さんは、物置に連れていき、古びた机と椅子を、マルコのだといいます。机と椅子は、ひいおじいさんのころから家にあるものです。こんなオンボロつかえないというマルコとお父さんは、机、椅子を家具修理の職人パオロさんに運びました。
ここから家具修理屋さんの工程がつづきます。パオロさんにできない椅子の座る部分はアンナさんに、引き出しのとっては金具職人のランベルトさんに依頼します。出来上がった机と椅子をみて、マルコはそれが物置にあったボロボロの机と椅子と同じものだと、信じられませんでした。
「イタリアの家具のしゅうりの話」というサブタイトルがついていて、舞台はフィレンツェ。作者はフィレンツェ大学で講師をされており、絵もフィレンツェ在住の方。
机と椅子を修理していく過程がていねいにつづくのも興味深いのですが、職人さんのネットワークもあって、ツーカーのなかというのも町の魅力でしょうか。
フィレンツェでは、1966年11月、人の肩までくらいの大洪水で家具などが水浸しになったエピソードもかかれています。椅子の座る部分のチェス盤スタイル、封筒スタイル、ウイーン風のワラのデザインもしゃれた感じですが、発行の時点で、ワラ張りをする人がフィレンツェではニ、三人しかいないとありましたから、これからどうなるでしょう。
骨董品の事情にもふれられていますが、修理する人がいなくなったら、古い家具は捨てられるだけ。高価でも長く使えるのが理想ですが、なかなか手が出ません。
再利用も考えて、捨てないで保管しておきたいのはやまやまですが、いかんせんスペースがありません。