宮城のむかし話/「宮城のむかし話」刊行委員会編/日本標準/1978年
むかし、きれい好きなおばあさんが、たった一人で暮らしていた。おばあさんは毎日、囲炉裏の灰をきれいにならし、”火消し壺”には、ちゃんと蓋をしていた。
ところがある朝、火消し壺の蓋をとると、その中から、大名行列が、ぞろぞろでてきて、「タギョウ タギョウ」といいながら、囲炉裏のなかをぐりーっと、ひとまわりして、「かきならす 灰は浜辺の潮に似てて・・・」って、歌の半分、上の句だけよんで、ぺろぺろって、壺に はいっていった。
それが毎朝続くので、おばあさんが物知りおじいさんに相談にいくと、おじいさんは、「あんたの家で、半分よんだ人があったかもしれないから、下の句をつけ」るようにいう。
物知りおじいさんが、いろいろ工夫して下の句をつけた。
つぎの朝、「タギョウ タギョウ」って、大名行列がでてきて、壺のところに来ると、「かきならす 浜は浜辺の潮に似て・・」というので、おばあさんは、おじいさんから教えられたとおり、「波かと聞けば 松風の音」と、それにつけた。
すると、つぎの日から、大名行列は出なくなったんだと。
「かきならす 浜は浜辺の潮に似て 波かと聞けば 松風の音」・・風情のある歌ですね。