青森のむかし話/青森県小学校国語研究会・青森児童文学研究会/日本標準/1975年
しとしと雨が降ると、「コボレジャーテバ、ヒコポカラ、コボレジャーテバ、ヒコポカラ」って歩くのがいて、村では雨が降ったら、だれも外をあるくものはいなかったんだと。
みの吉という若者が、「雨降れば用事があっても、外にいかれねえなんて、こっだらおかしいことない」と、よめっこが とめても、かさもって、くわもってでかけた。すると、村のはずれにいくと、「コボレジャーテバ、ヒコポカラ、コボレジャーテバ、ヒコポカラ」という声が、だんだん ちかずいてきた。
みの吉は。声がすぐそばまできたとき、「化け物、死んでしまれ。」って、声のあたりをするあたりさ、もっていたくわを ぶんぶん ふりまわした。そうしたら、みの吉のからだに、ふっわーとしたものが、かかってきたら、まるでしばられたように、からだっこ うごかなくなってしまたんだと。そしてそのまま、縄でひっぱられるように、ずっすら ずっしらと ひっぱられていくんだと。まけねえどって、がんばっても ひっぱられていったら、村の畑の真ん中にある一本杉のところまでいくと、からだっこ すーっとらくになったど。
杉の上から、「おめえ、ずいぶん度胸がいいな。おまえの度胸さ、ほめてやる。そこの石、おごしてみろ」って声がしたので、足元の大きな石を おこしてみると、大きなかめがうめてあったんだと。あけてみると、大判やら小判だのが ザクザクとはいっていた。みの吉は、つぎの朝、庄屋さまのところへ、宝物をもっていって、「これは、村の宝物だから、村のためにつかったらどうです。」って いったと。したら、そこの村、暮らし向きがよくなって、みの吉は、つぎの庄屋さまになって、村のために つくしたんだと。
昔話では、長者になるというのが定番ですが、宝物を村の人のために使おうとするみの吉は、よほど欲がなかったのかも?。
化け物は、クモみたいな存在のようですが、それにしても、「コボレジャーテバ、ヒコポカラ、コボレジャーテバ、ヒコポカラ」という掛け声とは 結びつかない。