戦争をやめた人たち/1914年のクリスマス休戦/鈴木まもる:文・絵/あすなろ書房/2020年
1914年、第一次世界大戦開戦から5カ月後のクリスマスイブ。
最前線の塹壕のイギリス軍兵士は、敵方の塹壕から歌が聞こえることに気づきました。ドイツ語なので、なんといっているのかわかりませんが メロディで、「きよしこのよる」であることがわかりました。
「きょうは12 月24日 、クリスマス・イブなんだね」「こっちも、歌おうか」
イギリス軍の若い兵士が「きよし このよる」を歌いはじめると、まわりの兵士たちも歌いはじめ、ドイツ軍から拍手が聞こえました。
つぎにドイツ軍が「もろびて こぞりて」を歌うと、イギリス軍の兵士も、いっしょに歌い、おわると拍手もおおきくなりました。こんどは、「みつかい うたいて」・・。両方の塹壕の中から、暗い夜空に いろいろなクリスマスの歌が流れていきました。
翌日、12月25日、クリスマスの日の朝、ドイツ軍の兵士がゆっくりと両手をあげ塹壕から出てきました。イギリス軍の若い兵士も、両手をあげ、歩きはじめました。少しづつ、ゆっくりとちかづいたふたりは、鉄条網をはさんで、「メリークリスマス」というと、がっちりと握手しました。両方の塹壕の中で、息を止めて見守っていた兵士たちも、塹壕から出てくると、みんな握手をして、気持ちをつたえあいました。
歌を歌ったり、食べ物やお酒をわけあい食べはじめた兵士もいました。家族の写真を見せ合っている人もいました。
若い兵士が着ていたうわぎをまるめ、ひもでぐるぐるしばり、ボールをつくると、サッカーがはじまりました。・・・。
大半は、セピア色のおさえた色調で描かれています。
本当にあったという話で、戦場のほかの場所でも、同じようなことがあったといいます。
戦争はこのあと四年近くもつづきました。クリスマスをいわった兵士たちは、銃で相手をうつことはせず、空に向かってうち、大きな攻撃作戦があるときは、相手に知らせ、木をつけるように伝えたといいますが・・。
出版は2022年5月ですが、2022年2月22日には、ロシアのウクライナ侵攻がはじまり、おわりに、民族衣装をまとい、まるく手をつないだウクライナの子どもたちと「この星に、戦争はいりません」という一文を追加したそうです。
それにしてもロシア正教会の司祭たちが、戦争を正当化しているのは、なんだろう。
これを勉強会で話したとき、「世界で一番の贈りもの」(マイケル・モーバーゴ 評論社 2005年)を紹介していただきました。絵本とおなじ時期の戦場でサッカーをした感動的なお話しで、こちらも語ってみたいと思いました。