どんぴんからりん

昔話、絵本、創作は主に短編の内容を紹介しています。やればやるほど森に迷い込む感じです。(2012.10から)

星の子ども

2025年01月12日 | グリム(絵本)

   星の子ども/グリム・原作 バーナデット・ワッツ・絵/富山房/2024年

 

 グリムの「星の銀貨」をバーナデット・ワッツが絵本にしたものですが、とても短くシンプルです。グリムは、主人公を「女の子」としていますが、絵本では、マチルデという名前がついています。

 少女マチルデはみなしご、夜の寝どころもありません。あるのは、身に着けている服と 親切な人からもらったパンがひときれだけ。

 それなのに、お腹をすかせたおじいさんに パンをまるごとさしだし、ほっぺたも耳も、しもやけであかくはれた男の子に、帽子を、うすっぺらなシャツをきているだけの男の子にコートを、ジャガイモの袋を首からかぶっただけ女の子に服を、小さな女の子に、最後の肌着をさしだします。

 自分が大変な状況にあるのに、もっと困った人がいると手を差し伸べずにいられない少女。ここまでくると宗教的な感じがしますが、最後は星が銀貨に、霧はやわらかな麻のドレスと、レースの肩掛け、羽毛のように温かいくつになるという 昔話でならではの終わり方をします。

 

 絵が素敵で、悲壮感がないのも少女の気持ちをあらわしているようです。森の中で、うさぎやリス、ハリネズミ、フクロウにかこまれている少女の顔はしあわせそうです。