お話しは土の城のテラスで/西アフリカ・トーゴの昔話集/和田正平/メディアイランド/2016年
本のタイトルが気になって手に取りました。トーゴのタンベルマと呼ばれる人びとのお話。砦型住居から、このタイトルになったようです。収録は24話と多くはありませんが、野ウサギが悪役としてでてくるのが目立ちました。
小鳥がまいたアワの種。実ったころ、野ウサギがやってきてすっかり刈り取ってしまい、そのあとに、壊れた土器のかけら、欠けたヒョウタン、イヌの骨を畑において帰りました。
小鳥と野ウサギが激しい口論になり、村長のところへ訴えにいきます。野ウサギは、みんなに手伝ってもらったお礼に、三頭のヤギ、一頭の牛、一頭のイヌを殺してごちそうし、地酒も振る舞ったと主張します。村長は、小鳥がひとりで畑が耕せないと野ウサギに軍配を上げます。
おさまらない小鳥は、木の笛を探してきて、セミをその中につめました。小鳥が笛を吹くと、なかのセミがミーン、ミーンと鳴きました。笛の音を聞いた野ウサギは、笛が欲しくなり、アワを小鳥にわたしました。小鳥は二籠のアワを要求します。野ウサギは、何回か往復しますが、アワは、なかなか籠いっぱいになりません。それもそのはず、小鳥が籠の底に穴をあけておいたので、小鳥の穀倉にすべて落ちていたのです。野ウサギの穀倉が空になると、小鳥は笛を、野ウサギにわたします。
小鳥は、笛は熱湯にいれてよく洗い、笛の中にバターを詰めておき、気ままにふかないで、ダンスのときに吹くように言いました。野ウサギが小鳥のいうとおりにしたので、中のセミは死んでしまい、ダンスをする日、笛を吹いてもまったく鳴りませんでした。
やがて飢饉がやってきて、食べるものがない野ウサギが小鳥の家にいきますが、一粒のアワも、もらうことはできませんでした。