星の子ども/グリム・原作 バーナデット・ワッツ・絵/富山房/2024年
グリムの「星の銀貨」をバーナデット・ワッツが絵本にしたものですが、とても短くシンプルです。グリムは、主人公を「女の子」としていますが、絵本では、マチルデという名前がついています。
少女マチルデはみなしご、夜の寝どころもありません。あるのは、身に着けている服と 親切な人からもらったパンがひときれだけ。
それなのに、お腹をすかせたおじいさんに パンをまるごとさしだし、ほっぺたも耳も、しもやけであかくはれた男の子に、帽子を、うすっぺらなシャツをきているだけの男の子にコートを、ジャガイモの袋を首からかぶっただけ女の子に服を、小さな女の子に、最後の肌着をさしだします。
自分が大変な状況にあるのに、もっと困った人がいると手を差し伸べずにいられない少女。ここまでくると宗教的な感じがしますが、最後は星が銀貨に、霧はやわらかな麻のドレスと、レースの肩掛け、羽毛のように温かいくつになるという 昔話でならではの終わり方をします。
絵が素敵で、悲壮感がないのも少女の気持ちをあらわしているようです。森の中で、うさぎやリス、ハリネズミ、フクロウにかこまれている少女の顔はしあわせそうです。