冬のわらたば/脚本・津谷タズ子 画・西山三郎/童心社/1991年(16画面)
<こわーいこわーいおはなし>とありました。
あたり一面雪で、山仕事に出かけられないので、ばあさまは、大根を煮て。じいさまは ゆきぐつでも編もうと、土間につんであったわらたばを、囲炉裏のそばに、どさりとおいたら わらぼこりがたちました。そのとき、じいさまのくびすじを つめたい風が かすめました。ひょいとふりかえってみると、わらぼこりのなかに 背丈の低い男が三味線を かかえてたっていました。
すこしあったまらせてくれという男は、ものもいわず 背中をこごめて ちょこんとすわり ときどき 囲炉裏のすみに しろい つばを とばしていました。じいさまが、礼儀を知らない男だなと思いながら、ゆきぐつを編んでいると、藁の中から ちっちゃい 虫が 囲炉裏のそばにでてきました。男は すこもこ すこもこ からだをうごかし、その虫 あつめては せわしく 顔を こすっていました。
ばあさまが、できあがった 大根たきを すすめると 男は、「三味線に よくないので、ゆげのでているもんは きらいだ」と、不愛想な声でいいます。ふたりがたべていると、男は ペコン ペコン ジャラン ジャランと、三味線 かきならしました。そのあとも 湯気が嫌いだという男。
じさまが 男に言われて、三味線を たたいてみれば、なるほど いい音。ペコン ペコンしていると、じいさまの手に、ねばねがが くっついて 糸 はじくことも できない。うごけばうごくほど、からだが 三味線に くっついてしまう。男は 口から 白い糸を ふきつけ、ぐりぐりまきにすると 天井の はりに ぶらさげて しまいます。
ばさまが こりゃ たいへんと、湯気で じいさまを あっため 白い糸を、力任せに ひっぱると、おおきな くもが、煮立った お鍋に おっこちてきて、あっというまに とけてしまいました。
くものいいたいこと、それは、「おらが 一冬、裕福に 食べようと あつめた だいじな 虫の わらたば、なんの まえぶれもなく ほぐすな」というものでした。
特色のある擬音語がでてきます。藁束のなかの 虫のイメージが つかめないのが残念でした。