奈良のむかし話/奈良のむかし話研究会/日本標準/1977年
「山んば」は、日本の昔話にかかせないキャラクター。この山んばが、大入道のつれあいだったという話。
むかし旅人を苦しめる「一本たたら」がでる峠に、村人が播州(兵庫)のヒギリの地蔵さんをまつって、そのとなりに、こもり堂をつくって、付近の村の人が堂守にきていた。
ひとりの猟師が、この地蔵さんの近くの山の中にとまり、焚火をしていたとき、ブナの木のふたまたのところにどえらい大入道がすわっていた。大入道から「声くらべ」しようともちかけられ、一計を案じた猟師は、大入道をむこうをむかせ、鉄砲を、大入道の尻めがけて、鉄砲をぶっぱなした。大入道は鉄砲の音を猟師の声とききまちがえて、「いままで聞いたことのない、えらい大きな声や。きもちまでこたえた」と言って、逃げた。
あくる朝、大入道のつれあいの山んばがでてきて、「ゆうべのかたきをうつぞ」という。びっくりした猟師は、鉄砲を何発もうったが、うってもうってもあたらない。山んばは、逃げ出した猟師をおいかけたが、きゅうに追うのをぴたりとやめて、「かたきをうとうとやってきたが、地蔵が邪魔して、どうしても、かたきをうつことができん。鉄砲の玉だけかえしてやる。」というと、どこかに消えてしまった。そしたら、昨夜大入道がすわっていた、ブナのふたまたの間から、鉄砲の玉がとびだしてきたそうや。
地蔵が邪魔したというのは、こもり堂で守をしていた人が、山んばの足あとにびっくりして「地蔵さん、お助け。」と、おがんだやろかな。
「一本たたら」は化け物でしょうか?。また、ヒギリの地蔵さんがでてきますが、なにか伝説がありそうです。説明のようなものはありませんでした。